「ラ・マンチャの男」舞台で観ることかなわず

様々なメディアで、松本白鴎さんが演じ続けてきたミュージカル「ラ・マンチャの男」が幕を閉じたことを報じていた。演じ続けて54年。「すごい」の一言でしかこの事実を表現できない自分の語彙の乏しさを恥じるばかりである。

小学生の頃、「スウィーニー・トッド」を、何かの抽選で当てたと母が観に出かけ、お土産にと見せてくれたパンフレットが、その作品で主演した、当時は市川染五郎を襲名していた白鴎さんの存在を知ったきっかけとなった。

そして、ミュージカルに興味を持つようになったのもこの時からだった。実際に劇場に足を運ぶ機会は、高校生になった1987年、「レ・ミゼラブル」の東京での最初の公演まで時間を空けることになるが。

「ラ・マンチャの男」は、舞台こそ観る機会を作れなかったが、大学生時代に所属していた合唱団で取り組むことになり(もちろん演技はなく歌うだけだが)、そのイメージをつかむためにと映画化されたものをビデオで観た。
そして、その中で、ドン・キホーテが歌う「The impossible dream (見果てぬ夢)」は、今でも無意識のうちに口ずさむ曲となった。

洗面器を黄金のヘルメットとして崇めたり、風車に戦いを挑んだり・・・、冷静に観たら妄想の中で生きているとしか思えない存在。でも、その中を真剣に生きている彼にとっては決して「嘘」ではない。

仕事をするようになって、30年近い月日が経った。気が付けば、ドン・キホーテにとっての風車のような、大きな目標や壁に向かって突き進む姿勢がわが身から消え去っていった感が否めない。いま、できることを淡々とこなしていく傍らで、これから残りの人生でなりたい姿を模索することも忘れてはならない。

心の中で「見果てぬ夢」を歌いながら書き留めた。

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