日常の中の恐怖。
私は幼少期に受けた虐待と学校でのいじめによる愛着障害と不安障害と診断されている。
でも、本人の感覚としては「不安」というより「恐怖」という言葉の方がしっくりくる。
この世の全てが恐怖の向こうにある。
たくさん本を読み、通院もずいぶんしたけれど、根本にある恐怖心は変わっていない。
例えば、今の職場も一見人間関係も良くこれといったトラブルもなく、比較的安定した精神状態で勤務できている。
のに。
のに!
それでも突然「恐怖」という名の鬼に足首をガシッとつかまれたように身動きできなくなる時がある。
きっかけは様々だが、おおまかには目の前の人のイライラや怒りを感じた時だ。
原因が自分かどうかは関係ない。
誰かの「不機嫌」が私の身体を凍りつかせる。
人のため息でビクッと心臓が飛び跳ねるような感覚。
誰かの無言の視線に視界がぐらりと歪むような感覚。
舌打ちや当てつけのような大きな物音に身がすくみ、名前を呼ばれたらそれだけで頭が真っ白になって思考が停止してしまう。
こんな年齢になっても消えない恐怖。
それってなんなん???と我ながら思う。
もはや私を傷つける人もいないし、好きに生きていける。
というか、もう充分ひとりで好きに生きてきたはず、なのに。
人が怖い。
大きな声が怖い。
大きな音が怖い。
ため息も舌打ちも無言も目配せも何もかも怖い。
嫌われるのも怖いけれど、それよりも人の感情が自分に向く事が怖い。
何があっても抵抗できない自分が怖い。
捕まってしまえば相手の気がすむまで逃げられない気がして絶望感でいっぱいになってしまう。
そしてこんな歳になってもこの恐怖心に勝てない自分に絶望している。
こんな風に特に何か大きなトラブルがあったわけでなくとも恐怖に囚われてどうにもならなくなる時がある。
家に帰って猫を抱いてテレビを見て夫と話す。
それでも恐怖はなかなか消えない。
薬を飲んでも夜眠れずに家をうろうろする。
そうすると子どもの頃眠れずに過ごした夜のことを思い出して、なおさらたまらなくなる。
何十年経っても、本も精神科医もカウンセラーも癒せない傷がある。
若い頃は傷は治るものだ、と信じていた。
でも今では治らないのだ、と分かる。
治すのではなく、付き合い方を覚えていくしかないのかなぁと思う。
でもさ、
付き合いたくないんだよ〜。
もう半世紀もつきあってるけど。
だからこそ、もうどっかへ行って欲しいのに。
もうどっか行ってくれたらいいのに。
もう少し毎日が安心できる日であったらいいのにーー。