比較生産費説に勇気づけられる
経済学をかつて学んでいたとき、比較生産費説という考え方に出会った。
堅苦しい内容でありながら、自信の持てない自分にとって勇気を与える考え方だと感じた。
中小企業診断士試験 第1次試験 経済学・経済政策 平成28年度(2016年) 第19問
いま、AさんとBさんだけが存在し、それぞれコメと豚肉のみが生産可能な世界を考える。
下表は、AさんとBさんが、ある定められた時間Tのすべてを一方の生産に振り向けた場合に生産可能な量を示している。
また、下表にもとづく2人の生産可能性フロンティアは、下図にある右下がりの直線のように描けるものとし、AさんとBさんは、自らの便益を高めるために生産可能性フロンティア上にある生産量の組み合わせを選択する。
このような状況を説明する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
①Aさんは、いずれの財の生産においても、Bさんに対して比較優位を有するために、Bさんとの生産物の交換から便益を得ることができない。
②Aさんは、いずれの財を生産するにせよBさんよりも生産性が高く、絶対優位を有するために、Bさんとの生産物の交換から便益を得ることができない。
③比較優位性を考慮すると、Aさんはコメの生産に、Bさんは豚肉の生産にそれぞれ特化し、相互に生産財を交換し合うことで、双方が同時に便益を高めることができる。
④豚肉の生産について、AさんはBさんに対して比較優位を有する。
中小企業診断士の過去問から、この概念を扱った問題を引用した。
世界に2人しかいなくて、しかも何故か食料がコメと豚肉しかないというのがメチャクチャな状況ではあるのだが、もう少し噛み砕いてこの問を簡略化すると、↓のような理解になる。
・Aさんは、コメも豚肉も上手に生産できる。
・一方のBさんは、コメも豚肉もAさんほどは上手に生産できない。が、自分の中ではコメの生産が得意。Aさんには及ばないものの、そこそこの生産性をもって生産することができる。
このとき、次のうち正しいものはどっち?
ア)Aさんはどちらの能力もBさんに勝っているから、Aさんにとっては、Bさんと一緒に働くメリットはない。
イ)Aさんが豚肉の生産、Bさんがコメの生産を行うことで、双方にメリットがある。
リカードの比較生産費説、という考え方によると、答えはイだ。(引用元の中小企業診断士の問題の答えは、④)
考え方の詳細は中小企業診断士の過去問解説ページに譲るが、この理論は、端的に言うと
・自分の得意分野で役割を全うすれば、全体の成果に貢献できる
ということを裏付ける理論となっている。
貿易分野の考え方ではあるが、組織内のチームプレイにも応用することができる。
同じ組織の中に物凄くできる人がいたとする。どの分野をやっても自分に勝ち目がない。自分に存在価値はないのだ…
そんな時は、この概念を思い出せば良い。
比較生産費説では、他者との比較ではなく「自分の中での得意分野」に特化することで、組織の生産量を上げることができる、というのだ。
ナンバーワンにならなくてもいい。
得意分野を伸ばして、周囲と協力して仕事を進めていこう。