富井化する私 サントリーホールで感じた老い
嘆かわしいことだが、40の坂を越えても不惑どころか惑いっぱなしのこの私。同い年の芸能人は岡田准一、ディーン・フジオカ、高橋一生、星野源らである。
まあ上を向いたらキリがない。そんなスーパースターでなくても、せめて「美味しんぼ」の谷村部長くらいのスマートさやインテリジェンスがほしかったが、今の私をカテゴライズすると、脂ぎった小泉局長でも「ワイルドだろう?」の中松警部でもなく、富井副部長が一番適切な気がする情けない有様。
この富井副部長、小市民を絵に描いたような人物で、目上にはペコペコ、目下には偉そうという何とも愚物。それでいて憎めない人間味があるから何とかアニメの主要キャラクターたりえている。
甲高い声で部下の山岡を叱責。
「山岡〜!また昼寝しとるのか!」
あの声は一度聴いたら忘れられない。カウンターテナーくらいの音域ではある。
今日地元の中華屋に晩飯を食べに行ったら、若い女性3人組が来ていて、大きな声で喋っていた。
勝手な私見だが、男同士の会話より女同士の会話の方が下品な気がする。男の会話の下品さって話題のチョイスだったりするけど、女の会話の下品さって口調や言葉遣いだったりする。だから話の内容はあまりわからなくても聞いていていい気分がしない。
とはいえ、一人で定食メニューを食べにきてる私なんかよりお店にお金を落としてるのは確か。文句を言える立場ではない。老兵は消え去るのみだ。
その後スーパーで買い物して帰ったが、富井化した私を20年前の私が見たら「冴えねーオヤジだなぁ」と思ったかもしれない。アンチエイジングの努力を怠り続けた者の末路がこれだ。
とにかく運動系が嫌いなものだから、体型がだらしない。
椅子に座るときはいわゆるずっこけ座り。だから骨盤ずれまくり。
おまけにストレートネックもあるに違いないので、お腹が飛び出している。
BMIだけ見ればそこまで極端な肥満ではない。姿勢を改善するだけでもだいぶ見た目は変わるはずだ。
しかし、髪も薄くなってきている。父親も母方の祖父も薄いのでもともと期待はしていなかったが、美容院を変えるたびにAGA外来を勧められる。
山本學のような上品に枯れた老人を目指していたが、富井化が加速しているので今から軌道修正するのは容易ではない。
最後に、クラシック関係で「老い」を感じた話を。
先日サントリーホールで、カーチュン・ウォンのブルックナー9番を聴いた。
満場の聴衆が大拍手で呆気に取られたのだが、それには理由があった。
日本ではもともと情動的なブルックナーは評価されてきていなかったはずだ。
フルトヴェングラーやバーンスタインのブルックナーを褒めてる批評家やファンはほとんど見かけなかった。
それが、時代がいつのまにか変わったのか、カーチュン・ウォンのアゴーギグもデュナーミクもしまくりの劇場型ブルックナーが大歓迎されるなんて、だったらフルトヴェングラーのブルックナーはなぜあんな低評価だったのか?
ヴァントや朝比奈のブルックナーが高く評価されてきた歴史がある中で、異質のものとして現れたカーチュンのブルックナーがその異質性について何の言及もなく熱烈に歓迎されているのは私には不可解でしかなかった。
いつから劇場型ブルックナーが高く評価されるようになったの??
私が知らなかっただけ?😂
それに思ったのは、Xでクラシックコンサートの感想書いてる人の中には、コンサートには行くけどCDでは聴かない層もいるのかなと。
そうした人たちは現役指揮者のマーラーやブルックナーをバーンスタインやヴァントと比較して語ることはないのだろう。
あの日サントリーホールで、知らないあいだに自分が時代おくれになってしまったのだと思わされた。