瞼を閉じる瞬間まで
ときどき、夜の始まりの長さに驚く。
日はすっかり山へと沈み、周りは静かに暗くなって行くけれど、その変化を静かに感じながら、私はぼーっと、1日が幕を閉じる瞬間を待っている。
温まったカップを両手で包んで、ゆっくり啜るコーンスープも、おもむろにバスタブへお湯を張って、湯気が立ち昇った浴室に肌をさすりながら入るのも、全部、その瞬間のためにある。
でも、いざ柔らかな毛布に身を包んでも、その瞬間はなかなかやって来ない。ただ瞳を閉じても、真っ暗なその先には鮮やかすぎる映像が流れる。1日が蘇る。明日に繋がる。
そのまま、遠くを求め続けると、ようやく光が細くなり、ようやく瞼が光を断ち切る。
そしてようやく、夜が来た。
時々、その夜がやって来るまで時間の尊さに驚かされる。