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俺のジャージ

部活後のオレンジ色に染まった空の下で、俺は彼女の震える肩を見つめていた。


「ほら、寒いならこれ着ろよ」


俺は自分のジャージを脱ぎ、彼女の肩にそっとかける。


「え、でも悪いよ……」


「いいから、風邪引かれたらめんどくさいし」

「○○こそ…」


「大丈夫だから」


そう言いながらも、彼女は少し幸せそうにジャージに袖を通した。


「ありがと……。ちょっと大きいね」


彼女が余った袖をぶんぶん振りながら笑う。その姿が妙に可愛くて、俺はつい目を逸らしてしまった。


結局、そのままジャージは彼女の手に残った。



数日後


「おーい、ジャージそろそろ返してくれよ」


学校に着いて、俺は彼女に声をかけた。


「え?」


「え?、じゃないって前に貸したやつ」


「あれ……もう私のじゃないの?」


「はぁ?なに言ってんだ?」


彼女は澄ました顔で首を傾げる。まるで俺が
おかしなことを言っているみたいだ。

彼女は俺のジャージを大事そうに腕のなかで抱き締めていた。


「だって、すっごく着心地いいし、もうちょっと借りててもいいよね?」


「いや、ダメだろ。借りパクじゃん」


「えー…もう私の匂いがついちゃったかも」


「それは俺のセリフな?」


俺は思わずため息をつくが、彼女は全く気にする様子もなくにっこり微笑んでいた。


そして、そのまま数日が経過。


結局ジャージは返ってこないまま、彼女は当然のようにそれを着続けていた。


ある日、帰り道で偶然彼女を見かけた。俺のジャージを着て、コンビニで立ち読みしている。


「なんだよ、それ」


俺は思わず近づいて声をかけた。


「おい、俺のジャージで外出してんのかよ」


「え?だって、これあったかいんだもん」


「いや、もう完全にお前の服みたいになってるじゃん…」

「えへへ、そうかも」


彼女は悪びれもせず笑い、ジャージの袖をぎゅっと握った。


「……そんなに気に入ったんなら、あげてもいいけど」


「え?」


「いや、お前がそれ着てるの、なんか見慣れてきたし」


彼女は驚いたように目を見開いたあと、ふわっと頬を染めた。


「じゃあ……お返しに、私のマフラー貸してあげる」


「いらねぇよ」


「えー、冷たい!」


彼女はぷくっと頬を膨らませたが、嬉しそうにジャージの裾を引っ張っていた。


こうして、俺のジャージは彼女に奪われた。




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