見知らぬ乳成分アレルギー仲間さんと、買いもので助け合う。
写真の缶は、すべて空き缶。1年前に息子が2ヶ月間で飲んだ、乳成分アレルギー用の粉ミルクの缶の山だ。
月に一度の資源ごみに出しそびれ、まだ外出もろくにできなかった私は、リサイクルステーションへこまめに運ぶことができず、溜め込んでいた。
消化管アレルギーの息子は、乳成分の代わりに大豆を使用した粉ミルクを、0歳のときから飲んでいる。一般的な粉ミルクよりも小ぶりな缶だが、1缶が1000円くらい。卒乳できていないこともあり、早いときは3日で終わった。食事がアレルギー用粉ミルクだけの頃は、1週間に3缶が必要だった。
下の写真は、向かって左側が大豆の粉ミルク缶、右側が一般的なサイズの普通の粉ミルク(フォローアップ)。どちらも3000円ぶん。同じ金額で、この分量の違い……!
息子の乳成分・消化管アレルギーが判明してから、医師の指示のもと、摂取量と反応により段階を踏んで、いくつかの非常に高価なアレルギー用粉ミルクを試していった。
不思議と皮膚には反応が出ない子で、吐き戻し、嘔吐、げりが激しいタイプ。負荷試験を経て安全性を確認し、現在の大豆の粉ミルクに落ち着いた。1歳のとき、どれくらいの量の乳成分を摂取しても安全か、また入院して負荷試験。
ずっと成長曲線に追いつかず必死に飲ませていたが、粉ミルクをアレルギー用に切り替えてからは、ガリガリだった太ももがやっと肉づき、体重もゆっくりゆっくり、増えている。
最近では2歳が近づくにつれ、消化管が以前より丈夫になってきただろうと、少しずつ普通の粉ミルクを加えて反応を見ている。
一般的な大きい缶の粉ミルクを飲めるようになっていくのが嬉しかったし、経済的負担も大きく変わるのを感じた。
普段から、不必要な買い溜めを、控えるように。
本当に必要としているひとが、困らないように。
お店にたどり着いたところで目的のものが買えないのはつらいし、品物によっては代替できないから困り果てる。
ネットで注文して後日届くまで待つか、急ぎなら他のお店をはしごして探すしかない。
私たち家族は、アレルギー用粉ミルクを置いている周辺の店舗を、一通り把握している。多く売れる商品ではないから、商品棚のスペースを割き、2缶でも置いてくれているとありがたい。
まとめて買うときは在庫の補充をお願いしたり、更に取り寄せてもらう個別注文を頼んだりしていた。
どの店頭も私たち以外に買っている形跡がないまま、半年後くらいか、いちばん安いある店舗に行ったとき、商品棚も在庫も先日全て売り切れてしまったという、初めての経験をした。
他の店舗でも売れてしまったと聞くことがあり、私は、乳成分アレルギーの子どもを育てる見知らぬ仲間(たち?)が現れたのだろうと感じた。
今までは、置いてくれている数少ない店舗が、更に更にと減らないよう(実際に減っている)、「前回はあちらで買ったから、今回はこちら」と、いろいろな店舗で買いまわっていたが、さて、少し悩んだ。
思ったのは、置いてあるはずのお店の在庫が売り切れていたときのガックリ感と、怪獣を連れてもう一件行かなければというストレス、手間。たぶん、私だけが感じることではない。
それからは、いつどの店舗で買うときも、棚に1缶か2缶は残して買うようにしてみた。せめて1缶買えれば、3日までならいける。売り切れのダメージよりは、ずっといい。
2缶の店舗は1缶、4缶の店舗は2缶、最大の6缶の店舗では3缶を買う。そして次に来れそうな店舗では、個別の取り寄せ注文のお願いもしておく。
しばらくそんな買い方を続けてみたら、あるときから、変化があった。見知らぬアレルギー仲間さんが、私たちと同じように、敢えていくつか在庫を残す買い方をし始めてくれたのだ。
棚に残された粉ミルクに、あたたかな気配りを感じて、ほっこり。まだ見ぬご家族たちに、こっそり感謝した。お互い、がんばろうね、なんて思いながら。
もっと1ヶ月ぶん単位とか、注文して買えばいいのだろうけれど、いつどれくらい普通の粉ミルクに切り替えられるかわからないし、何より乳成分アレルギーが良くなってほしいから、過剰な取り寄せは抵抗がある。
コロナの影響で、いろいろなお店で、空っぽの棚を目にすることが増えた。
でも、他の誰かへ「つなぐ」、助け合う買い物。小さな気配りで、誰にでもできると思う。
しんどい情勢が続く世の中だけれど、日常生活に流れる心が、少しでも、優しいものになりますように。