技(わざ)の値段

今朝相方事務長が当院HPの「お問い合わせ」を覧たら、「先週から足が痛い」という相談が入っていました。



HPのお問い合わせ欄への対応はどうしても遅れます。すぐその場で、と言うことになりません。しかし「先週から足が痛い」というので、私はとりあえずそこに記された携帯に電話しました。



「先週水曜日頃から左足が痛くて腫れている」そうです。それは整形外科じゃないかと思いましたが、「とりあえず受診してください。必要なら専門の科にご紹介します」と言ったのです。



その方が受診されて、痛むという左足を覧て即座に私は「日赤救急外来搬送」としました。左足の膝から下、非常に広い範囲に紫斑と硬結が拡がっていました。一部の紫斑は明らかに血管の走行に沿っていましたから、一目で「表在静脈血栓症」だと診断し、ただちに日赤の救急外来に廻し、事前の電話で「血管外科のドクターにスタンバイしてもらってください」と依頼しました。



下肢表在静脈血栓症は、ただちに診断し、ただちに救急病院に送らなければなりません。クリニックでのんびり採血などをしている暇はないです。何故なら、すぐに救急病院に送らなければ、足にできた血栓が肺に飛んで、肺塞栓を起こすからです。その人は最初に足の一部に内出血と硬結(しこり)があることに気がついたのが先週の半ばだと言いますから、まかり間違えば今頃日赤のICUにいたか、もしかしたら死んでいたかも知れません。



しかし、こういう「一目で診断がついてただちに救急搬送が必要」という患者さんは、正直クリニックにとってはまったく儲かりません。だって診断したらクリニックでのんびり検査なんかやってられないから、即座に日赤搬送です。クリニックには初診料と診療情報書作成料しか入りません。ざっくり五千円です。



なんでお前は何時もそう「金、金、金」というのだというのは分かりますが、こう言うのって即座に診断して正しく対応しなければ生死に関わります。間違ったら患者死にます。「医者なんだから診断も対応もちゃんとやって当たり前」というのは分かりますが、初診でいきなり来た患者について一目で「これはこうでこうする」とやるのはかなりな技術です。現代医学はいろいろ検査と言いますが、こういうのは検査じゃないです。無論日赤では色々検査をしますが、最初に対応した町医者の私が「表在静脈血栓症だからただちに日赤」と判断して送らなければ、日赤だってどうしようもないのです。



こういう能力、あるいは技術って、何か保険点数で考慮して貰って当然だと思うんですけどねえ。

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