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告白がナンパと勘違いされました
「なあなあ、田村先輩?」
昼休み、グラウンドの端っこで友達と談笑してる先輩を見つけた俺は、ポケットに手を突っ込みながら軽く顎を上げて呼びかけた。
余裕の笑み。落ち着いた声色。
自分で言うのもなんやけど、完璧な入りやと思う。
「お?」
長い髪をふわりとかき上げながら、先輩がこっちを向く。
やばい、近い…。
先輩めっちゃ可愛いわ。
あかんあかん…。見とれとったらあかんねん
よし、ここからが勝負や。
俺はさらっと言う。
「先輩、俺と二人でどっか行かん?」
――完璧やろ。
これで「え、どこ行く?」とか聞かれたら、「どこでもええけど、二人っきりがええな」とか言って、流れで告白するんや。
計画はバッチリ。あとは実行するだけ。
そう思った矢先――
「えっ、ナンパ?」
「ちゃうわ!!!!?」
一瞬で崩れ去る俺の完璧プラン。
いや、そうなるか!? 俺の言い方が悪かったんか!?
「いやいや、ちょ待ってくださいよ先輩。違うんですよ、これはですね――」
「え、でも『俺とどっか行かん?』って言ったよな?」
「……言いました」
「それ、ナンパじゃないん?」
「ちゃう! ちゃいます! 俺はですね!」
焦る俺を見て、先輩はクスクス笑い出す。
その笑顔がまた可愛いんだよなぁ……って、今はそんなこと言ってる場合じゃない!
「いやもう、ええから最後まで聞いてくださいよ!」
「ふふっ、わかったわかった。で?」
ちょっとおちょくるみたいにニコニコしてる先輩。
俺はグッと拳を握って、深呼吸した。
「……俺、先輩のことが好きです!!!」
空気がピタッと止まる。
先輩の笑顔も、一瞬だけフリーズした。
「……えっ?」
「だから、俺と付き合ってください!」
自分でもビックリするくらい、直球ストレート。
もうここまで来たら、勢いで行くしかない。
すると先輩は、何かを考えるように唇をキュッと結んだ後――
「……さっきの、ナンパみたいな流れじゃなく、最初からそう言ってたら100点やったのになぁ」
惜しいって顔しながら、ポツリと言った。
「ほな、90点じゃ……ダメですか?」
ちょっとだけ上目遣いで言うと、先輩は「ズルいなぁ」って笑う。
「……しゃあないなぁ。ほんなら、一回デート行こっか?」
「マジすか?」
「マジで」
その瞬間、俺の心臓はバクバク跳ね上がった。
ナンパみたいな告白になったけど、結果オーライ……やんな!?