舞台『浜松チュー中納言物語』 作・演出・美術:高山康平 セルフインタビュー【投げ銭】
※この記事は投げ銭ですので、最後まで無料で読めます。舞台観劇後などにお読みいただいて、お気持ちをいただけたら今後の活動費に当てさせていただきます。
今回はいよいよ2週間後(11/29~12/1)に迫った舞台『浜松チュー中納言物語』の作・演出・美術を担当する高山康平によるセルフインタビューをお送りします。
若手演出家コンクール2024 二次審査対象作品!
−本日はよろしくお願いします。まず簡単に今回の舞台についてご紹介いただけますか?
あ、その前に今回、公演をやるに至った経緯を話してもいいですか?
−あ、はい。どうぞ
実は、二年前に初めて舞台の演出を務めた『相対性家族』という公演があったんですが、その作品が若手演出家コンクール2024の一次審査を通過しまして、今回はその二次審査対象作品として公演をすることになったんですよ。
−あ、そうですか。
あれ、なんか反応薄くないですか?
−え、何か言って欲しいんですか?
いや、そうじゃないですが、普通あるでしょ、「おめでとう」・・・とか。
−あの、言っておきますけどインタビューってあなたの自慢をする所じゃないんで、ただこちらの質問に答えてくだされば結構ですから。
・・・あ、はい。すみませんでした。えっと、今回の作品を簡単に紹介しますと、「真っ直ぐに歪んだ千年の恋物語」といった感じですね。
古典への挑戦
−今回タイトルが『浜松チュー中納言物語』とのことですが、ふざけているようにしか思えません。ふざけてるんですか?
その質問、悪意ありませんか!?
−質問に答えてください。
あ、はい。まあタイトルは実際ちょっとふざけて付けたところはありますけれど、内容は至って真面目です。真面目にふざけています。
−じゃあふざけてるんですね。
ムッ。あのですね。今回、古典文学を扱う上で“真面目にふざける”ということが非常に大切だったんです。古典の世界は独自の美しさがありますが、そのままでは現代のお客さんに届かないと思ったんです。ですから、ここでいう“ふざける”というのはある種の翻訳のことを指すんですよ。
−なるほど。確かに古典は生真面目に読むと却ってわかりにくくなる場合がありますよね。
はい。もちろん当時の人々がどのような感覚で読んでいたのかはわかりませんが、思い切って崩していくことで現代に通じる普遍性を取り出して、感じていただくことができるんじゃないかと思います。
−しかし、原作に「浜松中納言物語」を選んだのはどうしてですか?
『クラウドアトラス』という映画があるんですが、その原作小説は三島由紀夫の『豊饒の海』にインスパイアされて書かれたものらしいんですね。それで、『豊饒の海』を読んだら今度はそれが「浜松中納言物語」を典拠にしていると書かれているんです。そして、いずれの作品も輪廻転生をテーマにした作品なんですね。
−ああ、つまり輪廻を題材にした「浜松中納言物語」そのものが別の作品に生まれ変わって転生を繰り返しているということですね。
そうなんです。そのことに気づいてからずっとこの作品の特別な力に惹かれるところがあったんです。そのほかにも中村真一郎氏によってすでに戯曲(『あまつ空なる』)にも翻案されています。
−その特別な力というのはなんなんでしょうか?
実は「浜松中納言物語」は首巻が散逸しており、完全な形では見つかっていないんです。おおよそのあらすじはわかっているものの、その欠落した部分が作家の想像力を掻き立てるんだと思います。実際に『豊饒の海』は主にその散逸した首巻への想像力が作品を駆動させているように思います。また中村真一郎氏の『あまつそらなる』も原作からかなり脚色されており、原作に対する解釈は僕と真逆とさえ言えます。
−今回、原作から脚色したのはどのような部分ですか?
原作の大まかな流れは維持しています。特に原作には緻密な神話構造が働いているのでそれは壊さないように注意しました。ただストーリーに複雑なところがあるので、いくらか分かりやすく眺められるようにメタ構造を加え、そこにオリジナリティを出しています。
セリフは基本的にゼロから書き上げています。その中に原作中で綺麗だなと思ったフレーズや和歌をうまく組み込んで書きました。
登場人物のキャラクターは原作をベースに戯画化したようなところはあります。ただその中で、今作のヒロインとも言える「吉野の姫君」の人物像だけは意識的に変更しました。原作での「吉野の姫君」はとてもか弱く、たおやかな女性として描かれていますが今回の舞台では快活な女性として表現しています。
−どうしてですか?
古典文学を扱う上で、女性をどう扱うかというのは避けて通れない問題です。つまり、女性を無力な存在として描くということは男性中心の父権主義的な社会を肯定し温存することになるのではないかと考えました。時代劇ならまだしも、今回はあくまで現代的な視点から芸術表現を行おうという立場ですから、そうしたジェンダーの問題は中心的なテーマの一つです。そしてそのために「吉野の姫君」の人物像は変更される必要がありました。
テーマ① ジェンダー
−ジェンダーの問題には以前から関心があったんですか?
もちろん今の世の中をジェンダーへの関心なしに過ごせるはずはありませんが、それを作品の中で扱おうという意思は正直持っていませんでした。原作を読んで、向き合わざるを得ないと思った次第です。ただ去年公開された「バービー」という映画を観てから、少しモヤモヤしたところはありました。
−「バービー」は男性中心社会を痛烈に批判した作品でしたね。どういうところにモヤモヤしたんですか?
男女の二元論に囚われたまま最終的には“ありのままの自分”という安易なところで映画が決着した点です。現実の個々の問題に取り組む際にはあまり問題にはならないかもしれませんが、作品の中でテーマとして取り上げるとなるとこの二元論は非常に厄介です。シーソーがギッタンバッコンするばかりですから。この辺りに西洋的な考えの限界があるんだと思います。
テーマ② 東洋思想と自我を超えた個
−元々、東洋思想や日本の古典芸能に影響を受けているようですが、今回の作品にも色濃く反映されているんでしょうか?
ええ、それはもう色濃いですよ。僕の能への愛情が随所に、というか全面的に現れています。
−でもそれなら初めから能を観に行きますけどね私なら。
そんなこと言わないでください!!
表面的に能の真似事をしたいわけではありませんが、やっていると必然的に一挙手一投足の動きを追究をすることになるんですね。ああ、こうやって型ができていくんだなというのがなんとなくわかる気がしています。
−それに付き合わされる役者の皆さんは大変でしょう。
ええ、それはそれは。主演の坂口さんは面白い芝居をする人なんですが、非常にストイックな人でもあり、作品が要求する厳しさと坂口さんのストイックさが妙にマッチしてしまっていつになく厳しい稽古となっています。
今回のもう一つのテーマは坂口候一を抹殺することかもしれませんね。
−物騒ですね。あとで訴えられるようなことしてませんか?
それは気をつけているつもりですが。。
ここで言う抹殺というのはそういう物騒な意味ではないです。その人の表面的な持ち味をあえて否定していくことでその奥の自我を超えた真なる姿を引き出していこうというものです。その意味で型というものは決して個を否定するものではないんです。
−そんな大それたこと言っちゃって、本当に大丈夫ですか?
うーん。それは最終的には来てくださったお客さんが判断することですね。
−あ、逃げたな。でもたくさんの人に観てもらえると良いですね。
はい。そう願っています。
舞台『浜松チュー中納言物語』は2024年11/29~12/1 江古田ワンズスタジオにて上演となります。ご来場お待ちしております!
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なんとこの度、2年前に劇団一の会で上演しました『相対性家族』の作・演の高山康平氏が、この作品で、2024年若手演出家コンクールの一次通過をしました!!グランプリを目指し、二次審査の為?急遽公演をすることに!?審査員の方がこっそり来ているはず!お客様の反応も、大いに反映されるかも是非とも応援に来てやってください!笑顔でお会い出来ますように!会場にてお待ちしております!
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作・演出・美術:高山康平!
出演:坂口候一 熊谷ニーナ 玉木美保子 川村昂志 伊藤聖実(客演)
日時:
11/29(金)15~/19~
11/30(土)11~/15~
12/1(日)11~/15~
料金:
一般前売り 3,000円
当日 3,300円
シニア 2,800円
学生 2,000円
チケットお申し込みは→
https://www.quartet-online.net/ticket/chuchu
場所:ワンズスタジオ
練馬区旭丘1-10-10 ワンズビル
03-4282-0233
アクセス:
西武池袋線東長崎駅・江古田駅共に南口歩 約10分
都営大江戸線 新江古田駅A1歩約12分
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