眠りの神様
どこかの世界の神様は、よく眠っているそうだ。
その世界は神様が起きていないと動かないから、神様が眠っている間、世界は一ミリも進展しない。
神様が起きてやっと世界が動き始める。
しかしその神様は寝て起きた後が最も眠たいらしく、起きてもまたウトウトとしだし眠ってしまう。
動き出した世界がまた止まり、神様が起きるまで動かない。
その世界は、そんなことを毎回繰り返していた。
するとあるとき、別の世界の神様がやって来て眠りについている神様ごと世界を奪ってしまった。
もともとの神様は、やって来た別の世界の神様の下につくことになり、初めのうちは強制的にたたき起こされて世界を動かしていた。
しかし準備が整うと、もとの神様が眠っていても世界が動くようになる。
つまり、世界は本当の意味で奪った神様の管理下に置かれたということだ。
そして用済みになったもともとの神様は、世界の端っこに追いやられ小さな祠に閉じ込められた。
もともとの神様は自分の世界が奪われたというのに、そのことについては全く興味がないようで閉じ込められた祠の中で好きなだけ眠り続けた。
もともとの神様は、世界のために起きるという使命がなくなり嬉しかったようだ。
だからもともとの神様はずっと眠り続ける。
誰にも起こされることはない。
祠の外で世界が終わっても、ずっとずっと眠り続けるのだ。
他の神様に見つかることもなく、ずっと一人きりで眠り続ける。
それ、どこの国の神話なの?
とろんとした目で姪っ子が聞く。
さあ、どこだったかな
覚えてないの?
うん、もともとは彼女に教えてもらったお話しだからね
じゃあ、こんど彼女にきいておいてよ
……そうだね
おじちゃん、よろしく
最後の方は小さくて聞き取りにくかったが、姪っ子はやっと眠ってくれた。
少しずれた布団を直しながら呟く。
きっと夢の中で彼女に会えるよ
僕は毎日夢の中で彼女と会ってるから、きっと君も会えるよ
夢の世界の神様の彼女が、夢にまつわる物語を、別世界の神話を姪っ子に話してくれるだろう。
姪っ子が起きた時にそれを覚えているのかは謎であるが、会っているのは確実だろう。
いい夢を……
僕は既に眠っている姪っ子に告げ、部屋を後にする。
僕が眠りについて彼女に会ったのは、その三時間後のことだった。