経皮吸収型製剤/切って使っても良い?
経皮吸収型製剤
皮膚に貼って使用する製剤のうち、全身作用を期待して使用するものに、「経皮吸収型製剤」があります。
これは、製剤から放出された薬効成分が、皮膚から吸収されて全身を循環するため、薬の効果が長時間継続する(製剤から24時間以上、薬が放出されている)ことが特徴的です。
①肝臓での初回通過効果を受けない
②薬物血中濃度を長時間にわたって一定にすることが可能(効果が持続する)
③経口投与が困難な患者でも投与可能であり、薬物の管理がしやすい
④使用法が簡便でありというメリットがあります。
一方で、皮膚の刺激(かぶれ)や、細かい用量調節が困難だという欠点があります。
そのため、臨床では、「用量調節のため、テープ剤を切って使いたい」という場面があります。
経皮吸収型製剤の特徴
経皮吸収型製剤には、「マトリックス型」と「リザーバー型」があります。
「マトリックス型」は、半固形または固形の薬物含有層(マトリックス)が薬物の拡散性を調整することで、薬物の放出を制御しています。
「リザーバー型」は、液状またはゲル状の薬物含有層が、支持体と放出制御膜で覆われた貯留層(リザーバー)となっており、リザーバーからの薬物の放出は、放出制御膜により制御されます。
「リザーバー型」は、製剤を切断すると、切断面から薬剤が漏出するため切断不可とされています。
「マトリックス型」は、製剤特性的に理論上は、切断可能ですが、切断すると、剥がれやすくなるため、基本的に、切断は推奨されていません。また、薬剤によっては、マトリックス型であっても、切断してはいけないものがあります。
切断不可の製剤
(カッコ内には、先発医薬品を記載しています)
○切断不可であることが添付文書に記載されている製剤
ブプレノルフィン
(ノルスパンテープ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1149704
ロチゴチン
(ニュープロパッチ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1169700
旧製品は、有効成分が析出しないように製剤工夫がほどこされているため、切断禁止と記載されていました。また、旧製品は支持体にアルミが含まれているため、AED や MRI 使用時に除去が必要でしたが、アルミフリー製剤が開発されました(新製剤は、金属を含まないため、AED や MRI 使用時にも除去する必要はありません)。新製剤には、切断不可であることのみが記載されています。
また、本剤の投与を中止する場合には、突然休薬するのではなく、徐々に減量することが必要です(悪性症候群を誘発させないため)。その場合、本剤には、2.25mg, 4.5mg, 9mg, 13.5mg, 18mg と複数の規格があるので、切断するのではなく、規格の異なるものに変更する必要があります。
ブロナンセリン
(ロナセンテープ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1179700
ドネペジル
(アリドネパッチ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1190701
エストラジオール
(エストラーナテープ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/2473700
エストラジオール・酢酸ノルエチステロン
(メノエイドコンビパッチ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/2482800
フェンタニル
(デュロテップMTパッチ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/8219700
(ラフェンタテープ)https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/8219700
(ワンデュロパッチ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/8219700
フェンタニルクエン酸塩
(フェントステープ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/8219701
○ 切断しないことが推奨されている製剤
リバスチグミン
(リバスタッチ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1190700
(イクセロンパッチ) https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/1190700
添付文書には記載はなく、切断した場合のデメリットが明記されている訳ではないが、リバスタッチと同様の対応が必要だと考えられるため。
○ 製剤特性から、切断すべきではない製剤
ニトログリセリン
(ニトロダーム TTS)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/GeneralList/2171701
リザーバー型製剤であるため、切断不可。
ニコチン
ニコチネルパッチ [OTC]
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/otcDetail/GeneralList/252127_K0805000008_09_01
添付文書内には、切断に関する直接の記載はないが、リザーバー型であるため、切断しない。過剰な場合はテープを貼って、接触面積を減らす等の対応が行われていることもある。
切断しないほうが良い製剤
ホクナリンテープ
製剤の特徴を鑑みて、薬の効果や安全性の点からは切ることには問題はないが、剥がれやすくなる可能性があるため、製薬企業としては、切ることを勧めていません。
一例としてホクナリンテープをあげています。
「切断不可」の貼付剤を減量したい場合は、規格を変更する(半分の含量のものに変更する等)他、医師の指示によっては、粘着面の半分にセロハンテープをつけて、皮膚に密着しないようにする使用方法が説明される場合もあります。
ただし、後者は本来の適応のある使用方法ではないため、あらかじめ確認が必要です。
おわりに
医薬品の効果が正しく発揮され、副作用を軽減させるためにも、製剤の特性を理解して、正しく対応しましょう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
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