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捨て身の真空ジェシカにびっくり 今年もやってみたM-1生採点

去年のはこちら。

全然お笑い通でもないのに採点😅

去年やってみたら面白かったのです。自分のお笑い観がわかるし、審査員のお笑い観を知る指標にもなります。

M-1はミルクボーイの年からは本戦はすべて、敗者復活戦も年によってはすべて見るようにしています。今年は敗者復活戦のAブロックの途中から本戦の最後まで生で見ました。

さて私の点数の前に、審査員の点数について。

こちらを参考にしました。

「M-1」ってリアルタイムで見て笑って終わる人が大半だと思うのですが、私は審査フェチなので、審査員がどんな採点をしたのかがすごく気になります。

一時期、芥川賞の選評もよく読んでいました。選考委員がどういう文学観や基準で審査しているのかを知るのは面白いです。

それでいうと、点数の幅が狭い審査員はダメだと思います。あと、同点が多い審査員もどうかと。

今回は、海原さんがヤーレンズ、ダイタク、エバース、トム・ブラウンの4組に94点をつけています。95点と97点が2組ずつ。
10組審査して、点数が5種類しかないのはどうかと思います。本人も言ってたように感覚的に採点していて、比較して出来を捉えてないのではないでしょうか。
塙さんと礼二さんも同じ点数を3組につけています。

反対に大吉さんは、初出場のときは点数の幅が狭かった記憶がありますが、今回はかなり気にされていて、真空ジェシカを令和ロマンより評価したくて1点多くつけています(本人がそうコメントしてました)。

最高点と最低点は以下の通り。

大吉 真空ジェシカ97   ママタルト88
塙 トム・ブラウン95   ママタルト89  
哲夫 バッテリィズ95   マユリカ88
若林 バッテリィズ95   ママタルト89  
石田 バッテリィズ97   トム・ブラウン88
山内 真空ジェシカ97   マユリカ、トム・ブラウン90 
柴田 バッテリィズ96   トム・ブラウン87  
海原 令和ロマン、バッテリィズ97   ママタルト92
礼二 バッテリィズ97   トム・ブラウン89 

こうやって見ると、真空ジェシカに最高点をつけた大吉さんと山内さんが私の感覚に一番近そうです(実際、お二人の芸風も好きです)。

点数幅は海原さんが5点差、塙さんと若林さんが6点差で、10組審査してるのにこれではあまりに狭い感じがします。仮に順位をつけるとしたら、1位と10位では9点差がなくてはなりません。それなのに5点しか違わないのでは、同点の組が続出し、審査しているとは言いづらい状態になります(他の審査員に丸投げしてるのと変わりません)。

このように審査点数から見える審査員の評価軸は大変興味深いものがあります。
賞レースは審査する側も実は審査されているのです。

次に私の生採点の点数です。いずれもリアルタイムで、審査員の点数が発表される前に採点しました。

◎決勝

❶令和ロマン 「渡辺」 94
くるまさん、肩パッドなのか、すごく肩の尖ったスーツ着てたのがおかしかったです。
勢いはすごかったけど、どうも好きになれないというのが私の令和ロマン評です。
柴田さんが言ってましたが、「王者の風格」を感じました。
好みではありませんが、ネタの爆発力は前回同様凄かったので94点。

❷ヤーレンズ 「おにぎり屋」 91
前回大ファンになったヤーレンズでしたが、前回と同じようなコント風で、楢原さんがひたすらしょーもないボケを連発するスタイルが今回はうまくいってないように感じました。ボケの数を絞った方がよかったかも。
とはいえ、高速マシンガンボケの楢原さんと似た芸風のインディアンスの田渕さんがコンビ組んだらどんな風になるんだろうと思っちゃいました笑
審査後のコメントで、楢原さんが松本人志の名前を出したのにはがっかりしました。笑いにしていいことと悪いことの線引きはあると思います。
今田さんがすかさず「家で見てると思います」と言って対処したのは、さすが生放送の守護神だなと感心しました。

❸真空ジェシカ 「商店街」 98
真空ジェシカも大ファンですが、今まで見た彼らのM-1ネタで一番笑いました。
テンポの緩急がうまくて、去年より一つ一つのボケが刺さる感じでした。
政治や政党ネタも随分入ってて、それがことごとく面白かったです。

❹マユリカ 「同窓会」 89
「うんこサンドイッチ」とか相変わらずキャッチコピー的な言葉のエッジは凄いのですが(前回は「尾木ママのサイン集めてる」)、あまり面白くありませんでした。「モーニング」とか「ゆで卵」も先が読める感じでした。

❺ダイタク 「ヒーローインタビュー」 90
「言うなよ」というお馴染みのギャグと双子ネタを盛り込んだ構成でしたが、インタビューの繰り返しはやや飽きました。
私は「これ漫才なの?」と思っちゃいましたが、審査員は「古典的な漫才」と言ってる人が多かったですね。
今回は海原さんがファイナリストとの会話中に、何か反論や意見されるたびにしばしば半ギレ気味になってるように見えました。

❻ジョックロック 「オペ」 92
漫才なのかコントなのかわかりづらいです。マイクどけたらコントになるのでは?と思っちゃいました。
「ボケのセリフで笑いが起きない(ツッコミが入る前にも笑いがほしい)」と山内さんが言っていて、的確なコメントだなと感じました。
「オレが面白くなりますー!」って、ボケのゆうじろーさんが言ってたのがよかったです。負け方に人柄やポテンシャルが出るのがM-1です。

❼バッテリィズ 「偉人の名言」 87
決勝で1位でしたが、私は面白いと思わなかったです。
まず、導入が唐突すぎました。急に「偉人の名言」の話を始めます。落語だって噺の前にまくらがあります。
アホネタが称賛されてましたが、私には既視感があって新しいとは思いませんでした。
お笑いはネタ自体の面白さも大事ですが、何か新しいことに挑戦しているかも私にとっては大きな評価ポイントです。
たくさん見てるわけではないので知らないだけのことも多いですが、敗者復活戦でインディアンスが見せた「徐々にマイクから遠ざかりながら退場する」は新鮮な演出で面白かったです。
バッテリィズは合間合間に今田さんからコメントを求められたときのエースさんの返しの下手さも気になりました。

❽ママタルト 「銭湯」 85
大きな笑いがなく、「これが決勝?」と思わされました。案の定、10組中最下位でした。
審査後のコメントのさい、ツッコミの檜原さんがアドバイス通りにツッコミ方を修正していて、こちらも負け方に清々しさがありました。

❾エバース 「桜の木の下で再会」 93
古典的なすれ違いです。審査員の評価は高かったですが、既視感がありました。
町田さんのツッコミ方はバリエーション豊富で面白かったです。

➓トム・ブラウン 「ホストクラブ」 88
もうナンセンスの極致というか、この次元には普通の人は達せません笑
独自の世界観ですが、私は付いていけませんでした。

◎最終決戦

❶真空ジェシカ 「ピアノが大きすぎるアンジェラ・アキ」
今大会で一番びっくりしたのがこのネタです。というのは、真空ジェシカの本来の芸風とはおそらくまったく逆のことをやっていたからです。
多分ですが、おバカ路線が好きな審査員たち(「最近は小難しいネタが多くて……」などと言ってる審査員が多かった)向けに、ネタの方向性を180°変えてきたのだと思います。
その潔さというか、優勝への貪欲さに私は大きな衝撃を受けました。ここまでするのか……と。
私は真空ジェシカ好きなんですが、このネタは無理してる感を感じて、決勝のネタのようには笑えませんでした。
おそらく順番が3番目なら、おバカ系とインパクト系の後に知的系を持ってくることもできたでしょうが、最初に知的系を披露してもおバカ系に捲られるのは今までのM-1を見ていればわかること。
本来用意していたネタではなかったから、最終決戦の結果発表前に川北さんが順番を決めるシステムについて愚痴っていたのかもしれません。

❷令和ロマン 「タイムスリップ」
舞台上を派手に動き回るネタ。令和ロマンは見せ方が上手です。ネタは二人で考えてるようですが、演劇的な素養も感じます。
これを見終えたときに「今回は令和ロマンで決まりだな」と思いました。

❸バッテリィズ 「世界遺産」
ピラミッドや古墳など、お墓にまつわるネタです。
ミルクボーイが優勝した年に、決勝で「コーンフレーク」をやって最終決戦で「モナカ」をやったのを思い出しました。あまりに同じ型すぎると二回目の面白さは落ちます。

ということで、私の審査は決勝が❶真空ジェシカ、❷令和ロマン、❸エバースで、最終決戦は令和ロマンでした。

ファンってことでいえば、真空ジェシカやヤーレンズの方が好きです。でも、私が思うネタの完成度で審査してみたらこうなりました。

真空ジェシカの川北さんとガクさんは本来の芸風を捨ててまで勝負に出たのにこんな結果になり、がっかりじゃないでしょうか(塙さんなんか「真空ジェシカに入れたの、令和ロマンに変えていいですか?」とか言ってるし。傷口に塩塗るようなこと言うな😡)。

真空ジェシカって人力舎なんですね。M-1って20回の歴史中15回は吉本の芸人さんが優勝してる吉本芸人の祭典です。
真空ジェシカもヤーレンズも吉本ではないので、不利な立場なはず。
これからも応援し続けていきたいと思います。

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