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日本とアメリカで違う不動産「価値」の違い

こんばんは!

今日はリフォーム業界シリーズを書いていきます!
ここ数年、リフォームの需要が高まってきており、大手ハウスメーカーもリフォーム業界に参入してきております。その背景の一つとして、日本の不動産の「価値観」が変わってきているからです。そして変わるということは、新しいビジネスが生まれるということで、
今日はそのあたりを書いていきます!

日本は土地の価値が中心

  • 土地神話
    戦後からバブル期に至るまでの高度経済成長期において、土地の価格が右肩上がりに上昇していった歴史的背景があります。

  • 建物の評価が低くなる仕組み
    日本では新築住宅に対する嗜好が強く、中古住宅(既存住宅)に対して負のイメージが根強かったこと、また建物の法定耐用年数の短さ(減価償却期間など)によって、「建物は築年数が経つと価値がゼロに近くなる」という考え方が定着してきました。

  • スクラップ・アンド・ビルドの文化
    「古い建物は取り壊して新しく建てる」という発想が一般的であり、建物の再利用・リノベーションが欧米と比較して進んでこなかった背景があります。

アメリカは建物の価値が重視される

  • 築年数が経っても価値が下がりにくい
    アメリカでは中古住宅市場が非常に活発であり、建物そのものに対する評価やメンテナンス履歴(リフォーム・リノベーションの記録)が取引の際にも重視されます。

  • リフォーム、リノベーション文化の浸透
    新築に拘らず、住まいを適切に維持管理しながら長年住み続ける考え方が一般的です。

  • 住宅ローン制度や中古物件の担保評価
    中古住宅であっても金融機関が担保評価を行いやすい仕組みが整っていることから、建物の資産価値が保たれやすい状況があります。

つまり日本とアメリカでは考え方がほぼ真逆なのです。

1. 日本の法改正や政策による変化

日本においても近年、「住宅ストック型社会」への転換が政策上の大きなテーマになっています。人口減少や空き家問題の深刻化、環境・サステナビリティへの意識の高まりなどから、従来の“スクラップ・アンド・ビルド”を見直す動きが進みつつあります。

A 中古住宅流通の活性化政策

  • インスペクション(建物調査)の推進
    2018年の宅地建物取引業法改正では、既存住宅の売買時に「建物状況調査(インスペクション)の有無を確認・説明すること」が義務づけられました。これにより、建物の品質を見極めやすくなり、リフォーム前提で中古住宅を購入する動きが広がってきました。

  • リフォーム減税や補助金制度
    省エネ改修やバリアフリー改修、長期優良住宅化リフォームなど、一定の基準を満たすリフォームに対して税制優遇や補助金が用意されています。これにより、古い建物でも適切なリノベーションをすることで資産価値を高めやすくなりました。

B  長期優良住宅制度

  • 長寿命化を前提とした設計・建築
    2009年に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」により、建物の耐久性や省エネ性、可変性などを高める住宅設計が推奨されています。これに認定されると、税制面での優遇や融資上の優遇などメリットがあり、建物価値の長期的な維持につながりやすくなります。

C  空き家対策特別措置法

  • 空き家問題の深刻化への対応
    全国的に増え続ける空き家の流通を促進したり、適切な管理がなされていない空き家を行政が是正したりするための法律です。

  • 中古住宅市場の活性化
    老朽化した空き家でも、リフォーム・リノベーションを行うことで流通に乗せられるよう、自治体と連携した補助金・支援制度が用意されているケースもあります。結果的に建物価値の再評価が進む要因にもなっています。

2. 住宅・不動産業界、建築業界の今後の展開

こうした法整備や社会背景の変化を受けて、日本国内でも“土地だけでなく建物を含めた不動産価値を総合的に評価する”方向へシフトしつつあります。特に以下のような動向が顕著です。

A リフォーム・リノベーション市場の拡大

  • 新築需要の頭打ちとリノベ需要の高まり
    人口減少で新築住宅の需要が今後減少する見込みがあり、建築業界・不動産業界は既存ストック(中古住宅)の改修・再販ビジネスへ注力する必要が高まっています。

  • ブランド化したリノベーションの台頭
    インテリアデザインや建築デザイナーがプロデュースする「リノベーション住宅」へのニーズが増加。差別化を図ったリノベーション・ブランドが登場し、不動産仲介や工務店と協業するケースが増えています。

B  中古住宅の証券化・担保評価の拡充

  • 米国型の住宅証券化モデルへのシフト
    過去に比べると、リノベーション済中古住宅を担保として金融機関が評価しやすくなるような仕組みが整備されつつあります。

  • 適正なインスペクションと保証制度
    第三者機関による住宅診断(インスペクション)の結果や、瑕疵(かし)保険加入の有無が流通段階で可視化されることで、担保評価の根拠が明確になり、建物の価値がきちんと価格に反映されやすくなると期待されています。

C スマートホーム・省エネ住宅への投資

  • ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)や省エネ住宅
    エネルギー効率の高い建物は電気代などのランニングコストを低減できるうえ、環境意識の高まりから今後資産価値が下がりにくいと予想されます。

  • IoT・スマートホーム化
    既存住宅でもIoT機器やスマート家電を導入することで快適性・安全性・省エネ性能を向上させ、建物価値を高める動きが広がりつつあります。

D  建物の長寿命化とアフターサービスの重要性

  • 長期保証やメンテナンスプログラム
    大手ハウスメーカーを中心に、30年・50年といった長期保証や定期点検サービスを提供する動きが増えています。建物の長寿命化を前提とし、価値を維持するためのアフターサービスが重視される流れです。

  • ストック活用ビジネスの発展
    既存住宅の定期的なリフォーム・メンテナンスを請け負うビジネスモデルや、DIY支援事業など、建物を長期間使い続けるサポートをする企業が増えています。

3. 今後の日本のトレンドと業界展望

A 中古住宅市場の拡大・流通の透明化
アメリカのように、個人の資産として「建物の価値」が認知されやすい市場が整備されることで、今後は中古住宅がより流動的に売買されるようになると考えられます。

B リノベーションから長寿命住宅へのシフト
単に古くなった建物を美装するだけでなく、耐震補強や省エネ改修、バリアフリー化など、長期にわたる快適性と価値維持を見越した改修が増えてきます。実際、ここ2年はこういう工事依頼が急増したと体感してます。

C 不動産テック(PropTech)の活用
インスペクションのオンライン管理やVR内覧、リノベーション提案の3Dシミュレーションなど、テクノロジー活用が進んでいきます。アメリカの不動産プラットフォームのようなデータ解析による価格査定サービスもより高度になり、建物の評価が定量的に把握される環境が整う可能性があります。

D 建設業界のビジネスモデル変化
新築重視からリフォーム・リノベ重視への移行に伴い、大手ゼネコンやハウスメーカーはもちろん、中小の工務店も改修・メンテナンス分野に注力する動きが加速します。また、サブスク型メンテナンスやリフォームローンの拡充など、新たなサービス形態が登場することも予想されます。

E サステナブル住宅・環境対応への高まり
省エネ性能、自然災害へのレジリエンス(強靭性)など、環境負荷と安全性能の高い住宅が高く評価されるトレンドは今後さらに顕著になると思われます。


日本とアメリカの不動産市場には、土地と建物の価値に関する考え方や評価方法に大きな違いがあります。日本では、土地の価値が高く、建物の価値が時間とともに減少する傾向があります。一方、アメリカでは、建物の価値が高く評価され、適切なメンテナンスやリフォームによって資産価値が維持・向上する文化が根付いています。日本独自の人口減少や空き家増加といった課題はありますが、欧米型のストック活用社会へ近づいていくのは不可避とみられます。
さらにこの動きに連動して、新しいサービス、ビジネスが生まれてきます。

建物の資産価値をどう維持・向上させるか、そのための制度・技術・サービスが今後ますます注目を集めると思います。

すごく長くなってしまいました。。
最後まで読んでくださり有り難うございます!

また明日🙋

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