輪島朝市

平成時代以降の輪島の朝市は観光客騙しの店ばかりだと思い込んでいた。

だからこれまで買い物なんてしたことがなかった。

コロナ禍で輪島から観光客が消え去った。

朝市のほとんどの店舗は休業したと聞いた。

それに加えて朝市組合員同士の訴訟問題も深刻化しているらしい。

輪島の朝市もとうとう終わりか…

見納めにと早朝に道を歩いてみたら、たしかに観光客向けのテント店舗は出ていない。

しかし、小さなゴザ一枚に漬物や野菜を広げるおばあちゃんたちは、何事もなかったかのように毎朝日の出とともに道に座っているではないか。

「あんたまだ生きとるんかいね!」
「あんたこそやわいね!」

「あんたとこのとーちゃん元気かいね!」
「なにゆっとるげもう死んで十年は経つぞ!」

「あんたこれどにして食うとるが!」
「いっかい湯がいてから食うましま!」

そうか、地元のお客さんがまだいたんだ。

観光客の雑踏の中では到底聞こえなかった、地に根付く声が聞こえてきた。

これからのこの国の観光の在り方を考える前に、これまでの観光が土地にどんな影響を与えてきたのかを見つめ直そう。

目先の利益と土地の未来を天秤にかけていれば、いずれどちらも失うこととなる。

観光は何のために存在するのだろうか。

僕にとっての観光は暮らしの共有手段だ。

暮らしあっての観光だ。

そういう意味では、地元民と観光客の境界もあやふやになっていったらおもしろい。

まだまだ消滅させるわけにはいかないな、輪島朝市。

今朝はすももを買ってきた。




















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