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この社説が気になる(2024.12.28)
今日の気になる社説
久しぶりに5紙すべてが一斉に言及する話題があった。
閣議決定された来年度の政府予算案である。
歳出額が過去最大になったことへの批判が各紙で並ぶ。
歳出額で大きいのは、社会保障関係費、国債費、地方交付税交付金の順。この3費目で8割になることが、財務省が公表した政府予算案の内容から読み取れる。
地方交付税交付金の伸び率(7.3%)が、歳出全体の伸び率(2.6%)に対して大きい。石破総理肝入りの地方創生のためだろうか。支出に対する効果について、最も精査が必要な部分だろう。
これを背景に、所得税にかかる年収の壁の引き上げなど、税収減につながる提言を批判する記述もある。
税収が増えているから話題に上ることがないが、企業の方は法人税の実効税率は1987年以降下がる傾向が続いている。広く負担を分かち合う考えからと財務省の資料には記載されている。
一方で、厚生労働省の公表したデータ(2021年と古い情報である点はご容赦いただきたい)によると、世帯の所得は、平均値がここ10年ほぼ横ばいとされているが、その平均値に満たない所得の世帯が6割を上回る。負担を課されると生活が圧迫される世帯が多いのが現状である。
新聞社においては、実効税率引き下げによる法人税負担の軽減に加えて、消費税率10%への引き上げの際に生活必需品同様8%の軽減税率の適用を受けている。中には、経営状況を勘案してだろうが、資本金を下げて適用される法人税率を下げている新聞社もある。
新聞各社の予算額拡大に対する言及は、自分たちが受けている恩恵を棚に上げている、という印象が強い。いや、恩恵を受けているから、財務省の立場に配慮した記載となるのだろうか。
[抜粋]国民の目にもさらされる国会審議を通じ、政府の予算案に修正が入るのは決して悪いことではない。しかし、25年夏の参院選などをにらんで与野党がバラマキ的な政策を競うようでは困る。↓
[抜粋]日本が賃金も投資も増える「成長型経済」へと移行する場合、物価と金利も上昇することになる。このため、利払い費がかさむことが避けられない。無駄な歳出は不断に減らしていく必要がある。↓
[抜粋]歳出面では薬価改定で650億円近くの国費を削減する取り組みなどもあった。予備費の削減も妥当である。一方で石破茂首相が重視して倍増した地方創生の交付金や人工知能(AI)・半導体産業の基盤強化などの予算は効果を検証しつつ適切に執行することが問われよう。↓
[抜粋]好調な企業業績などを背景に、税収は最高の78兆円となる見通しだが、歳出を賄うには程遠い。28兆円超の国債を新たに発行し、借金に頼る構造は変わらない。↓
[抜粋]財政悪化への対処を先送りすれば、ツケはいずれ国民に跳ね返る。少数与党国会で予算を成立させるには、野党も含めた合意が必要だ。どの党の議員も、安定した国の土台を将来に引き継ぐ責任を肝に銘じなければならない。↓
その他の各紙の社説
[抜粋]政府は、通信を監視し、重大な攻撃の予兆があった場合は、発信元のサーバーに侵入して無害化する「能動的サイバー防御」の導入を検討している。今回標的となった日航と三菱UFJ銀行は、この対象事業者となる方向だ。↓
[抜粋]急ぐべきは、証拠開示のルールを明文化し、再審開始の適否を決める請求審と再審公判を統合するなど、再審への門扉を広げる法整備である。↓
[抜粋]反省する姿勢はうかがえない。責任の所在を明確にしておらず、極めて不十分な内容と言わざるを得ない。組織内部での検証には限界があり、第三者の目を入れることが必要だ。↓
[抜粋]代執行は地方の自己決定権の剥奪(はくだつ)で、地方自治の破壊につながる。法的な対抗手段を失った県の意向を振り切るかたちで、一方的に工事が進むのは異常だ。対話により合意形成を図る民主主義の基本を取り戻さねばならない。↓