大学で学ぶこと
「研究について」
とある「東北大の理系を目指したい」という高校生に話したこと。
東北大学には、建学の精神が三つある。
1.研究第一主義
2.門戸開放
3.実学優先
このうち実学優先は、今となっては私はどうかと思う。基礎の基礎を研究するのも大事だし、実際今東北大学ではそういう研究も大いにやられている。しかし上の二つは、今でも脈々と生きている。
価値ある研究には3種類ある。一つは、これまで誰も知らなかったことを発見すること。二つ目は、誰かが報告してはいるがまだ疑問とされていることを研究し、これは事実だとか事実ではないという事。そして三つ目は、世間が常識だと思っていることに対して「いや、それは間違っている」と証明すること。
当然、1と3に高い価値がある。そして1と3は非常に困難だ。2は1や3に比べればやりやすいし、研究結果がどうなろうが、既報は正しいと言っても間違っていると言っても良いんだから、つまり本質的に失敗しない。しかし価値は低い。
いずれにせよ、研究はまず確実で精度が高い情報を集めることから始まる。過去の様々な論文や文献を集める。その中には互いに矛盾するもの、よく読むと手法が雑なもの、さらにはそもそもめちゃくちゃで自分勝手なものなど、色々ある。そういう数多くの情報の中から、どの情報の精度が高いかを判別する能力を身につけるのが、大学で学ぶことの第一だ。多くの人々はその能力を持っていないから、情報が氾濫する中でひょいと妙な情報に引っかかる。すると今のネット社会、とりわけSNSはその人がどういう情報に多く接するかを判断し、そういう情報ばかりその人に流してくる。そうなればもう、その人はその泥沼から抜け出せない。
第二は、「何が何所まで分かっていて、何所は分かっていないのか」を探り出す能力だ。既に分かりきっていることを研究しても意味はない。もっとも上の第3の研究はそこを問題にするのだが。
そして第三は「どの様にやったら自分で正確性が高い情報を作り、発信出来るか」という事だ。方法を間違えてしまえば、当然結果も間違う。間違った結果を広めては駄目だ。また、せっかくよい結果を得ても、それを正しく広く発信する方法を身につけなければ、せっかくの情報が世に伝わらない。
これが、東北大学で学ぶ内容だよ。