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アニメ『ガールズバンドクライ』感想・ネタバレ

イジメと家族との確執から逃れ、上京してきた高校生の仁菜。偶然にも、自分が大好きだったバンドのボーカルと出会い、バンドを始めることになる。不器用でまっすぐな若者が、バンド活動を通して、成長していくストーリー。

最近では『ぼっち・ざ・ろっく!』も流行ったが、『ガールズバンドクライ』は圧倒的。どちらかというと『パリピ孔明』を思い出す。映像も音楽もすばらしいし、もちろんストーリーもいい。さらに、ボケやツッコミの間もいい。

「バンドあるある」というか「パフォーマーあるある」だが、どうしても幼稚性の高い人がほとんどだ。私自身も「マジシャン」をしていたのでよくわかる。そんな人たちが集まると、人間関係のトラブルが絶えないのは言うまでもない。

普通なら、そこで「はい、サヨウナラ」なのだが、本作は「バンド活動」を通して、互いのダメダメな部分を受け入れながら、トラウマを乗り越え、どんどん人間的に成長していく点がすばらしい。まあ、バンド系のアニメはすべてそうなのだろうが(笑)

とくに、主人公の仁菜は、正義感が強く、極端な考え方で、主観と感情でしか物事を捉えられない。しかし、行動力は鬼。という私の「主人公全員ADHD説」を裏づけるにふさわしいキャラ。

そんな彼女が最後には、イジメが原因で絶交していた、かつての親友ヒナの気持ちに気づくことになる。お互いに同じ気持ちであったこと、思い出を共有していたことが、じんわりと心に響く。

人間関係は、鏡であるとよくわかる。感情的になると、自分のことばかり考えてしまって、トラブルが起きやすい。しかし、大抵はお互いに同じことを考えている。だからこそ、大切なのは「言葉を交わすこと」だと本作は教えてくれている。とはいえ、若さゆえに「伝え方」が悪くて、またトラブルを引き起こすのだが(笑)それを何度も繰り返して、親密になっていくのが人間関係の醍醐味だろう。

ストーリー的には、主人公が「作詞」をする過程で、自分と向き合い、気持ちを言語化できたことがキッカケになっている点がまた面白い。

多くの人は、その言語化をサボるので、人間関係のトラブルになる。言語化をサボって、先延ばしにするほど、問題というのは自分の中で、大きく膨らんでいくもの。最初から言葉にしていれば、トラブルにならないことのほうが多いだろう。多いと言うか、ほとんどではないだろうか。もちろん、伝え方には注意が必要だ。

本作は、10〜20代前半女性の「心の課題」や「人間関係の悩み」を詰め込んだ作品になっているので勉強になる。女性がどう考えているのか。なぜ素直になれないのか。感情と言葉と行動のチグハグ感。わがままでどうしようもない感じ。それが、またいい。

そもそも人前でパフォーマンスをする人間は、とにかく自分勝手で盲目的。他人には通用しない、自分だけの理屈があって、それを貫き通す。だからこそ、魅力的だし、おもしろい。愛すべき変態なのだ。それを再認識させてくれた作品『ガールズバンドクライ』。いや〜、すばらしかった。

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