
自衛官退職後、民間会社へ:フランクルの「夜と霧」をバイブルとして歩む私の経験
ヴィクトール・フランクルの著書「夜と霧」は、私にとって人生のバイブルです。この本は、極限状況において人間がどう生き抜くか、そしてその中で「意味」を見つけることがいかに重要であるかを教えてくれました。自衛官としての厳しい経験、そして民間会社で働く中での苦しい状況を乗り越える際、この本が常に私を支えてくれました。
自衛官としての経験:規律と仲間との絆
自衛官時代、私は規律と使命感の中で働いていました。極限状況での訓練や任務を通じて、自分の限界を試される場面も多くありました。しかし、そこで私を支えてくれたのは、「この仕事には意味がある」という信念と、何よりも仲間との強い絆でした。
自衛隊では、チームで助け合いながら目標を達成する文化が根付いており、仲間たちと苦楽を共にする中で、「誰かのために頑張る」という使命感が自然と芽生えていました。困難な状況でも、仲間がいることで心のバランスを保ち、自分を奮い立たせることができました。
フランクルの「生きる意味を見出す力」という考え方は、当時の私の心の支えでもありました。たとえ厳しい環境でも、「自分の行動が誰かの役に立つ」と感じることが、希望を持つきっかけになったのです。
民間会社での苦しい経験:文化の違いと孤立感
自衛官を退職し、民間会社に就職したとき、私は新しい環境に大きなギャップを感じました。最初に戸惑ったのは、職場の文化が大きく異なることでした。自衛隊では目標が共有され、顔を合わせてコミュニケーションを重ねながら作戦を進めていくのが当たり前でしたが、民間ではそれがありませんでした。
対面コミュニケーションの希薄さ
再就職会社では、ほとんどのやり取りがチャットやメールで済まされ、対面で話し合う機会が非常に少ないのが現実でした。自衛隊では相手の表情や声のトーンを直接感じ取ることで生まれる信頼関係がありましたが、それがないため、相手の意図を汲み取ることが難しく、孤立感を覚えることが多々ありました。
情報共有の壁
さらに、情報の共有方法にも違いがありました。自衛隊では、全員が同じ目的を共有するために、必要な情報が徹底的に伝えられる文化がありました。一方で、民間では各自が自分のタスクをこなすことが優先され、チーム全体で情報を共有する習慣が希薄に感じられました。このため、「自分が何をすべきか」「どう貢献すればいいか」が見えづらく、孤独感が増していきました。
孤立感との戦い
職場での孤立感も、苦しい経験の一つでした。自衛隊時代には、共通の目標に向かってともに行動する仲間がいつもそばにいましたが、民間会社では、各自がそれぞれのタスクに集中し、チームでの一体感を感じにくい状況が多くありました。誰に相談していいかもわからない場面が続き、自分自身が職場の中で浮いているように感じることもありました。
苦しい中で支えになった「夜と霧」
そんな苦しい状況の中でも、私を支えてくれたのは「夜と霧」の教えでした。フランクルは、「人間はどのような状況でも、自分の態度を選ぶ自由がある」と説いています。この言葉を思い出すたび、私は「この環境の中で自分に何ができるのか」を考え直すことができました。
例えば、孤立感を感じたとき、自衛隊での経験を活かして、自分から積極的にコミュニケーションを取る努力をしました。相手のチャットメッセージに対して一言添えたり、メールだけではなく対面のミーティングを提案したりすることで、少しずつ周囲との距離を縮めることができました。
また、フランクルの「人は意味を見出すときに力を発揮する」という教えを胸に、どんなタスクにも自分なりの「意味」を見つけるようにしました。たとえルーティンワークでも、「この作業が誰かの役に立つ」「会社全体の目標につながる」と考えることで、前向きな気持ちを取り戻すことができたのです。
苦しみを通じて学んだこと
民間会社で働く中で苦しい経験をしたからこそ、私は新しい価値観を学ぶことができました。孤立感や文化の違いを乗り越える過程で、自分自身の柔軟性が少しずつ育まれ、また周囲に対する感謝の気持ちが芽生えました。
「夜と霧」を通じて学んだ「意味を見出す力」は、どんな状況でも私を支えてくれる大切な教えです。この本がバイブルとして私の人生に与えた影響は計り知れません。どんなに環境が変わっても、「この状況で自分が果たせる役割は何か」を考え続けることで、困難を乗り越えていくことができました。
終わりに
自衛官時代の経験と、民間会社での苦しい時期。そのどちらも、私にとってかけがえのない学びの場でした。そして、その両方で私を支えてくれたのが、「夜と霧」に書かれたフランクルの教えです。この本に出会い、その教えを心に刻むことで、私はどんな状況でも自分の足で立ち続けることができました。
「人間は意味を見出すときに力を発揮する」。これからも、この言葉を胸に、自分自身や周囲の人たちが困難を乗り越えられるような生き方を続けていきたいと思います。