いつかの空へ 〜never ending love〜
1章 戦いは日常のなかに
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放課後、酉嶋は学院内の喫茶店に居た。
ぼーっと、窓の向こうを見上げても、見えるのは、偵察機と、前衛、それから後衛の出動部隊。
酉嶋にとっては先輩にあたる彼らは、今日も自国の空を、命を賭して守っている。
「おーい、有能パイロット!」
背後から声をかけられた。
「やめてくれないか、晴人(はると)。せめて学院の外ではその呼び方は……」
振り返った酉嶋の視線の先には、淡いキャラメル色の髪にダークブラウンのブレザー姿の少年。
丸いフレームのメガネとキャラメル色の七三分けがトレードマークの彼――蒼風 晴人(あおかぜ・はると)は、軽やかにスキップしながらこちらへやってきた。
座席に着くなり晴人はスクールバックから小型の携帯端末を取り出し、とある画像を見せ付ける。
「盗撮か?」
端末の液晶には、午前中に知り合った女子の姿。
酉嶋はチラとは見たものの、すぐに視線をそらす。
「ついさっき、許可はもらったよ!そんなことより、酉嶋……」
晴人のニヤけた顔が近づいてくる。
「お前、彼女でも出来たのかァ!?」
酉嶋は持っていたタッチペンを落としそうになった。自分の夏から乗る機体の希望デザインを、喫茶店に着いてからずっと考えては学院生専用のノート《中型端末》に描いていたのだ。
「違うって。千鶴は僕の弟子だ」
「弟子? って、どういうこと?」
酉嶋は午前中の千鶴の話をそのまま晴人に伝えた。
「なるほどねぇ。やっぱ、俺みたいな落ちこぼれより、酉嶋みたいな首席第1候補に教えてもらいてぇよなぁ。俺も、酉嶋塾の門下生になりてぇもんだ」
「晴人は、今のままだと僕の手にはおえないな。悪いが他をあたってくれ」
しかめ面をする晴人。
「面と向かってそこまではっきりと言われると、何だ、ある種、すがすがしくもあるな。……悔しいけど」
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