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想い
「ねぇ?保乃、好きだよ」
付き合って5年の彼女がいる。会った時は、必ず「好き」と伝える。それが、ルーティーン。
「ありがとう!ずっと言ってくれとるけど、
保乃のどこが好きなん?」
「えっ……?」
何故だろう…。パッと出てこない。出会った頃は、いっぱい出てきたのに…。
そんなもんなのかな…?僕の保乃への想いは。
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保乃とのデートを終え、自分の家に帰ってきた。明るく、温かい、保乃とは対照的で冷たく、寂しいそんな家だ。
「ここに保乃が居てくれたらな…」
1人で住むには十分すぎる間取り。保乃に同棲しようと言おうと思うが、言えないのが現状だ。そんな哀れな僕をガランとした部屋が嘲笑う。
お風呂に入り、後は目を閉じて夢へと落ちる。
今日の作業はそれだけだ。ただ、1つやりたいことがあった。それは、保乃の好きなところを考える。なんでパッと出てこなかったのだろう。
君に何かを伝えたいのに……。自分の想いが言葉にならない…。1つだけ心に明確にあるのは、死ぬまで一緒に居たい。そんなことを想いながら僕は眠りに落ちた。
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一週間後。
「お待たせ!」
君とのデートのこの日まで、僕はずーっと考えていた。でも散々考えても結局君に会えばどうでもいい。そんな僕の思考だ。
「全然待ってないよ?」
と、実は寝不足で遅れそうになったことを隠しておく。そして、
「保乃好きだよ」
今日も君に伝える。
「ありがとう!前言って答えてくれへんかったけど、どこが好きなん?」
来た!この質問!
寝不足になって考えたかいがある。
「パッと一言では言い表せないぐらい、保乃が好き」
「どういうこと?」
だろうと思った…。だってね…保乃は…頭がね…
ちょっとあれだから…。
「なんか失礼なこと考えてへん?」
「い、いや~そ、そんなことないで~」
「なんか考えとったな」
「なぜバレた!」
「なんでもわかるから!保乃!」
「それがわかるまで、伝えるから覚悟しててよ?笑」
「私も負けへんから!」
君に伝わるその日まで、僕は君に「好き」と
伝えるだろう。そして、考えていてわかった。
保乃のことは「好き」ではないと…。
「愛している」のだと。
「保乃?愛してる。だから…その…えと…」
「なんやねん!シャキッとせんかい!」
「一緒に住みませんか?」
「???」
「だから!同棲しませんか?」
「……待ってたで!その言葉!」
「やった!」
作業だった時間が、少し人生に変わった音がした。