ゴミ処理
天気のいい日も悪い日も、家の中で何をすることもなくごろごろと過ごす。
食べて寝て、食べて寝て、ごろごろ、ごろごろ。
そんな不摂生ともいえる生活を続けていると、いつもきまってあいつがやって来る。
おい、なんだこの部屋の状況は
足でゴミ袋を蹴飛ばしてこちらへ近づいてくる音を彼女は聞いていた。
おい、聞いてるのかこの馬鹿野郎
ぐえっ
お腹のあたりに割と強めのキックが入り、情けない声が上がる。
呻きつつ仰向けになり、彼女はあいつを視界に認めた。
なんのよう
連絡が取れなくなって俺のところに要請が来た
……なんでいつもあんたなの
他のやつだとお前に言いくるめられて帰って来るからだろ
おら、さっさと起きろ
ぐげげ
足で太ももの横を突かれて地味な痛みを感じ、彼女は左に寝返りを打つ。
そしてそのまま布団をかぶって丸くなる。
おい、なんだそれは
さっさと起きろと言ったんだが
背中に一定のリズムであいつの足が当たる。
段々と強くなるその衝撃を彼女はさらに丸くなって受け流すが、大きな音と熱さを感じ飛び上がる。
ちょ、レーザーはないでしょ!
殺す気?
目をひん剥いて、あいつに抗議するけれど効果はない。
こっちは殺す気でやってんだよ
ちなみに今回、上からやっと三十分経っても起きなければ撃ち殺していいと許可を貰った
はぁ?
だけど俺は優しいからな
警告という意味を込めて三分経過ごとに威嚇で撃ってやる
いやいやいや、意味わからないし!
上がそんなこ
ヒュンっと左耳がレーザーの音をとらえた。
ひぃっ!
ちょっとまだ三分経ってないじゃない!
悪い、手が滑った
全然悪びれもないあいつの言葉。
そもそもお前、死にたがりなんだからよ、いつどこでどう死んだって構わないだろ?
かまうわよ!
流石にレーザーで、しかもあんたに殺されるのは嫌!
即座に言うとその辺にある服を拾う。
床というかゴミ袋の上にある服を拾ってそのまま着ようと思うのは、俺の友人には居ないぜ
あたし、あんたの友人じゃないし
人としてもどうかと思うがな、この部屋の状況
なんだって毎回こんな状況になるんだよ、とあいつの小言。
だって動くのめんどくさいじゃない
仕事がない時はずっと寝ていたい
そういうものじゃない?
少なくとも俺は違う
答えながらあいつはゴミ袋を拡大レーザーで燃やしていく。
おかげで部屋の中が少し焦げ臭い。
ねー、それ止めてくれない?
焦げ臭いんだけど
部屋の中にゴミをため込むやつが悪い
聞く耳持たずであいつは淡々と燃やしていく。
肩を落として彼女は先程拾った服と共に風呂場へ移動する。
ガラッと風呂場に続く脱衣所の扉を開くと中から大量のゴミ袋が彼女に襲い掛かる。
色気のない悲鳴を聞きつけてあいつがやって来ると、ゴミ袋の海におぼれている彼女を発見した。
……本当、お前さ人としてどうなんだそれ
うぅ、オタスケ……
呆れや憐みや失望。
そんな感じのため息が聞こえた。
そしてあいつは彼女を引っ張り出して後ろにどかすと、ゴミ袋を燃やし始めた。
いつになったら終わるんだ、あいつは小さくそう言い続けながらゴミ袋を燃やし続けた。