見出し画像

はしご職人


この星に生まれた者は物心のついたころから梯子を作り始める。

どこまでも続く高い空に向かって、自分の限界までずっとずっと作り続ける。

今年は8人の独り立ちをした梯子職人が梯子を作り始めた。

その中でもひとり、すごくセンスのいい子がいてその子は黙々と梯子を高く高く作り続けていた。

周りの子はその子に負けないように必死で自分たちももっと高く梯子を作り続けていたのでした。













あるとき、その子は、はしごを作るのに疲れてひと休みをしていたとき気が付きました。


みんなどこにいるんだろう?


その子のまわりには誰もいませんでした。

おかしいな、と思ってその子はみんなを探すためにはしごを降りていくことにしました。

どのくらい下がったかわかりません。


ひとりいました。


なんだよ、おまえこんなとこまで降りてきてのか

うん、ほかの子はどこにいるの?

さあな、もっと下にいるんじゃねえか?

そっか

おまえ、降りるのか?

うん


もう少し降りるとふたりいました。

あれ?

きみ降りてきたの?

すっごいひさしぶりだねー?

ほかの子はどこ?

少し下に三人いるよ

あと、ずーーーーっとしたにドベがひとり

そっか


その子は、また降りていきます。

先程のふたりが言ったように少し下に三人いました。

軽く言葉を交わして、その子はまた下に降りていきます。

三人のいたところよりも、もっともっともっと下。

そこに最後の一人がいました。

そして最後の一人は黙々と梯子を作り続けています。

その様子を見て、その子は近づき、一緒に梯子を作り始めます。

いくらか梯子を作ったときに、最後の一人が聞きました。


どうして、ボクといっしょにはしごを作ってくれるの?

だって、まだはしごを作ってるのはきみだけだったから

ほかの子はもう誰もはしごを作らなくなっちゃって

そうなんだ

みんなボクよりもはしごを作るのがじょうずだったから

すぐ見えなくなっちゃって

何してるのかなって思ってたのに

そっか、もう作ってないんだね

うん……たぶん、ほかの子はじぶんで限界を決めちゃったんだとおもうんだ

だから、作らなくなっちゃった


その子は一度だけ最後の一人に目をやって、また梯子を作るために手を動かし始めます。


……もし、きみがまだこの先もずっと作り続けるなら

ぼくも一緒に作ってもいいかな?


最後の一人は小さな声でどうして、とその子に聞きました。

その子は一人でも高く高く梯子を作れるのに、どうして、と。


ぼく、ひとりでずっと作ってすごく高いところまで行ったけど

周りに誰もいなくって淋しかったんだ

はしごを高く高く作っても

ひとりでしか見れない景色なんて意味がないんだって

下に降りて他の子たちを見てきてぼくは思ったんだ

それにみんな、はしごを作らなくても楽しそうにしてたんだ

でもぼくは、はしごを作り続けないとって

はしごを作ることを止められそうになくって……

そして一番したに来てみたら

きみがまだはしごを作ってて、ぼく嬉しくって

まだはしごを作ってる子がいるって

ぼくね、きみとならひとりで作るよりもっと高くはしごを作れるような気がするんだ

だから、きみとはしごを作ってもいいかなぁ?

その子の問いに、戸惑いながら声を出します。

ボクは……キミよりもずっとはしごを作るのが遅くって、へたくそだよ?

それでもいいの?

うん、それでもかまわないよ

ぼくはきみとはしごを作りたいんだ

……ありがとう


その子と最後の一人は、それから一緒に梯子を作り続けました。

その梯子は星と星を繋ぐ最初の梯子になったそうです。








いいなと思ったら応援しよう!