ブラックスター
布団に潜り込んで、寝る前の御話を聞いていた。
今日は両親ではなく、遊びに来ていたお母さんの妹が話している。
お母さんの妹、ぼくにとっては叔母さんだ。
叔母さんはいつも不思議な御話を聞かせてくれる。
よくある子供に聞かせる童話や昔話、絵本ではない。
なにを話しているのかわからないことが多いけど、ぼくは叔母さんの御話が好きだった。
だから今日の御話も楽しみにしていて、ちゃんと最後まで聞かないと、と思っているのだけど少し頭がぼーとしてきている。
叔母さんは、星の話をしていた。
今、聞いている限りでは白星を追いかけまわして宇宙から消しちゃったのは誰なのかという御話のようだ。
『___実のところ、白星を追いかけたのは黒星ではなく青星でした。
黒星は白星にたいして執着はなく、むしろ青星の方が白星に執着していたのです。
だけど黒星は物静かで思ったことを口にしない。
疑われていても何も言わない……言葉が足りないせいで、白星を死に追いやったのは黒星だと他の星たちから非難されてしまいます。
そして他の星の満場一致により、黒星は罰として大切なものを奪われてしまいました。
それは、星が星である証明とでもいうべき輝きです。
黒星はもう輝くことはできません。
輝くことが出来なくなってしまった黒星は、星と名乗ることも出来なくなってしまいました。
星ではなくなった黒星ですが、今では他の星を飲み込むブラックホールになってしまったと言われています。
それも、よく青い色をした星を飲み込むのだとか。
___以上が、アルカイ族に伝わっている遠い昔にあった星々の御話のひとつです。』
御話が終わると叔母さんは、ぼくに布団をかけ直す。
両親もそうだけど、たいしてずれていないのに直すのはどうしてなのだろう。
ぼくは半分しか開いていない目で叔母さんを見つめる。
今日の御話は終わり
もう寝ようね
まだ眠くないと嘘をついても、叔母さんは軽く笑うだけでなにも言わない。
かわりに、布団の上からぼくの体をとんとんと叩く。
そのリズムが心地よくて、ぼくはそのまま目を閉じる。
そのうちになにも考えられなくなって、頭がまくらに引っ張られる。
きっとぼくは、眠ったのだと思う。
遠くの方から音が聞こえる。
そちらの方を見てみると、色とりどりの光がなにかを話し合っていた。
ぼくは直ぐに理解した。
これは白星について話し合っているのだ、と。
きっと黒星が疑われているに違いない。
けれど、それは間違いだと伝えなければならない。
ぼくは、たくさんの光の方向へと走る。
黒星が輝きを奪われないように、急いで伝えないと。
それだけを思って、ぼくは光の中心に飛び込んで必死に話をする。
突然目覚ましの大きな音が聞こえて、ぱちりと目を開けた。
部屋の外側から良い匂いがしてくる。
ぼくはさっき見たものが夢だったと知る。
夢の中の出来事だったけれど、ぼくの夢の中で黒星は輝きを奪われることはなかった。