ARと未来の都市 AR Service Design Meetup #1
6/21、渋谷のAbema Towersで開催されたAR Service Design Meetupでのスライドと話したスクリプトを公開します。
こんにちは、石田です。
東京大学大学院で建築デザインを学んでいます。その中でも未来の建築や都市構想が専門です。なので例えば、「ARの要素技術はどんな詳細か?」より「ARを使えばどんな都市や建築や暮らしを描けるのか?」というところに興味があります。
たとえば自動運転×建築をテーマにした作品を作りました。運転席が不要になれば、モビリティ空間は動く一つの部屋のようなもの。それをむしろ建築空間と捉え、新種空間を設計していこう!というものです。
かつて面白い都市構想として、「メタボリズム」というムーブメントがありました。「建築は機械じゃなくて生命なんじゃー!」と、「新陳代謝する建築」を掲げました。
細胞が新陳代謝するように古くなった建築の部分を交換し、細胞は変わるが建築自体は永続性がある。当時の人は実装しようとして失敗もしましたが、「概念」としてさまざまな設計や開発に影響しました。
この概念・見方としての都市構想の価値はすごいものがあると思っています。
しかしメタボリズムは1960年代のお話。未来構想としての建築の規模は、次第に小さくなっています。
社会が複雑したなかで、通信や自動運転やAIや金融や社会学や人間や医療やすべてを考えながら統合的にビッグピクチャーを描くのはとても大変。
しかし都市がどこに向かうか見失っている今だからこそ、新しい概念を含む統合的なデザインによるビッグピクチャーが必要と考えています。
そんな中で、MRをテーマにした作品をつくりました。「もしもスマートグラスが普及したらどんな暮らしが描けるか?」という作品です。
スマートグラスが普及すればグラス越しにディスプレイやキーボードが見えることが日常になります。そこでは建築も映していいと思っていて。
「モノとして存在しなくても、グラスを通して「見える」バーチャルな壁があれば、それは建築の一部ではないか!」、というところから始まっています。
例えばバーチャルな壁なら、自分の好きなように壁を出現させ不快な景色をシャットアウトしたり、集中したりすることもできるはずです。
そこでスマートグラスが普及した社会を想定し、「バーチャルな建築と物理的な建築を一体的に設計することで可能になる都市」を描きました。
製作した都市構想は青山スパイラルで展示しました。
模型と図面とパースとHololensで構成されていて、Hololensをかければバーチャルな壁と物理的な壁が一体になった姿がみえます。
こんな風に(カメラのせいでRGBわかれてますが)。
都市構想の設計のポイントは主に2つあります。
1つは勾配です。スマートグラスの世界観で、視界にはさっきまであった壁やら空間やらがものすごいスピードで消えたり生まれたりしていきます。
そこでは次第に「自分がどこにいるのかわからなくなっていく」と思います。
そこで目を瞑っていてもおおよそ「自分がどこにいてどっちを向いているか」を教えてくれる「勾配」という身体情報を活用した設計をしました。
実は設計の敷地が渋谷スペイン坂だったのですが、展示では模型の足元に渋谷スペイン坂を再現しました。
実際に勾配を歩きながら、グラスをかけて模型をのぞき込む。視覚情報以上に、水平床に立っているのと勾配床に立っているのでは得られる情報量がまったくちがいます。
勾配は全身で感じられる身体情報です。の上に人がたつと、ふくらはぎの筋肉が張り、膝が少し曲がり、腰が落ち、少し前傾する、というように。
何百の坂や勾配を回って、勾配計で勾配を測り、角度と特性とそこで発生する人のアクティビティの関係性を探っていくことでそんなことを考えていきました。
設計では、勾配とアクティビティを関連付けて詳細に設計を行っています。
面白い設計のポイント2つ目。
それは「グラスをかけている人がどんな建築をみているかほかの人にはわからない」ということです。
例えばある人が自分のためだけの壁を出現させると急に静かになったり、あるいははしゃぐ人がいたり。まるでおかしな人のよう。
「Aさんの建築→Aさんのふるまいの変化→Bさんに影響を与える」という反応。Aさんのふるまいの変化を介してAさんの建築はBさんに間接的に作用します。
そういった間接的な建築の反応が広がっていくことが面白いところで、これをいかにして「系」にできるかが設計のポイントでした。
一つ一つの建築や壁はふるまいをもっています。
例えば「飛翔する壁が飛んでいく→人はそっちの方向をみる→その先にダンスパーティが開かれていて、別の壁がそこで人と一緒に踊っている→楽しそうと人が集まっていくと、欄間が笑うような動きをしてほかの人に知らせる」という反応が起こります。
中心のバレリーナのように閉じこもって孤独を楽しむ人もいれば、右の男のように海にいるかのようにくつろいでいる人もいれば、愛を育む人もいる。それぞれの人が自分のための壁や障子を出現させて自分たちの空間を作り上げる(=バーチャルリノベーション)ことで、同じ空間のなかで多様な人々が同居して暮らしている。
しかし壁の間接作用の連続によって人の交流は生まれていく。そんな設計です。
今後も引き続き都市構想をつくりながら、それを設計・実装して体験できる形にもしながら、未来を考える場と指針を作っていきたいと思っています。
これまでの思考や議論はnoteやTakramcastでチェックいただけます。
今回の作品に関する議論は、デザインファームであるTakramが主催するTakramcastでも、コンテクストデザイナーの渡辺康太郎さんと別角度からお話ししています!
Takramcastは他にも10本ほど参加しています!各回2500~4000回再生くらい。テクノロジー、デザイン、アート、建築、ビジネスと幅広く議論を展開しています。以下から出演回一覧が見られます!
以上、イベントトークのスクリプトまとめでした!
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