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明日から頑張る
久しぶりに徹夜で話し明かしたのは、いつぶりだろうか。
大学生か、高校の頃か、よく覚えていない。
ただ、社会人になってからは初めてだったのではないかと思う。
おかげでとても眠いのだが、それはまあいいだろう。
話し明かした時間は無駄な時間ではない。
少なくとも僕にとっては、のことだけれど。
とはいえ、そのままの状態で出社して仕事をこなして帰宅するのは結構な困難だった。
電車に乗っているときも、会社についてデスクに座って仕事をしているときも意識が急に遠くなっていく感覚がした。
それでも眠らずに最後までこなして、帰宅が出来たのは我ながら褒めてやりたい。
しかし帰宅してソファに身を沈めたが最後。
僕は翌朝まで眠り続けた。
それにより学生の頃と違って、体力が落ちているのが嫌になるくらい理解が出来た。
あの頃は二日や三日徹夜で遊び倒すことが普通のことだったのに、社会人になるとそんな体力はなくなってしまうらしい。
ただ、体力はなくなるのに食事の量が減らないのは不可思議なことである。
相変わらず学生時代と同じ量のものを食べている。
そういえば昨日、というよりは一昨日。
一緒に徹夜したあいつも食事の量は減らないと言っていたような気がする。
そして心なしか、僕たち二人ともふっくらとしてきているような気もした。
洗面所に向かい歯磨きをして、出勤まで二時間以上余裕があるので昨日は眠ってしまって入れなかったシャワーに入る。
顔が濡れるのが苦手で少しだけ俯くと、自分のお腹が目に入った。
右手でつまむと結構な弾力と厚みが伝わってくる。
これ……このままだとヤバいかも
髪の毛に水の粒があたり、こめかみをつたって顎から浴室のタイルへと落ちていく。
そもそも学生時代と運動量が違うのだから、食事もそれに伴って減らしていくべきなのだ。
にもかかわらずそれをしてこなかった。
そのつけがお腹に現れ始めている。
目を瞑って、シャワーヘッドを右手で取ると後頭部へ持っていく。
角度を調節して髪の毛全体を濡らして、シャワーヘッドを元に戻すと、シャンプーを左手に乗せて手のひらで泡立ててから髪を洗う。
さすがに、ちょっと気をつけないとだよなあ……
面倒だったのでコンディショナーはせずに、シャンプーだけで終わらせる。
きっと髪の毛がキシキシになるだろうけれど、そこまで気を遣う髪ではない。
今日帰宅したらどうせまた洗うのだからと、ぞんざいに体をお湯で洗い流して浴室からでる。
タオルで体を拭き、ドライヤーで髪を乾かす。
軽く着替えて居間に戻っても、起きてから三十分も経過していなかった。
仕事行くの面倒だな
本音がぽろっとこぼれたけれど、結局そう言いながら毎日仕事に向かうのだ。
朝ご飯でも食べるか
パンとハムとタマゴが余っていたはずだから、それを使おう。
それからウインナーが賞味期限ぎりぎりだったからそれも使ってしまおう。
ヨーグルトもあったよな……
三十分後。
僕は食事の量を制限しなければと考えていたことなどすっかり忘れて、わりと量の多い朝食を平らげてのんびりと食後のコーヒーを飲んでいた。