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セッション定番曲その154:There Will Never Be Another You

ジャズセッションの人気定番曲。スイングでもバラードでも。「Another You」と略されて呼ばれることも。譜面集の「A」の項目を探しても見つかりませんよ。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:1942年の初演

Joan Merrillが「Iceland」という映画の中で歌ったもの。ビッグバンドをバックに朗々と歌っています。時代を感じますが、歌は上手いですね。

ポイント2:Chet Baker

1954年録音、たぶん一番聴かれたであろう演奏と歌唱。

歌詞の内容に比べて淡々と歌っているので、主人公の側に余裕があるようにも聴こえます。未練はあるけど、その反面「次の恋」にも期待があるのかも。

ポイント3:歌詞のポイント

(Verse)
This is our last dance together
Tonight soon will be long ago
And in our moment of parting
This is all I want you to know

例によってヴァース(前節)はネタバレです。最後のダンスの前に「これだけは貴方に伝えておきたいんです」と言って本歌が始まります。

There will be many other nights like this
And I'll be standing here with someone new
There will be other songs to sing
Another fall, another spring
But there will never be another you

これから今夜みたいな雰囲気の夜を過ごすこともあるだろうし
新しい誰かと寄り添っていることもあるだろうし
他にも歌う歌は色々あるだろうし
また季節は巡ってやって来るけれど
貴方のような人と出会うことはもう無いと思う

There will be other lips that I may kiss
But they won't thrill me like yours used to do
Yes, I may dream a million dreams
But how can they come true
If there will never, ever be another you?

これから誰かとキスをしても
貴方に感じたようなドキドキを感じることはないはず
これから沢山の夢を見るだろうけど
それらは叶うことはないと思う
だって、貴方のような人はもういないから

別れることになった恋人に未練たっぷりです。こんな風に言われたら嬉しいですよね。別れを言い出したのは相手からなのでしょうか。この2人の関係性は色々な解釈が可能で、それによって表現の仕方が変わります。

If there will never, ever be another you
この「ever」は「絶対に無い」という否定の強調ですが、テンポ良く歌いたいですね。

歌詞の中にやたらと「L」音が出てくるのでハッキリと発音しましょう。


ポイント4:楽曲解析

進行は分かりやすい「251」の連続で出来ていて、アドリブが組み立てやすいのが人気の秘密ですね。メロディも分かりやすい上昇下降音階で出来ているので馴染みやすいです。1小節4音の箇所も多いので、そのままでは面白くないのでアーティキュレーションを工夫して表情を付けたいですね。

りーリードシート例

*エンディングで「半音上げる/上げない」論争もありますが、事前に決めておく必要がありますね。個人的には必然性の無いアレンジだとも思いますが・・・

ポイント5:様々な歌唱とその解釈

Nat King Cole、1953年録音
お互いの心に刻み込むような歌い方。別れを惜しみながら、相手を励ましているようです。うがった見方をすると、別れを切り出したのは歌っている当人なのかもしれません。


Eliane Elias、2013年録音
余裕たっぷりで、別れることになった相手との関係をまだ楽しんでいるような印象もあります。面白いアレンジです。


Julie London、1967年録音
気怠くセクシーなバラード。別れを惜しんでいるけれど、じゃあ「別れないで」とも言い出せない感じ。


Rita Reys、1955年録音
スインギーな歌唱のお手本。素直に別れを惜しんでいる印象です。


Ann Hampton Callaway
、1994年録音
メリハリの付いた速いテンポでの演奏/歌唱。スキャットも含めて面白いアレンジです。


Chris Montez、1966年録音
完全にティーン向けのポップス。


ポイント6:様々な演奏

Stan Getz Quartet、1956年録音
気持ち良さそうに吹いていて、インスト演奏のお手本みたいな感じ。ジャズセッションの場ではこんな感じのテンポが多い気がします。


Hank Mobley, Donald Byrd
Hank Mobleyはこういう歌ものを吹かせると味がありますね。


Lee Morgan, Curtis Fuller, Hank Mobley
「あ〜、Jazz聴いているなぁ」という感じがします。吉祥寺あたりのジャズバーで流れていて欲しい。


山中千尋
、2008年録音


◼️歌詞


(Verse)
This is our last dance together
Tonight soon will be long ago
And in our moment of parting
This is all I want you to know

(Chorus)
There will be many other nights like this
And I'll be standing here with someone new
There will be other songs to sing
Another fall, another spring
But there will never be another you

There will be other lips that I may kiss
But they won't thrill me like yours used to do
Yes, I may dream a million dreams
But how can they come true
If there will never, ever be another you?



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