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ヒトリゴト:展覧会「ルイーズ・ブルジョワ展」

なぜこの蜘蛛に”Maman(母)”と名付けたのか
そもそも、なぜ蜘蛛なのか……

この疑問の解を求めて訪れました。

彼女にとって蜘蛛は、家業のタペストリー工房を営み、ブルジョワが「親友」とみなしていた温和で勤勉な実母を象徴しています。また、糸で傷を繕い、癒す修復家である一方、周りを威嚇する捕食者でもあると説明しており、母性の複雑さを表現するものでもあります。
さらに、蜘蛛が巣作りのために体内から糸を出すように、自身の体から負の感情を解放するために作品を作っているとも語っています。蜘蛛は彼女の自画像でもあるのです。

ルイーズ・ブルジョワ展「見どころ」より

彼女の両親はタペストリーの修理工房を営んでいたそうで
「糸」はここからもきているよう。

母親をテーマにした作品もいくつかあったが
いずれも「腕」がない。

《良い母》

ブルジョワの母親は病を患い、本来であれば母親に
お世話をされる幼少期に、彼女は母親のお世話をする必要があった。

母親像に腕がないのは、
母親から手を差し伸べてほしかった時に
叶わなかったからなのだろうと思う。

複数の「腕のない母親像」をみていると、
どれだけそれを切望していたのかが伝わってきた。

それがゆえに、腕(脚?)をたくさん持つ「蜘蛛」に
理想の母親像を重ねたのかもしれない。

なるほど、
だから「蜘蛛」で
だから「Maman」なんだ。

《かまえる蜘蛛》

今回は2つの蜘蛛が展示されていました。
個人的には、こちらの蜘蛛が好き。
緊張感のある脚がたまらなくセクシー。

《罪人2番》

作品の中心に置かれた小さな椅子と防火扉に設置された鏡は、子供の罪の意識や罰の恐怖を象徴しており、上部に刺さった矢は、親からの叱責や、他者の目線、逃げ場のなさなどをを象徴している。

美術手帖

精神的なHPを削られる作品が多い中
一番キツかったのがこの作品。
なんかもう、本当にいたたまれない気持ちになりました。

ブルジョワは「怒りや苛立ちを作品で表現できなけれ ば、その矛先を家族に向けてしまう」と述べ、作品を 作り続けて 衝動的に湧き上がる敵対心 嫉妬 殺意を浄化。

作品キャプション

こう本人が述べている通り、
ネガティブなパワーが強い作品が多いので
気持ちが沈んでいるときの鑑賞は、あまりお勧めしません……

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