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物語の種⑦


⑦妖精リラの肉体

 古来、妖精が肉体をもつことは禁じられていた。だが、妖精リラは過去の善行を認められて人間の肉体を特別に与えられていた。
 リラは片腕の画家から「個展に出すための人物画のモデルになってほしい」と頼まれる。画家はリラの肉体を丹念に描くことをつとめた。絵を描く画家の熱心な姿をみて、リラは妖精としての存在を隠すことを自らに誓った。モデルに徹するリラ。その美しさに幻惑された男たちはモデルのリラを支持していく。一方でリラの兄弟たちはリラの誓いを無理に感じていた。
 果たして、完成された絵をみてみると、リラの体は七色に輝いている。リラの誓いは虚しく、その肖像画は「妖精のリラ」であった。

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