見出し画像

ジュニア期の野球肘

■はじめに
noteをご覧いただきありがとうございます。

理学療法士の 吉田 昂平 です!

野球選手においても年齢によって投球障害のリスクが変化することについて理解を深めていきたいと思います。

そのため、今回第一弾はジュニア期の野球選手において

「大人と子どもの違い」 「多く見られる投球動作」 「リスク」

についてまとめてみました。


■大人と子どもの違い


大人にとっては普通の負荷 ≠ 子どもも大丈夫な負荷


ケガを予防するためにトレーニングを行うに囚われることで
子供にとっては負荷が高くケガをする可能性を高めます。

では、子ども(学童期)の成長過程を見ていきましょう。


スライド5


○成長曲線


小児期の特徴は5つの時期に分かれます。

学童期は、精神発達・知能・情緒など多面的な発達を認める時期です。

思春期は、2次性徴が進み身体発達のスピードが早まる時期です。

学童期は身長や筋肉量は未熟ですが、

脳や神経系の働きは10歳頃までには大人と同じです。


スライド8


○骨・軟骨


子どもは骨が柔らかく、骨端線(成長軟骨)が存在するので、

骨・軟骨(靭帯付着部)障害が多いと言われています。

大人は靭帯が損傷されやすいとされています。


スライド10


○筋力


思春期前児童における筋力トレーニングにおいて最大筋力向上及び筋横断面積の向上が認められます。

しかし、発育発達過程での骨格系器官への障害となる可能性が高いことも明らかにされています。


スライド11


○まとめ


右図;
第一期:思春期の身長成長促進現象の始まった年齢がTake off age (TOA)の以前
第二期:TOAから身長最大発育年齢(Peak height age:PHA)まで
第三期:TOAから身長増加が年間1cm未満となる時点(Final height age:FHA)まで
第四期:FHA以降

学童期は身長や筋肉量は未熟ですが、
脳や神経系の働きは10歳頃までには大人と同じ。

身長の成長速度がピークとなる年齢前後1年が、最大酸素摂取量の伸び率が高い時期に当たるため第二期は持久力トレーニングが効果的です。

そのため、ジュニア期は大人とは違い、筋力トレーニングよりも瞬発系・
バランス・持久的トレーニング等の総合的な体力作りを優先することが必要です。


スライド13


では、大人と子どもの違いを理解した上で投球動作について考えていきましょう。


■一般的な投球動作



スライド11


投球動作とは、全身を使って行う動作のため、肩・肘の機能だけでなく、身体の
土台となる体幹〜股関節の機能も重要です。

下肢・体幹との運動連鎖により効果的にボールに対しエネルギー伝達を行います。

投球障害を起こす原因として、投球フォームの関連もあります。


画像28


では、運動連鎖にはどのようなパターンが存在するのでしょうか?
まずは、正常と異常を把握していきましょう!


スライド28


今回は投球動作の運動連鎖を3つに分け説明していきます。

正常:下肢(股関節)から発生したエネルギーを体幹・肩関節とスムーズに伝達


スライド29


異常①:タイミングのミスマッチ


下肢(股関節)から発生したエネルギーを体幹・肩関節・肘関節へ伝達していく過程で、切り替わりの際に早期や遅延することでその後の伝達破綻を起こす


例)下肢の踏み込みが早期に起こることで、TOPポジションの準備が上手く
行えず、肘下がりが出現する


スライド30


上記の肘下りはジュニア期に多く起こり得ることで、選手も指導者の方も
悩まされていると思います。

では、肘下りとは何か?


スライド35


基準としては、ボールリリースにおける肩と肩のライン対して肘の位置が下にないかです。

投球時の動画を前後・左右、多方向から確認してみてください。
肘下りが起こることで、肘の外反と言って肘が外側(親指側)に反る動きが増える
とも言われています。


スライド33


肘の外反が増えることで、肘の内側部に引っ張られるストレスがかかり、
野球肘(内側型)のリスクが高まるとも言われています。


ジュニア期では、大人と比べトルク自体は少ないですが、体が出来ておらず、
靭帯の伸張による骨・軟骨が内側から外側へ引っ張られ骨・軟骨の障害である、
野球肘となるのです。

投球障害肘を起こしやすい投球時期は下記の通り
Late cocking phase~Ball releseに肘障害リスクが高まります。

この時期は肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節・脊柱の全身による外旋動作が
起こします。肘下りのように関節の動きが制限されることで肘の外反増え、
障害を起こしやすくなると言われています。


スライド17


肘下がりの原因としては、

①肩関節外旋不全:肩関節のラインより後ろ側へ動かすことができない
②胸椎後弯:背骨を伸ばすことできない(胸が張れない)
③骨盤後傾:骨盤を立てることができない(腰が曲がってしまう)


肘に過剰な外反ストレスがかかる=肘内側痛のリスクを高める(大人:靭帯、子ども:骨・軟骨)


スライド34

■肘下がり予防トレーニング

1.肩関節外旋トレーニング

肘下がりの原因となる肩関節外旋不全
肘下がりの選手は、僧帽筋上部線維・外旋筋群の筋収縮認知が乏しく、肘を引き上げることができません。

方法|
肘の高さは耳孔の隣に位置させます。
肘は地面についた状態で肩関節を中心に回旋させます。

ゴール|
外旋角度が左右差ない状態や手が頭の上に位置するように行っていきます。


2.胸椎伸展トレーニング(ブリッジ)

30度以上胸椎が後弯することで肩甲骨の可動性が低下し、肘下がりの原因となります。

方法|
足と手で体を支え胸を張るようにします。

ゴール|
弓を張った状態となるようにしましょう。


2.もも前ストレッチ(骨盤トレーニング)

骨盤の後傾が起こることで股関節伸展の制限に関わり、踏み込み時に脊柱の後弯を起こし、胸椎の後弯につながり肘下がりの原因ともなります。

方法|
まずは、大腿前面の筋の制限をストレッチをおこないます。肩膝立ちとなり後方の足首を手でつかみます。
その後、踏み込み姿勢となり骨盤を立てるように股関節伸展動作を行っていきましょう。

ゴール|
骨盤が立てられる。


■おわりに

最後までご購読いただきありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?

今回のnoteに書いた内容は一部ではありますが、選手はケガをした際に毎日悩み、落ち込んでいます。そのため、私達が理解を深めることで、選手の気持ちに立って向き合って行くことができ、正しい道を歩むサポートを広げていくことができるのではないでしょうか。

このnoteを購読頂いた方々が、子どもたちのリスクを最小限に抑え、野球選手として、今以上に素晴らしい選手となることの役に立つことの一助になれれば幸いです!

今後も投球動作や野球に関連する動作を紐解いて、情報発信していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します!!
第二弾は、野球選手の身体機能リスクです。


Twitterアカウント
https://twitter.com/kobaseball3

いいなと思ったら応援しよう!