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セッション定番曲その81:Afro Blue

ジャズセッションでの定番曲。なんたって「Afro」で「Blue」ですよ、心躍りますよね。リズムにも秘密がありそうです。
(歌詞は最下段に掲載)

和訳したものはあちこちのWebサイトに掲載されているので、ここではポイントだけ説明します。


ポイント1:3拍子/ヘミオラ

3拍子のジャズスタンダード曲は、数は多くないですが、ワクワクするものがありますよね。ウキウキと跳ねる感じが、いわゆる「スイング」と合わさって更に身体が自然に動く感じに。演奏したり歌ったりする側からすると、逆にそのリズムに飲み込まれないようにしないとコントロールが効かなくなる危険性もありますね。

「Afro Blue」はアフリカ(という言い方も大雑把だけど)の民謡がベースになっていて、それをキューバ出身のパーカッション(コンガ)奏者Mongo Santamariaが曲に仕立てあげたもの。意図的な先祖返りでしょうか。

元々のアフリカ民謡にあったリズム(3拍子と2拍子が交じる)だと思いますが、それと似たものがクラッシック音楽でも「技巧的な」リズムパターンとして「ヘミオラ」という用語があった、と。この辺り詳しい方がいれば教えてください。

詳しくは下記の2つのリンクを参照してください。

こんなフィール

リードシートを見ると、よりリズムの感じが分かりますね。

歌詞入りリードシート


ポイント2:Mongo Santamariaという偉人

ジャズの歴史に時々登場するモンゴ・サンタマリア先生。
「アフロ・キューバン・リズム」が大流行した1950年代以降、ラテン音楽とジャズを繋ぐ役割を果たした人のひとりです。これまたラテン・ジャズのキーマン「Tito Puente」のバンドにも所属していました。

1963年にはハービー・ハンコックの「Watermelon Man」を思い切りノリの良い曲にして、ヒットを飛ばしています。陽気なだけじゃなく、粘り気のあるリズムとアレンジが素敵ですね。

1970年代には流行し始めていた「サルサ」にも取り組んで、沢山録音しています。その腰の軽さが素晴らしいですね。ダンス好きな人は足を向けて寝られないですね。

ポイント3:歌詞付きバージョン

この曲の発表直後、割とすぐに歌詞が付けられて、録音されています。
作詞者はOscar Brown Jr. という人。米国の公民権運動(人種差別撤廃)にも深く関わった人のようで、歌詞にもアフリカ大陸という出自の誇りがこめられていますね。



ポイント4:John Coltraneのバージョン

1966年の来日公演の録音。40分近い熱演です。

モード奏法、フリージャズ、アフリカ回帰、そしてよりスピリチュアルなものを志向していたコルトレーンにとって最適な素材だった訳です。ポップな原曲がここまでアレンジされ尽くしています。

私の「ジャズ喫茶」のイメージはこういうのが延々と流れて、みんなが瞑想しながら聴き入っている(というかトリップしている)というものでした。


ポイント5:Robert Glasper のバージョン

Robert Glasper Experiment with Erykah Badu

Robert Glasper, Esperanza Spalding

Robert Glasperバージョンのリードシート

リズムはHip-Hopを経たネオソウル的なものになり、ハーモニーはより複雑化しています。ファンク系のセッションでやるならこっちですね。



ポイント6:歌詞と発音のポイント

基本的には「アフリカ大陸という出自の誇り」がこめられていると思います。

Dream of a land, my soul is from
I hear a hand, stroke on a drum

米国生まれでも「魂の故郷は別の土地」だと。
そして草原の向こう側から(手で叩く)太鼓の音が聴こえてきます。
なんだか「絵に描いたようなアフリカ」のイメージではありますが。
スケールの大きい、アフリカの草原がイメージ出来るような、余裕のある歌い方が求められますね。

Shades of delight, cocoa hue
Rich as the night, afro blue
hue」というのは「色調、色合い」という意味で、歌詞にはよく使われます。
「喜びの日陰、ココア色に染まっている」
「夜が訪れ、アフリカの青色がやってくる」
という感じでしょうか。

温度感を色で表現したのだと思います。
ジリジリと暑い昼間、日陰はグラデーションか縞模様でしょうか。
夜が訪れるとあたりは一面の星空、月明かりでお互いの顔が青白く見えます。

Elegant boy, beautiful girl
Dancing for joy, delicate whirl
whirl」は「ぐるぐる回っている」ことです。発音は「wərl」と籠ったような音ですが、「R」と「L」音が続けて出てくるので練習しましょう。
踊り手が回っているスピードは分かりませんが、そんなに早くはなく、周囲に官能的なムードを振り撒くような躍りなんでしょうね。

Two lovers dance face to face with undulating grace
They gently sway then slip away to some secluded place
ここでいきなり歌のスピードが変わり、歌詞が詰め込まれています。
undulating」は「波のようにうねっている」という意味です。ダンスの様子の描写なので、動きのある優雅さ。
secluded place」は「目につかない場所」です。
優雅に踊っていたのに、いつの間にか「ふたりだけの場所」に消えていってしまいます。

この後も歌詞は続きますが、全体を通して「幻想のアフリカ、その官能」が描かれています。

インストで演奏される場合は非常に「没入感」が高い演奏が多いですが、歌う場合でもそういう表現にしたいですね。どこで歌っていても「別の世界に連れて行く、そこは灼熱の官能の世界」という風に。


ポイント7:様々なバリエーション

Roberta Flack
内に秘めた思い、という感じ。


Lyambiko
すごく民族音楽っぽいアレンジ


Lizz Wright
彼女らしい抑えた歌唱で、乾いた涼しさを感じます。


Dianne Reeves
パーカッションの音が歌詞通りアフリカを感じさせます。


Gary Burton
ビブラフォンと親指ピアノの響きって似ていますね。


McCoy Tyner
1997年録音のトリオ演奏。


◾️歌詞

Dream of a land, my soul is from
I hear a hand, stroke on a drum

Shades of delight, cocoa hue
Rich as the night, afro blue

Elegant boy, beautiful girl
Dancing for joy, delicate whirl

Shades of delight cocoa hue
Rich as the night, afro blue

Two lovers dance face to face with undulating grace
They gently sway then slip away to some secluded place

Shades of delight cocoa hue
Rich as the night, afro blue

Whispering trees echo their sighs
Passionate pleas, tender replies

Shades of delight, cocoa hue
Rich as a night, Afro blue

Lovers on flight, upward they glide
Burst at the height, slowly subside

Shades of delight, cocoa hue
Rich as a night, Afro blue

And my slumbering fantasy
Assumes reality
Until it seems it's not a dream, the two are you and me

Shades of delight, cocoa hue
Rich as a night, Afro blue


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