ちょっと待て、残業は悪なのか
午前2時。
新卒で入社した会社の退社時間はいつもこんな感じだった。世間の風当たり的にはかなりマシになったとは言え、多くの企業、特に中小企業ではいまだに長時間労働やサービス残業が蔓延している。
「将来、起業したい」
そんな想いで新卒入社した人材系ベンチャーでは、おなじく「将来、起業したい」と願う同僚たちと時間も忘れて仕事に熱中した。成果=働いた時間 が当たりまえの環境で育ったからか、残業に対して疑問を持ったことは一度もなかったし、成果を上げたいのに残業したくないというひとの気持ちなんてわからなかった。
ただ、最近どうにもこの考え方が変わってきたのでまとめてみようと思う。
そもそも、残業で成果が出てるのか?
なんの疑いもなく、残業をすることが当たり前の環境だった自分が、「残業と成果」の相関性と向き合うのに、10年以上もかかった。下記の記事によれば、日本人の残業時間は平均25時間前後とのこと。つまり、1日に1時間強の残業をこなしていることになる。
働けば働くほど成果が出る、これを信じて止まなかった理由は、実際に自分自身がサラリーマン時代に1日15時間ほどの労働時間のなかで、地元の友人や、他社で働く同年代と比べて目に見える形で成長を実感できていたからだ。
時間をかけなければ成果に繋がらないのか?
そこで生まれる疑問がこの問いである。「時間をかけなければ成果に繋がらないのか?」。その答えはノーだ。当時を振り返ると、終わりの時間が決まっていないからマイペースに、悪く言うとダラダラと仕事をしていたし、当然終わらせる時間も決めてないから集中力も低くなる。眠たい目を擦りながら、体力的にも精神的にもクタクタな状態だったことはまちがいない。
いま思えば、当時14時間かけていた作業を12時間で終わらせることは容易だったし、万全の体調のもとITなどを駆使しながら仕事のやり方まで変えていければ、きっと8時間以内に終わらせることも可能だったはずだ。結局のところ、残業をすることで「時間を使う」という、もっとも楽で身体に負担をかける手段に逃げていただけのようにも感じている。
社員が経営する残業ゼロ100ヵ月の会社
2020年1月、トゥモローゲートでは社長を採用した。ご存じの方も多いと思うが、Twitterでも有名なアクシアの米村社長だ。業務委託などではなく、正式に雇用契約を結んだ正社員としての採用で、おそらくこれまでの採用のあり方のなかでもなかなか例のない採用ではないだろうか。
アクシアの代名詞は、「日本一残業の少ないIT企業」。突発的なトラブルや、無茶な顧客要求なども多い同業界において、本日2月1日でなんと残業ゼロ100ヵ月を達成したとのこと。自分たちのビジョンに沿った社員の働きやすい環境をつくるため、ある日突然残業ゼロを社員に通達し、その日からこれまで一度もその約束を破ることなくこの日を迎えたそうだ。
残業ゼロ100ヵ月達成の秘訣は「社長の覚悟」だけ
米村さんに残業ゼロ100ヵ月を継続できた理由について聞いたところ、とてもシンプルな答えが返ってきた。「西崎さん、残業ゼロを達成しようと思ったら、経営者が腹を括って何があろうと絶対に残業をさせない、そんな覚悟だけですよ」と。アクシアのビジョンは、”らしさ”が当たり前の世界に変える だ。
そんなビジョンもとに掲げられたアクシアのバリューは「正しことをしよう」「適正なことをしよう」「効率的なことをしよう」であり、そのバリューを守るために残業ゼロの企業づくりに踏み切った。この想いに沿った大改革には共感しかないし、一緒に仕事をすることになった大きな理由のひとつでもある。
米村社長のブログ|残業ゼロを100ヶ月間続けてきて今思うこと
それでも、うちは残業ゼロの会社にしない理由
ここまで読んでいただいたひとの中には、もしかすると「やっぱり残業ゼロにしたほうがいいよね」と思っていただいた方もいるかもしれない。ただ、今回伝えたいのはもう少し別の視点だ。なぜなら、トゥモローゲートは「絶対に残業ゼロにはしない」会社だから。誤解のないように伝えると、長時間労働を強要する会社をづくりをしたいわけではない。自分たちが目指す理想の会社像は「社員によって選べる会社づくり」であるからだ。
社員のやりたいことや環境に応じて選べる働き方を
冒頭に、成果=働いた時間ではないと伝えたが、正確に言うと、「働いた時間だけではない」ということ。量が質を生むことも当然実体験として理解している。だからこそ、本人の意思に応じた働き方を、会社に強制されることなく選べる会社づくりをしたい、というのが自分の考え方である。
年齢や家族、家庭環境などの変化で、自分の働きたい働き方も大きく変わる。仕事に熱中したいひとは法令の許す範囲のなかで仕事に打ち込む環境を、家族との時間を十分作りながら仕事を頑張りたいひとは決められた時間内での業務を。これを実現することが自分たちが目指す理想の会社である。
課題に対して、常に変化を、一歩ずつ前へ
正直、いまうちの会社が社員が満足する環境や待遇を100%実践できているかというと、決してそんなことはない。家族最優先は自信を持って実践していると言い切れるが、それでも社員が無理をして仕事に取り組んでいる場面があることをもちろん知っている。課題は外から見る以上にはるかに山積みだ。
先日米村さんからトゥモローゲートの理想とする会社づくりを実現するために「勤務間インターバル」の導入の提案があったが、すぐに役員で導入を検討し、コロナ自粛期間終了後、社内実行に移せるように準備している。
もちろん、これだけですべてが解決するわけではない。自分が必要だと信じて実行していること、それはいきなり完璧な会社づくりをしようというわけではなく、一歩ずつでも着実に社員と共にビジョンに近づいていく会社づくりが必要じゃないかということだ。
あれ、働くってなんだっけ?
ここまで残業をテーマに話をしてきた。あらゆる場面で「働き方改革」が叫ばれるなかで、普段の業務が忙しく、なかなか進まない業務環境の改善について、アクシアの残業ゼロ100ヵ月達成を目の当たりにし、できるだけ多くのひとと一緒に立ち止まり「働く」について考えてみたいなと感じたからである。
ビジョンに近づく会社作りを
流行っているからこんな制度を導入してみる、体裁が気になるから実行してみる、もちろん行動することは大事だが、ここに自分たちが目指すビジョンが紐づくと、目的が具現化され、会社が一枚岩となってより強い組織として戦えるんじゃないだろうか。
会社には会社の文化があり、目指すべきゴールもバラバラだ。ただ、前を向いてるどの経営者も「社員に気持ちよく働いてもらいたい」という想いは同じであると信じたい。アクシアの会社づくりや、この記事を通して少しでも多くの会社が自分たちらしい「働く」を考えるきっかけになれば嬉しいなと。
教えてください、#わたしのホワイト企業
最後にお願いがあります。
アクシアの米村さんが下記ブログのなかでみなさんが考えるホワイト企業、 #わたしのホワイト企業 というハッシュタグで働くについてみなさんの声を募集しています。
米村社長のブログ|残業ゼロを100ヶ月間続けてきて今思うこと
いい会社、いい組織とは何なのか、アクシアの残業ゼロ100ヵ月を機に、多くの会社がらしく働ける会社づくりに向けて、声を上げていただき、本当の意味での働き方改革が進むムーブメントになればと思います。最後まで読んでいただきありがとうございました。