相互作用を定量的に見る/オレキシン受容体拮抗薬
薬剤師の目で、薬物相互作用を定量的に見てみましょう。
オレキシン受容体拮抗薬のスボレキサント(ベルソムラ (R))、レンボレキサント(デエビゴ (R))、ダリドレキサント(クービビック (R))は、いずれも、主にCYP3A4で代謝されます。そのため、CYP3A4 阻害作用を持つ薬剤と併用すると血中濃度が上昇する可能性があります。
添付文書の記載を見ると、スボレキサントおよびダリドレキサントは、CYP3A4 阻害作用のある薬剤は併用禁忌とされている一方、レンボレキサントは、「CYP3A を中程度または強力に阻害する薬剤との併用は、患者の状態を慎重に観察した上で投与の可否を判断すること」、さらに、「併用する場合は、1日1回2.5mgとすること」と、半量に減量することを推奨しています。
この相互作用を定量的に評価するため、CR-IR 法に基づいて、寄与度を算出しました。
なお、計算には、こちらの書籍を参考にしました。
計算には、添付文書「16.7薬物相互作用」に記載されている薬物動態の変化をもとに算出しました。併用薬は、それぞれ右に記載しています。
その結果、クリアランスへの寄与 CR は、スボレキサント 0.64、レンボレキサント 0.77、ダリドレキサント 0.71 と、レンボレキサントが最も寄与度は高いことがわかりました。
添付文書の記載を見ると、スボレキサント・ダリドレキサントは、CYP3A4 が血中濃度推移に与える影響が大きく、レンボレキサントはそれよりも低いのかな?と考えてしまいがちなので、これは、予想外の結果でした。
次に、CR、IR、IC 値をもとに、併用した時に AUC はどの程度変化を推算しました。
強い CYP3A4 阻害薬と併用すると3〜4倍程度に血中濃度が上昇する可能性があると推算されました。
レンボレキサントは通常用量1回5mgですが、1日1回10mgを上限として、増量することも認められている薬剤です。
レンボレキサントを強い CYP3A4 阻害剤と併用した時の血中濃度
① レンボレキサント 1回10mg
② レンボレキサント 1回2.5mg +強い CYP3A4 阻害剤
③ レンボレキサント 1回2.5mg +中程度 CYP3A4 阻害剤
④ レンボレキサント 1回5mg
上記のように、上から高濃度、下にかけて低濃度、という血中濃度推移をとると考えられます。(③と④は同程度)
併用時、減量しても血中濃度は上昇する可能性がありますが、上限以下であると考えられます。
もちろん、これは推算であり、個人差も考えられるので、血中増加に伴う副作用が出ていないかなど、調剤後のフォローアップが重要です。
このように定量的な目をもって見ることで、薬物相互作用を具体的に評価することができます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。