アラサー婚活記(マジシャン編)
27歳くらいの頃、『30歳までに結婚するんだ!』と夢見て婚活に励んでいた時期がある。
当時の職場の同僚たちが アラサー女子で溢れていたこともあり、『行こうよ!』と誘ってもらえる機会も多かった。
人見知りでも、初対面での会話は割と平気なので、誘われるままに婚活会場へと足を向けた。
そんな中、出会った男性のひとりが 会話の中で『マジックが得意です』と言っていた。
面白いことが大好きな私は、『何それ!』と はしゃいでその場で簡単なものを見せてもらった。
マジックを披露してくれた彼は、『こんなに良い反応をもらえたのは初めてだわ』とかで、『今度ご飯に行こうよ』という流れになり、連絡先を交換した。
・・・と、この流れを職場の同僚に話したところで、女子間での彼のあだ名は『マジシャン』となった。完全に私の責任である。
念の為に言っておくと、当然ながら彼の職はマジシャンではない。たしか普通の会社員だった。
とまぁ、そんな彼とは ご飯の約束の日までの間、LINEでやり取りをしていた。
ところが、そんな相手を知るためのLINEの中で、どうも価値観?が合わない。
『次に会う時用に服を見にきました! どんな服が好きとかってありますか?こはくさんが好きなの買います!』
私の好みに合わせようとしてくれる姿勢は純粋にうれしかった。だがどこか主体性がないように感じてしまった。
そして何より、まだ出会ったばかりの人の服装なんて少しも興味がなかった。あなたが好きな服着たらよろしいがな。
結局『好きな服で来てくれたら嬉しいです』的な、当たり障りない返事で回避したと思う。
その後もなんとなくの違和感を抱きながら迎えた当日。天気は荒れに荒れていた。
台風に加えて雨も凄まじく、電車もちらほら停まっていた。
仕事終わりに会う約束をしていたが、これは行けても帰ってこられる保証はないな、という天候。
なので日取りの変更を提案しようとLINEを開いた矢先、
『仕事終わりました! ◯時に◯◯でいいですか?』
という彼からのLINE。嵐の中でも会う気満々だった。
私はそこで完全に冷めてしまい『天気荒れてるし、また別の日にしましょう?』と断りを入れたのち、そっとフェードアウトした。
結局、マジシャンな彼とは一度も出かけずに終わった。
でも、毎年台風がやってくるこの時期は なんとなくこの一連の出来事が頭をよぎる。
あの時、もし天候がよければ 何か変わっていただろうか。
いや、LINEで違和感抱いてた時点で 何も変わってなかっただろうな。
と、結論付けて。またそっと、婚活時代の思い出に蓋をするのである。