Kohei Yanagawa

文章はぜんぶフィクション / 短歌 ■Twitterはこちら: https://t…

Kohei Yanagawa

文章はぜんぶフィクション / 短歌 ■Twitterはこちら: https://twitter.com/koheiyngw

マガジン

  • 短歌

    まじめに作った短歌

  • 最近聴く曲

    最近聴く曲のまとめ

  • 東京を離れることにした。

    東京から引っ越すことになった時に書いていた日記です。プライベートな日記として書いていましたが、せっかく書いたので分割してこちらに残しておこうと思います。

最近の記事

今回の公転について

全ての問題を解決するための冴えたやり方があるはずだ。 そんなことを考えてしまう人は、遅かれ早かれ問題だらけの人生を送ることになる。もうすでに問題だらけの人生だからそんな考えに行き着くのかもしれない。どちらにせよ、銀の弾丸の存在を信じてやまない人の人生はかなり悲惨なものだ。 そうはなりたくない。けれども、自分の人生がそうではないと言い切れる確かな根拠は存在しない。そのことがとても怖い。 生きている実感を得る過程で、その行動が目的に転じてしまうことがよくある。その反転を再び正転

    • 2023年に詠んだ短歌

      暗闇に目を慣らしつつ穏やかに一番悪い未来をおもう 住む場所が安定せずに剥き出しの変数として渡されてゆく 風景の鮮度が落ちてゆくたびに呼吸は深く緩やかになる 四日目の風邪 人生のものすごく貴重な四日間ずっと風邪 十五年前の誰かのアメブロを勝手に読んで勝手に泣いてる 二時半になっても眠れず部屋中の冬ゆび先に集まってくる 帯付きの(思ったよりも温かい手触りがする)百万の束 現金にすれば片手に収まってしまう来年も再来年も 重箱の四隅を集めて新しい箱を作った、みたいな悟

      • 【短歌】連作『水が来ている』

        だとしても浅い眠りの中で見る何かの青写真だよこれは すぐに出る言葉を二、三出せばまた跳ね返ってくる老いたあなたが ポートレイト・オブ・トレイシー お父さん僕のことどう見えていますか iPhoneが手からはみ出てゆく前の友達、それ以降の友達 鈍色の帰り道にまだずっといる顎関節に予感を宿して 一度だけ戻れるのなら選ぶかも十一月の後部座席を なんとなく歩道橋から撮っていてよかった涼しいだけの土曜を 古代魚のように沈んだN-Iが僕を見ている風の難波で 真昼間の日本橋を

        • 最近聴く曲20230313-20230930

          Laura Les - Hauntedこれも最近また聴く。流行のスパンが短くなって1、2年前の曲でも懐かしいなと思うようになってしまっている。いいことなのか悪いことなのかわからない。というか、いい面も悪い面もある。 数年前に病気で体がめっちゃ痛いときによく聴いていた。 If I Were You - GhostIf I Were Youはけっこう聴いているのに曲がひとつも思い出せない。キャッチーなクリーンコーラスとノリの良さを備えているので耳に残る。耳に残るのに曲を思い出せ

        今回の公転について

        マガジン

        • 短歌
          13本
        • 最近聴く曲
          2本
        • 東京を離れることにした。
          8本

        記事

          【短歌】連作『寒いから時間が長い』

          煽られる冬の有線イヤホンに我慢ならない日が続いてる 背後からそっと侮蔑の眼差しで踏んでやりたい右の踵を 1と3で乗る人たちを(その調子)見下ろしましょう二階席から 1Kに油煙を連れて帰るなよ泳ぎきれない波が来るから 寒いから時間が長い 僕たちは食えなくなるよいつか絶対 アルコールもうやめようよそんなんじゃアポカリプスを生き抜けないよ 先輩が狂った 僕も昼下がりたまにそちらの方を見てます UFOが去る時みんなUFOのことを忘れる夙川沿いで 閃光だ ひとつのあまり

          【短歌】連作『寒いから時間が長い』

          【短歌】連作『第三次儀式産業』

          百年後まだそうである丘陵のような煙草の背を撫でている 抽象化されてゆくからどの時の施設も同じ石と鋼だ なにか膜のようなものがなくなって事前に描画されている顔 投げられる前にあるからどの人もあなたに言及できないでいる 謝ればエゴは研ぎ澄まされてゆく死人に口がないと言うなら 実際はどうとかじゃなく体感でもうずっと五月の夜のまま あなたへの応答として生活を続ける気にはどうもなれない 囲むしかない寿司があり儀式とはどこをとっても取り囲むこと 張り詰めていたから顔が本当

          【短歌】連作『第三次儀式産業』

          【短歌】連作『世の中のすべての僕』

          青白い湿度の中をむくむくと三鷹行きの重い重い風 『ナトリウム灯を守ろうの会』いまここに発足させます僕が 辻斬りよ クリーム色に馴らされた連絡通路には逃げ場なし 生き急いでるのは彼も同じだよ。忍耐不足で死ぬよ、あいつは 七月の暗渠の上にそびえ立つtechの人の弱き足取り 都市はもっと明るくていい全員の瞼の裏が痛くなるまで はいカット 僕らは未来に生きていてあと少ししか残っていない 看板の亡霊を見たことがない 再再再再再開発 選択と集中あなた今日のことちゃんと忘れ

          【短歌】連作『世の中のすべての僕』

          あなたの上半期は失敗です (※ただし罪が成り立つ場合に限る)

          上半期という言葉を初めて知ったのは、親の車の中でFM802を聞いていたときだった。 午前中で、暑くて、でも車の中は空調が効いていて、カーステレオからはJ-POPが流れていた。曲の合間のトークでDJがやたらと「上半期」という言葉を使うので、困惑したのを覚えている。当時の僕は上半期という言葉を知らなかった。けれども数回耳にするうちに文脈から意味を理解した。そうか、一年の最初の半分を上半期と呼ぶのか。ということは下半期という言葉もあるんだろうな、と思った。そして実際にあった。僕はそ

          あなたの上半期は失敗です (※ただし罪が成り立つ場合に限る)

          つまりは永遠に生きたいという話。

          自分は何月に死ぬのかな、みたいなことを最近よく考える。西暦何年に死ぬのかではなく、何月に死ぬのかを考えている。Webサイトのフォームなら「年を入力してください」というバリデーションメッセージと共に、該当箇所の入力欄が赤くハイライトされてしまうだろう。 今の僕は自分がいつ死ぬか、つまりあと何年生きるかについて、ひどく無頓着になっている。いつか死ぬのだろうが、その時は桜でも咲いていてくれるといいなだとか、十月の穏やかな夜であればいいなだとか、そんなことばかり考えている。 いつ死

          つまりは永遠に生きたいという話。

          【短歌】 連作『あなたにはあなたの魔法』

          心から(アバダ ケダブラ)申し訳ないと思わなかった日はない いま君を何度も生かすその意味をエスカリボルグどうか伝えて 終末期 やわらかに鳴る呼吸器にルイズの髪の香りが満ちる 今までにティロ・フィナーレで葬ってきたものの名を呼びたくて呼ぶ 危機管理 魔法少女の夢の中だけにしましょうお会いするのは あなたにはあなたの魔法 煙に巻くことのつらさをいつか教えて 元ネタ: 1首目 ハリーポッター 2首目 撲殺天使ドクロちゃん 3首目 ゼロの使い魔 4首目 魔法少女まどか☆マ

          【短歌】 連作『あなたにはあなたの魔法』

          一人で不安になるのは嫌なので、みんなにも不安でいてほしい。

          どうにも落ち着かない。寝ている時以外は四六時中不安だ。だからといって日がな一日眠るわけにもいかないので、こうして起きている。 不安を解消する方法は結局のところ「行動する」ということに尽きるらしいが、何も考えず出鱈目になんでもいいから行動すればいいというものでもない。何が不安なのかを洗い出し、そこから逆算して取るべき行動を考え、実際に行動に移すのが効果のあるやり方だ。 では、何が不安なのかわからないけれどとにかく不安な場合はどうすればいいのだろう。 何かをしなければいけないよ

          一人で不安になるのは嫌なので、みんなにも不安でいてほしい。

          最近聴く曲20230311

          ポップしなないで - 魔法使いのマキちゃんSpotifyのプレイリストに入っててたまたま聴いたらよかった。初期ゲスの極み乙女とかあの辺りの古き良き2010年代マナーが踏襲されている感じがして懐かしい気分になる。 syrup16g - 生活ずっと名前だけは知ってるバンドだったけど、最近聴き始めてハマりはじめている。最近ニートになったりいろいろでなかなか生活がファンキーなことになっているので、刺さるものがあった。 クレナズム - さよならを言えたかな桜舞い散る系別れの季節ソン

          最近聴く曲20230311

          【短歌】 連作『すべての夜へ続く手触り』

          暗闇に目を慣らしつつ穏やかに一番悪い未来をおもう 住む場所が安定せずに剥き出しの変数として渡されてゆく 風景の鮮度が落ちてゆくたびに呼吸は深く緩やかになる 四日目の風邪 人生のものすごく貴重な四日間ずっと風邪 十五年前の誰かのアメブロを勝手に読んで勝手に泣いてる 二時半になっても眠れず部屋中の冬ゆび先に集まってくる 帯付きの(思ったよりも温かい手触りがする)百万の束 現金にすれば片手に収まってしまう来年も再来年も 重箱の四隅を集めて新しい箱を作った、みたいな悟

          【短歌】 連作『すべての夜へ続く手触り』

          【短歌】 連作『あなたも夢の言葉を言って』

          ヨドバシのかばん売り場で目隠しをいきなり外されたような、真昼 鈍器での殴打が死因 小さめのフライパンだけ持って引っ越す お互いにねじれの位置を向いていてそこだけ強い三月の風 何も言わなくてもアイスコーヒーの氷はとける春のはやさで 永遠に生きるつもりで反撃をするから見せて必殺技を 生活の死角 もとからそうだったようで初めて聞く二人称 それでいいならいいけれどオブジェクト貫通バグのごとく剥き出し あなたには夢の言葉で話すからあなたも夢の言葉を言って シリアルの底の

          【短歌】 連作『あなたも夢の言葉を言って』

          【短歌】 連作『海鳴り』

          シャンプーを詰め替えるとき浴室に満ちる香りで海を弔う コインランドリーの夜は夜のまま痩せて薄刃のような静けさ 浴槽の湯が冷めるまで反芻は止まず ゆるしには手順がある どの顔も覚えていない 騙すとき頬粘膜は湾の内側 揺れているコンテナヤードの灯の中で息継ぎをするときの海鳴り 潮 錆 生活のため偽っていたことがある コンクリート 帰る日の塩で爛れた国道のバス停のバスだけが紫 人混みが最小単位ずつ分かれ朝は無限の秩序を孕む 燃やされたはずの手紙を読みながら十二月ごと

          【短歌】 連作『海鳴り』

          【短歌】 連作『この先は冬になるから』

          戦いの火蓋がMDMAで愛に目覚めて死んだのが今朝 僕よりも宇宙に近い場所に住む人をコンビニの前に捨てた 「何番目のおれだろう」と言う人と街のはずれで相部屋になる 落雷の影響でこの場所の人たちは互いのことが見えない 使われていない給水管を手でなぞれば切り傷のような風 昨年の冬の神田のあたりまでハンドクリームの匂いは届く 親知らずの跡にまた血が滲んでそこだけいつもその時の冬 この先は冬になるから僕たちはいよいよ狩られてしまうのだろう

          【短歌】 連作『この先は冬になるから』