こんなの、要らなくないですか?
テレビの中でとぼけた顔で、
古市憲寿さんが言う。
取り上げられたニュースに対して、
本質的な部分を批判している。
古市憲寿さんは、
クリティカル・シンキングの名手だろう。
古市憲寿さんになろうと言うつもりではないが、
伊集院光さんの
深夜の馬鹿力というラジオ番組で、
お題にとられるほど、印象深い言い回しです。
別記事で、
クリティカル・リーディングについて書きました。
今回は
井上ひさしさんの
『握手』を使って、
もう少しクリティカルな展開を紹介します。
初発の感想を
A気に入ったところ
B気に入らないところ
C不思議なこと
D気づいたこと
の4つに分類しながら書いてもらった上で、
B気に入らないところ
を取り上げて話し合います。
意見が集中するのは、
ルロイ修道士が強制労働を強いられていたときの、
監督官が、
休日を申し出たルロイ修道士の指を潰してしまう
という場面。
「すごくまともな申し出なのに、
指を潰してしまうなんて、おかしい」
「監督官の言い方に腹が立ちました」
「ルロイ修道士たちがかわいそう」
子どもたちは気に入らないところとして、
この場面を挙げ、
気に入ったという生徒はほぼいません。
そこで、
「こんな場面、要らんのちゃう?」
と、問いかけてみます。
この場面が、
みんなに不快なら、
削除しても良いのでは無いか、
という提案です。
子どもたちは周りと相談します。
「確かに必要ない」
「無かったら、何か困る?」
改めて作品を読み直します。
初発の感想の時点では、
一読した時点での、
反射的な感想、
A気に入った
B気に入らない
が多くなりますが、
削除して良いのかとなると、
目的を持った読書になります。
すると、
ルロイ修道士の人差し指が潰された、
ということに気づく子どもが現れます。
人差し指を立てる、指言葉があるのです。
そこに気づくと、
それからの議論の展開は早いです。
「ルロイ先生の指に関するエピソードは消せない」
「この場面があるから、ルロイ先生の考えが響く」
といった、
エピソードの効果に気づく子どもが現れます。
その上で、
削除が無理なら、
書き換えられないのか、
書き換えるなら何をどうするか、
などと発展させていくのも面白いですし、
生徒が読みを深めることに役立ちます。
作者の手を離れた物語に対して、
改変をしよう、
というくらい批判的に読んだときに、
その作品により深く潜ることができるのが、
クリティカル・リーディングの醍醐味です。
どこを取り上げるかは、
子どもたちの感想が教えてくれます。
子どもたちにひっかかるところというのは、
作者が意図的に作っているからです。
クリティカル・リーディングの取り組みを重ねていくと、実感できます。
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