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'21.04.30 寄席に行ってきた。

旅行行ったり、サッカーとか野球観てなにか残しておきたくなるかもなーと思ってとりあえずアカウントだけ取ったnote。
まさか最初の投稿が寄席になるとは。

寄席という場に不意に興味を持ったのは、ここ数日の話題である。

この決断は屁理屈だろうが皮肉だろうが英断であるとは思っていた。ただ、これに「江戸の粋」などと拍手を送る声もたくさん見たけど、個人的にはそこにはなんとなく違和感があった。
実際“粋”と思うかどうかはともかく、それを「粋だね」ってはっきり言っちゃうのは“野暮”じゃない?という。この感覚が合っているのかもわからないのだけど。

ともかく、行くはずだった「鳥獣戯画展」(@東京国立博物館)や「ライゾマティクス展」(@東京都現代美術館)などが軒並み中止になって予定があいた。
せっかくだし行くか、と思って調べていたら、新宿末廣亭の5月上席がなかなか豪華だったのでそこに行こうとしていた。

ところが、都の要請を受け入れ、一転5/1(土)から休業することとなってしまった。

というわけで、4/30(金)の夜席、まさに休業前最後の興行に行ってきた。

有名な噺家の独演会には何度か行ったことがあるけど、寄席に行くのは4回目。
1回目は高校生か大学生のとき、親に誘われて浅草演芸ホールへ。
2回目は社会人になってから、親がどこかで新宿末廣亭の招待券をもらってきて、せっかくだからということで行った。
3回目は2年前の正月に、これは自分で調べて、春風亭昇太・笑福亭鶴光・ナイツといった錚々たる顔ぶれに魅力を感じて、朝から並んで末廣亭のチケットを取った。
少なくとも、「暇だから寄席行こう」みたいな行動をするのは今回が初めてだった。

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16時20分頃、検温と消毒をしてチケットを買って、中に入ると昼席のトリが続いていた。一番後ろに座って聴いてみる。客は60人くらいかな、たぶん自分が一番若い。
ほどなくして落語が終わり、換気のために横のドアも全開放される。

この日の出演者。自分の一番のお目当ては人間国宝・神田松鯉先生だった。


開口一番、講談から始まって1人10分くらい(だと思う)の持ち時間で進行していく。
松鯉先生の前の三遊亭遊雀師匠、以前「博多天神落語まつり」で聴いたことあったな、と顔を見て思い出した。

そして松鯉先生、出るなり最前列のお客さんが「旭日中綬章おめでとうございます」と紙を掲げてまた拍手。こんな近い距離で人間国宝と場を共有できる機会、そうそうないと思う。
演目は「太田道灌・山吹の花」。講談って早口で捲し立ててなにがなんだかわからないままに「ここからが面白くなるところでございますがお時間が…」みたいな感じで去っていく、というイメージを勝手に持ってたのだけど、すごく優しい語り口で引き込まれていった。

仲入りでまたドアが換気のために全開放されて、後半のスタートは浪曲から。浪曲も観るのは初めてだと思う。
「男はつらいよ」を題材にしていて、面白かったのだけど「寅さんがフラれて旅をする話」程度の認識しかなかったから、これちゃんと知ってたらもっと面白いんだろうなとも思った。
ウクレレ漫談のぴろき。初めて行った寄席でも出てきて、なかなか衝撃だったな。んでしばらくして笑点で見たときはもっと衝撃だったけど。笑

トリは瀧川鯉橋師匠の「厩火事」。初めて聴いた演目だったけど、人情噺そのもののあらすじからオチが予想外すぎて笑った。

そんなこんなで20時半に終了。外はすっかり暗くなっていた。

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演目をtwitterで出してくれるのも嬉しい。

ひさしぶりの寄席は楽しかった。
楽しかったけど、やっぱりこちらは休業要請とか、とりまく環境を多少意識するし、噺家の方も枕のネタに使ったりと、どうしても意識せざるを得ない部分はある。
もちろん、悲壮感を漂わせるわけではなく、面白おかしくネタにしたりチクリと皮肉ったりと様々ではあるのだけど、はやくそういうことを気にせずに楽しめれば、と思わずにはいられない。

自分にとっては野球もサッカーもライブも、行くとなれば不要不急ではない。演者や選手側からすれば、仕事なのだから当然社会生活の維持に必要だろう。
それは誰かにとっては映画かもしれないし、誰かにとっては演劇かもしれない。そこを疫病対策を錦の御旗に掲げ、雑な理屈で封じ込めようという了見が気に入らない。
とりあえず「不要不急の行楽」とかいう訳の分からない日本語を使うくらいなら、話芸のプロの舞台でも聴いてみたらとも思うが、落語ファンを自称している直属の部下が寄席を「よせき」と読むくらいだし、きっと無理だろうな(あんまり読み間違いをあげつらうのもどうかとは思うけど、休業要請の文脈からのこれは敬意や誠意が感じられないし、あとシンプルに教養がないなと思った)。

最後に。
「いつか行こう」「いつかやろう」と思いながら、行けてない場所やできてないことがたくさんある。
もちろん時間とかお金とか、いろいろ制約はあるのだけど、できる限り経験をしていこうと改めて思った。
できない理由には、自分の状況が変わったり、それこそ急に病気になってしまってできなくなるということもきっとあるだろう。
でもそれ以上に、その「いつか」はいとも簡単に奪われてしまうことを、嫌というほど思い知ったことが、よりその思いを強くさせている。

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