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ムービーパスの腹のウチ。

今週のmofiの目玉はこちら。コラムのボリューム、だいぶ膨らんじゃいました。

世界と北米の興行事情。数字で読むハリウッド | mofi 202号

世界の映画市場はどう成長しているのか? その中のハリウッドの立ち位置とは? MPAAが公開した最新の統計に加え、最速のニュースをいち早く読み解く、保存版の大解説コラム。(掲載:mofi 第202号 2018/04/16)

リンク先のロゴ、よくウェブで閲覧できる映画予告編の頭に出てきますよね。これは「アメリカ映画協会」と訳している資料が多いので流用して紹介しますが、原語では「Motion Picture Association of America」通称MPAAと呼ばれる団体を表しています。

ちなみに、ぼくが卒業した映画大学院、いわゆる「アメリカの5大フィルムスクール」の一角をなす「American Film Institute Conservatory(AFI)」の母体も、一般的には「アメリカ映画協会」と訳します。紛らわしい。日本での知名度が低いと、邦訳なんて誰も気にしないものです。

さて、予告編の冒頭で表示される「PG」「PG-13」「NC-17」など、レーティングで推奨年齢を定める機関として有名なMPAA。ですが、同機構はさまざまな業界リサーチと統計データをまとめていることでも知られています。

そんなMPAAが、世界と北米圏の興行収入データと、業界傾向を検証する資料を公開しました。毎年恒例の配布資料ですが、今年は名前を一新しつつホーム・エンターテイメント部門にも触れているので、より包括的な必読書になってます。

そこで、ぼくの方で個人的に資料を読み込んで、要チェックなポイントをとりまとめたのが、上記リンクのコラムというわけです。

数字が多いので、ざっと読み進める程度でも雰囲気はつかめるでしょう。折を見てちょくちょく見返してみると、案外面白い発見があったりもするはず。

気が向いたら、ぜひ購入してみてください。


ムービーパスの腹のウチ。

さて、ここからはちょっとオマケの分析を共有します。

日本在住の方はご存じないかもしれませんが、アメリカではいま「ムービーパス(MoviePass)」という定額制の映画観賞サービスが急速に浸透しています。

「日本円にして月額1,000円前後で、1日1本、映画館で映画を見放題」。映画ファンにとっては、まさに夢のようなサービスです。CEOは元ネットフリックス経営者で、自動レンタルDVD販売機チェーン「Redbox」の経営にも携わった、Mitch Lowe。一応ちゃんとした人が経営しているので、モグリじゃあない、ということですね。

これ、2011年に発足して以来、サービス内容と質には相当なブレがありました。ところがLoweが経営に加わった翌2017年、大口のシンクタンク的リサーチ会社「Helios and Matheson」が同サービスの株を大方買い取ってから資金が潤沢化し、超低価格での定額サービスが成立することになりました。

この価格破壊ぶりにはメディアも大騒ぎ。映画1本あたりのチケット価格は大抵1,000円〜1,500円はするのに、「こんなサービス、いままで知らなかった」「一体どうやって採算を取るのか?」「売り逃げするつもりじゃないのか?」と、業界全体がザワつきました。

そんなムービーパスの勝算はどこにあるのか? このオマケ考察では、2つの「腹のウチ」に触れます。


その1:顧客データの活用

映画館でムービーパスを使うには、2つの手続きを取らなければなりません。まず、スマートフォンの専用アプリを利用して、観たい映画を事前予約します。次に、専用のクレジットカードを使って、現地の窓口で実際に決済をする、という流れです。言っちゃあなんですが、けっこうめんどくさい。

ところが、この「アプリを使った事前予約」がキモなんですね。

ムービーパスは利用客が映画を観賞するたびに、いままでは地道にサンプルを収集するしかなかった膨大な顧客データを真水で取得することになるわけです。

これが無価値であるワケがない。

いつ、どのような頻度で、どんな映画を、どの時間帯に鑑賞するか。配給会社も、映画館側も、宣伝会社も、この統計結果は喉から手が出るほど欲しい

昨今のフェイスブックを取り巻く個人情報問題は無視できませんが、単純に個人情報をバルクで売買することだけが、こういったデータを活用する方法じゃない。よりピンポイントなマーケティングを後押しすることや、はては配給会社がどんな客層を見込んで、どんな企画を選ぶかの工程に、強い影響力を持つことができる。

ムービーパスは親会社であるリサーチ会社だけでなく、業界各社にとって有益なサービスを提供する存在になれる、というわけです。


その2:アメリカの映画データを読むと...

さて、ここが今週のコラムに絡むポイントです。MPAAレポートのハイライトのうち「10.」に上げた項目は、このムービーパスがどのように成長するつもりなのか、よく理解するきっかけになります。

Mitch Loweはもともと、こんな証言を繰り返しているんですよね。

"This is why we priced it at $9.95. So where 89% of film-goers, over 200 million people, only see four movies year. And they spend $40 to $60 a year on movie tickets. When they join MoviePass, now they're spending $120. We're increasing their consumption and they'll do it because it's $9.95 and it's an unlimited value for them."

(Business Insider "How does MoviePass make money?"より抜粋)

彼の発言の全文はこちらで確認しておきましょう。

そして、データに関する詳細は冒頭のコラムを購入していただくとして...。(笑)

ポイントは、ほぼ成熟しきった北米市場が伸びしろを拡大するにはライトなユーザーをごっそり取り込む必要があるわけです。年に10本も20本も映画館に通う映画ファンは、黙っていても足を運んできてくれるものとして考えていい。

大事なのは、年に1度くるかこないかの層、あるいは2〜5本程度しかお金を落とさない層です。データを素直に読み込めば...ムービーパスがどのデモグラフィーを狙っているのか、はっきりとわかるでしょう。一見、大損をこいているとしか思えないサービスが、強気の価格設定で驀進している理由も、よく理解できるはず。

ということで、ぜひコラム全文をご覧になってください。継続課金マガジンへの登録がお得です。

もちろん、mofiのかたわれである三谷匠衡が厳選した、今週のニュースもついてきますよ。

ではまた来週、お会いしましょう。

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