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空き家対策の転機:不動産業界の変革が始まった | ビジネスと社会貢献の可能性を考える不動産屋

不動産業界がこれまで取り組みにくかった理由~1人社長の広告代理店

少子高齢化が基になった時代の変化によって、空き家や集合住宅の空室が増えていることを知っている方は多いと思います。これを読んでくださっている方の中にも、実際に空き家や入居者のいないアパートを親から相続して持て余しているという方もいらっしゃることでしょう。
 
ビジネスというのは大なり小なり、誰かの困りごとを解決することが前提です。一方でビジネスは慈善活動ではないので、ビジネスとしてきちんと成立するのものでなければなりません。
 
空き家・空室というのは要するに不動産の話で、普通に考えれば不動産業者(宅建業者)の出番ということになるわけですが、これまではその「ビジネスとしてきちんと成立する」というのが難しい面がありました。
 
もっと言えば、宅建業はうまくやれればお金になる仕事がたくさんあるので、わざわざそんな「ちまちましたこと」をしなければならない理由が見つからないということもあったわけです。

空き家増加が地域社会に与える影響~1人社長の広告代理店

空き家・空室が増えて、放置されている状態というのは、周辺環境などへの悪影響が引き起こされます。倒壊の危険に衛生環境の深刻化、雑草の繁茂が野生動物を誘発して治安も悪化といった具合です。
 
不動産は私的財産ではあっても、そうなると地域社会との調停役として行政の出番になるわけですが、利活用に至る解決の手続きには宅建業者のノウハウが不可欠。そうであるにもかかわらず、宅建業者としては同じ仕事、むしろ通常の媒介取引よりもややこしい話があるかもしれない話で、ビジネスとしての旨味がない。
 
宅建業者にしても、商売は度外視でかかわるしかないわけですから、そんなことができる業者の数は限られるでしょう。そんな状況の中で空き家・空室の急増には、誰もが「わかってはいるけれど…」という感じでの放置されてきたという側面があったわけです。

媒介報酬規制の見直しとその意義~1人社長の広告代理店

そうした状況が2024(令和6)年6月、「不動産業による空き家対策推進プログラム」として、大きく変わり始めました。
 
私のような業者の目線で言うところの重要な点として、まず「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」があります。低廉な空家等の媒介の特例として、これまでの原則を超えて、その上限を上回る媒介報酬を受領できるようになりました。
 
ただし売買は、その上限は30万円の1.1倍(30万円+消費税)とされ、賃貸借は貸主から受領できる報酬に上乗せ可とされています。上乗せ可と言ってももちろん際限がないわけではなく、報酬の合計が賃料の1ヶ月分の2.2倍以内となっています。

コンサルティング業務推進による新たな可能性~1人社長の広告代理店

そして私がこれは大きいなと感じたのは、「媒介業務に含まれないコンサルティング業務の推進」がうたわれているところです。

宅建業というのは基本的に媒介報酬がその収入であって、どんなに相手のために尽力しても最終的に「やっぱりやーめた!」と言われてしまえば無報酬で終わるというのが原則です。
 
これまでのこちらの労力や知見に金を払えというわけにはいかないものでした。
 
それがこの推進プログラムで、不動産コンサルティングサービスの認知度向上をはかり、媒介報酬とは別に報酬を受けることができるという点を通達により明確化するとされました。

また、「空き家の管理に係る報酬は、媒介報酬とは別に受け取ることも可能。」と強調されています。

宅地建物取引士、その専任性の変化~1人社長の広告代理店

そして、これらに関する資料に目を通して感じたのは宅建業者を空き家課題に参入しやすくさせる施策を通じて、宅建業界の仕組みもいろいろ変化しそうだなという点です。
 
たとえば、「専任性の考え方」について。宅建業者は事業所の5人に1人、宅地建物取引士を置かなくてはならず、事業所に複数いる取引士の中から「専任の宅地建物取引士を選任」する必要があります。
 
わかりやすく言えば、取引士の中のリーダーということで良いと思いますが、専任の取引士はこれまで他の会社の役員になれないとか、他の士業に登録して仕事するのは基本的にNGなどという制約がありました。
 
しかしながら、「所有者等に対する助言、総合調整等の業務」と「所有者等から受託して行う空き家等の管理業務」を行う専任取引士はその関連業務に従事できるとされました。

東京では専任の宅地建物取引士の副業が原則解禁~1人社長の広告代理店

読んでくださっている方にはご利用には、きちんと関係先へ確認していただきたいと思いますが、たとえば東京都では『「専任の宅地建物取引士」の副業について』という文書で、一定の要件を満たせば、副業が認められるということが明らかにされています。
 
こうした動きとも相まって、専任性という考え方も時代と共に変化していくと思われます。いずれにしても、空き家課題に宅建業者を関与させる取り組みに国が本腰を入れ始めたわけですから、今後のその動きを見守りたいと思います。

不動産業による空き家対策推進プログラムについて(国土交通省)
「専任の宅地建物取引士」の副業について(東京都)

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