医者の本音
ある方が、私の漢方治療を受けて最近調子が良いそうです。しかし週末は体調を崩すと言います。御本人から「多分週末は夜更かしするせいだと思います」というお言葉がありました。
いつも何時頃寝ますか?と聞くと「だいたい11時頃です」。それは、34歳の若い方でお仕事もあるのですから、就寝が11時というのはそんなに珍しくはありません。で、週末は?
「3時4時まで夜更かししてしまいます」
そりゃあ、いくら若くても、その時間まで夜更かししたら体調は崩れますね、と言った後、一瞬(3,4秒かな)おいて、「しかし私はあなたが羨ましい。今年60になる私が34の頃、週末はどうしていたかと思い返せば、毎週飲み歩いていました、それぐらいの時間まで。しかし今私にそれは出来ない。歳を取ったからです。若いというのは、すごいですねえ」と言ったのです。
これは診療テクニックとかそう言うものではないです。思わず本音が出たのです。しかし医者は時に外来で患者に向かって本音を吐いても良いのです。医者が常に医者然としてありきたりの「正しい言葉」しか言わなかったら、患者さんは医者と距離を感じるでしょう。医者だってどのみち人間です。若いときは無理が利いたが今は利かなくなった。そういう本音を患者に向かって言ったところで、悪いことはありません。医療というのは、要するに人と人のお付き合いですから。