建築デザインのためのビジネス書10冊
このnoteに取り上げた書籍は世間で有名なものばかりで、おそらくnoteで検索すると同じものをおすすめをしている記事が出てくるはずです。
けれども、ビジネス本の類は設計者とってプライオリティが高いものではないので聞いたことないものもあるかもしれません。大学生のうちには難しい哲学書を手に取りたいものだし、設計事務所で働いている時に熟読したいのはディテールの本一択です。ぼくもそうでした。
でも、ある時読んでみると、建築やデザインをする上で重要な示唆になることが詰まっていることに気づきました。「卒業設計のテーマ」「プロポーザルのコンセプト」さらには「デザインそのもの」のヒントになる内容です。
取り上げた本はゴリゴリな経営の数字の話紹介には、建築の思考とどう結びつけて読んだのか簡単にコメントを入れてあります。これをきっかけに読んでみた方がいたら是非お話ししましょう。ちなみに、チョイスには少し偏りがありますがご容赦を。
1.イノベーションの普及
最近読んだ中では頭一つ抜けて抜群に面白かった本です。「社会に対して新しいものを生み出す」という点において、”建築のデザイン”と”ビジネスのイノベーション”は同じで、共通項も多いんですよ。本に書かれているイノベーションが生み出されてきた実践を、建築のデザインする思考に重ねながら読むと驚くほど学びになります。価値をどうつくり、どう広げていくかが科学されています。
2.ジョブ理論
ビジネスの現場に立って見ると、設計者としての自分って意外と生活者のことを知らなかったなと感じる機会が多々あります。”みんなの為の場所を〜”と語るときはあるけれど、実は”みんな”に対する解像度が低い。人を理解することへのアプローチは、様々な研究がなされていますが、”社会に属して生活する人”という視点を思考するきっかけとしてとても「ジョブ理論」はいい本です。
3.イノベーションのジレンマ
建築系の雑誌をめくっていると、学生コンペの受賞案が以前と大きく変わってないなと個人的には感じるのですが、これってコンペを取り巻く環境が”イノベーションが生まれずらい環境”になってしまってるのかもと思いました。そんな状態がなぜ起きるのか?そしてどう突破すべきなのか?について書いてある本です。自分のデザインが毎回似ていることに悩んでいる人も同じ課題を抱えているかもしれないので、読んでみるといいかもしれません。
4.ティール組織
ここ最近、ギルド型やネットワーク型といった形態の設計組織が増えてきた気がしますが、そういった組織について興味がある人は読んでみてください。組織論ってのは積み重ねられた蓄積があるので、学ぶと組織に対する視座が上がり「あれ?今考えていることだけじゃまだまだ全然ダメなんじゃない?」と気づくことになるかもしれません。ちなみにここにあることを真似してもダメだなというのがぼくの意見で、どう建築という業界に落とし込むかを考えてみたいなと思っています。
5.両利きの経営
ここまでの4冊は組織の話と経営の話が書いてありますが、2つを結びつけて考えられる1冊がこの本です。新しいタイプの設計組織の話しをするとき「他ジャンルがいることで〜」「越境を〜」が理由の決まり文句になっていますが、大事なのは目的と戦略がその前にしっかりとあるか。そして、エクゼキューションに対して具体のイメージを強く持てているかだと思います。
6.行動経済学ノート
建築の世界で”アフォーダンス”はよく聞きますが、近い概念にバイアスとナッジがあります。特にナッジという考え方は知っておくと、自由な空間と制約な空間の二項対立をではなく捉えやすくなります。設計の説明で補助線としての〜ってよく喋る人は必読です。
7.「ついやってしまう」体験のつくりかた
任天堂さんはやっぱ最強だわっ。て後読感になる1冊です。ゲームにおけるエントリー体験や没入やりこみ体験の設計について書いてあるのですが、わりとダイレクトに建築空間の設計手法の話として読むことができます。
8.行動科学と公共政策
6番目の本で登場する”ナッジ”が公共政策の現場でどのように扱われているかが書いてある一冊です。「人に行動を促す=非公共的・悪」のような言論になることが時々ありますが、適切に扱うことで社会は良くなる。むしろ利用した方が社会が良くなることもある。ということを知れます。これ知らないで反論してるとちょっと恥ずかしいかもしれません。
9.デザイン思考が世界を変える
「建築的思考が〜これこれですごい〜」って言う人向けの本です。読みましょう。何がどうすごいのかの主張次第ではあるけれど、わりと近いことがデザイン思考で書いてあったりします。ここで語られていることの差分を語れずに建築思考すごい!と主張しても、それってデザイン思考だよね?となりかねない世の中なので注意しましょう。
10.突破するデザイン
「建築的思考が〜」って言う人向けの本その2。デザイン思考を読むと、ある方向性の反論が出るのですが、その反論部分を抑えてる本。2つの思考を振り子で考えることが大事だよね。ってとこまでデザイン界隈の認知としては当たり前になっています。さて建築的思考とはなんなんでしょう?誰か一緒に考えましょう。
以上10冊でした。
ここに載せきれなかった本もあるので、そのうち気が向いたらその2も書こうかと思います。既に読んだことある方。これをきっかけに読んでみた方。是非どんな感想を持ったのか是非聞かせてください。