雀色の永訣を観て
この映画は宗像に住む友人たちが制作したものだ。YouTubeで無料公開している約1時間ほどの作品なのだが、私は「これは今まで見てきた映画とは全くの別物だ」と感じたので少し書こうと思う。
映画のあらすじとしては、拉致問題をテーマに愛する家族を失った2人の若者を1つの場所と5つの時代で描く、というものだ。
舞台は宗像で、話の中での役者の関係性自体もリアルな部分がある。主演の東吾優希さんの妹役であるちゃーこちゃんは、東吾さんの実の妹だ。東吾さんも彼氏役であるSeiya Asanoさんも出会ったのは約1年前なのだが、この映画を見終わった時、本当にこの拉致問題は起きてしまったのではないか?と思わせられるほどにはリアルな人間性で溢れていた。
映画の冒頭は無言のシーンから始まる。
そりゃぁもうむちゃくちゃ長い。かれこれ5分以上は終始無言で白黒の画面で進んでいく。最初にこのシーンを観た時は頭の中が「???????????」という状態になるほど無言が続く。だがこの無言のシーンが後々大切になってくる。
構成としてはchapter5からchapter4、3、2、1·····と時代の流れを逆流して観ていくことになる。この恋人たちに何が起きたかを遡って観ていくのだ。
私がこの映画が凄いと思ったのは、人の感情に寄り添ってくるからだ。拉致問題ということと、冒頭の2人を観て″悲しい″という大まかな感情を最初に植え付けられる。その地点ではあ、悲しそうだな。くらいの感覚なのだ。
だがしかし、chapterが進んでいくに連れて観る側に最初に植え付けられた悲しみが肉付けされていく。もう本当にこの感覚は観た人にしか分からないと思われる。
私もこんな感覚は初めてで、最初は戸惑った。最後のシーンには少し明るい楽しそうな描写がされているのだが、それでさえ悲しみを深堀させる原因にしかならず私は涙も出てこなかった。人は急に極度な悲しみを受けたら泣けないものだ。
さらに1つ驚いたことがある。私が最近落ち込むことが多かったのだが、その悲しい寂しいといった感情の中であの映画がふと頭をよぎったのだ。まるで自分の記憶かのように。
それぐらい、あの映画はひしひしと語りかけてくる。
一言で表すとしたら、感情がリアルすぎるのだ。
この手の映画は今までにも沢山あったと思う。最後の数分間で登場人物に過去何があったのかを見せて悲しみを煽るやり方だ。
そんなものとは比べ物にならない。
スっと心に入り込んで、確実に観た側の心を気付かぬ間に包んでしまう。たとえもしもの想定だとしても拉致問題が起きたその後の遺族の人達だったり後悔だったり、まるで観た人がその状態に置かれたかのような気持ちになる。この『雀色の永訣』は映画を通して全てを訴えかけてくる。
もっとこの映画を私は色んな人に観て欲しい。そして色んな人に考えて欲しい。映画はこの記事の1番上から見れるから、少しだけ貴方の1時間を費やして欲しい。後悔はしないはずだ。
『雀色の永訣』
主演·····東吾優希/永田はるか
監督/脚本·····Seiya Asano
制作·····Band a Nerd
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