図書館へ行こう! 検索を工夫してみる
図書館へ行こう!
「学校へ行こう!」的なノリのタイトルだけど、悲しいかな4月以降も突然、それも長期間大学や図書館入れないなんてことが起こり得てしまう。
さらに、昨年の大半は図書館をはじめとした大学の施設が使えなくなったものだから、大学生の論文やレポートの出来に例年以上の格差があったと聞いている。
そこでそろそろ新学期ということもあるので、大学に入学したばかりの新入生や、卒論を控えた4年生はもちろん、大学生に限らず図書館を使う人に向けて論文や資料を探す方法をここに記したいと思う。
とはいえ一から十まで書いていてはきりがないので、最低限これぐらいは知っていると不便しないだろう、というぐらいにしている。
一応司書資格は持っているけれど、図書館で働いたことはないから、どっか間違えてても許してほしい。
より詳しく、かつ正確に図書館を使いこなす方法を知りたくなったら、以下の三冊あたりが新しめで読みやすいと思う。ほかにもこの手の本はいっぱいあるから、自分好みのものがきっとあるはず。
中島玲子, 安形輝, 宮田洋輔
『スキルアップ!情報検索 : 基本と実践 新訂第2版』
日外アソシエーツ 2021
入矢玲子
『プロ司書の検索術 : 「本当に欲しかった情報」の見つけ方』
日外アソシエーツ 2020
読書猿
『独学大全 = Self-study ENCYCLOPEDIA : 絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』
ダイヤモンド社 2020
前置きが長くなったが、論文を探すことを最終目標として、まずは図書館の蔵書検索のコツから書いていこうと思う。膨大かつ玉石混交な蔵書の中から必要なものを見つけるのは難しく、奥が深いからだ。
実際に論文を探すのは後編にあたるcinii編で行う。一番下にリンクを貼っておくのでどうぞ。
OPACを使いこなそう
OPACとはOnline Public Access Catalogの頭文字をとったもので、要するにオンラインで検索できる目録のこと。
どの図書館でも使い勝手はほぼ一緒なので今回は阪大のOPACを例としていく。
自分の大学図書館や地元の図書館のOPACと見比べながら読んでみるといいかもしれない。
最低限覚えても損がないのは上記の画像における3つの色枠。
あと大事なこととして、基本的には簡易検索やキーワード検索ではなく詳細検索を使うようにした方が探す際に便利だと思う。
簡易検索は、タイトルや内容がわかっているものの、図書館のどこにあるかわからないときにサクッと調べる程度がちょうどいい。
キーワード検索以外も使ってみよう
画像の青枠をクリックしてみると分かるが、いろいろと出てくる。いくつか抜粋して紹介する。
まず「全ての項目から」について。「キーワード検索」と表記しているところもある。
例えば「夏目漱石」として検索した場合、タイトルに「夏目漱石」、著者が「夏目漱石」、出版社に「夏目漱石」、件名に「夏目漱石」を含んでいるすべての本が検索結果に表示される。結果としてとんでもない量の本が出てくる(関係のない本がヒットすることをノイズと呼ぶ)ため、網羅的に本を調べたいときには良いが、特定のものを調べたいときには向いていない。
「書名に左の語を含む」は、単に「タイトル」としているところもある。
部分一致検索なので、「夏目漱石」と検索した場合、タイトルが『〇〇夏目漱石』『夏目漱石××』といった具合いにタイトルのどこかしらに夏目漱石が含まれている本がヒットする。夏目漱石について書かれた本を網羅的に探すには良いものの、夏目漱石がタイトルに書かれていない、夏目漱石関連の本を逃しまったり、「漱石〇〇」のようなタイトルがヒットしなくなってしまうのが欠点。なおこの欠点は後述の「件名検索」である程度解消する。
「書名(完全形)は「フルタイトル」等で表記されていることもある。
完全一致検索と呼ばれるもので、先ほどとは異なり、入力した文字と一字一句違わないタイトルの本が検索されるのが特徴。ピンポイントで欲しい本があるときは便利。
最後に「件名」。イメージとしてはSNSで使われるハッシュタグに近い。
「#」を使うとより他人から見てもらいやすくなったり、特定の事柄について話題にしている人を見つけやすくなるというのは、経験的にわかると思う。
要するに、みんなが好き勝手な単語で検索するより、みんなで共通のタグを作った方が便利だよね。というのが件名なわけである。
小森陽一
『出来事としての読むこと』
東京大学出版会 1996
例えば上のような本はタイトルも著者も夏目漱石ではないが、件名に夏目漱石が付与されているため、夏目漱石関連の本だと分かるし、検索することができる。
その件名はどこでわかるの?と思うだろう。これは『基本件名標目表』というめちゃくちゃ分厚いし、使い方がわからないと読めない本に載っている。
しかし、流石にそんな本読めとは言わない。
本を検索した後にその本の詳細(これを書誌情報という)を見てみると、その本に付された件名も書かれているので、よく調べる分野の件名は都度都度覚えていくのがいい。
あとは慣れてきたら勘で件名になりそうな単語を入れてみるのもあり。
基本的に本を探すときは、「タイトル」「著者」「出版社」「件名」検索をそれぞれで検索したり、次項の「AND検索」や「OR検索」等と組み合わせるのが無難だと思う。
論理演算子を使ってみよう
論理演算子と聞くとなんだか小難しそうだが、そこまで難しくはない。
緑枠を見てもらうと分かるが、「AND検索」「OR検索」「NOT検索」の3つを指す。厳密にはもっとあるけれどOPACを使うくらいならこの3つだけで問題ない。
よくこの論理演算子を説明する際に、ベン図を使って説明がなされるので、一度調べてみるといい。ここでは実際に一冊の本を例に考えてみよう。
いま例として、次のような本があったとする。
文学 太郎 著
『夏目漱石を現代文学の視点から考える 『吾輩は猫である』論』
ゼンマイ出版 2038
夏目漱石のことを調べていて、とりあえずOPACのタイトル検索で「夏目漱石」と入力した場合、大量の「夏目漱石」の名を冠する本が結果に出てきてしまうことは前項で述べたとおりだ。
ここで「AND検索」を使ってみる。
「夏目漱石 AND 吾輩は猫である」を検索してみよう。
上の阪大OPACならば、タイトル検索を行う際に、入力できる枠の1段目に「夏目漱石」と打ち、2段目の左枠がANDになっているのを確認して2段目に「吾輩は猫である」と打てばよい。
するとタイトルに「夏目漱石」と「吾輩は猫である」の2つを同時に使用している本しか出てこなくなる。『夏目漱石研究』とか『夏目漱石と坊ちゃん』のような本は出てこないので、一気に検索結果の数が減り、特定の本を探しやすくなる。
阪大のOPACではもう一つ論理演算子が使えるので3段目の右枠を著者検索にして左枠をAND、「文学太郎」とすれば
文学太郎の書いた、タイトルに「夏目漱石」と「吾輩は猫である」が書かれた本をピンポイントで探すことができる。
次に「OR検索」について。
タイトル検索で「夏目漱石 or 現代文学」とした場合、「夏目漱石」もしくは「現代文学」と書かれた本が検索結果に表示される。
つまり、『現代文学とライトノベル』みたいな全く夏目漱石に関係ない本も「現代文学」とタイトルに書かれているのでヒットする。
これだけ聞くとノイズが増えるだけのように思えるが、表記ゆれがあるものを探すときに便利。
よく例に挙がるのが「アラビアンナイト」と「千夜一夜物語」だったり、「コンピュータ」と「コンピューター」とか、「兼好法師」と「吉田兼好」みたいなものだ。これらのような同じ文脈でつかわれていながら、表記が異なるものを探すときに使ったりする。
最後に「NOT検索」について。
例えばタイトル検索で「夏目漱石 NOT 現代文学」とした場合、タイトルに「夏目漱石」と書かれている本の中から、「現代文学」をタイトルに含まない本が検索される。
つまりNOTの後ろが検索対象から外れるのが「NOT検索」である。
タイトル検索と出版社検索を組み合わせて「夏目漱石 NOT ゼンマイ出版」のように検索を行うこともできる。
既に調べてしまっただとか、あんまり役に立たなかったとかというときに、特定の出版社や著者を検索結果から外せて便利なので覚えておくと捗る。
この論理演算子は、少し複雑になるが、AND検索とNOT検索を両立させたり、Google検索やSNSの検索画面でも使うことができるので、気になる人は調べて見よう。
分類を活用してみよう
赤枠の「分類」というのは「NDC」と呼ばれる日本にあるほぼすべての図書館で採用されている、本を分類するときに使う数字のことを言う。
OPACのシステムによっては、実際に数字を打ち込む場合や、阪大のOPACのように、系統樹で選択できるようになったりしている。
この世にあるすべての本を分類するために作られたものだから、ちゃんと勉強するとこれまた分厚い本を参照しないといけないが、3桁位なら図書館に表が貼ってあったりするのでルールが分からずとも覚えてしまうのが便利。
それに件名と同じく都度都度覚えていくのが都合がいいと思う。
例えば、「400」は自然科学を表していて、「440」は天文学「446」は月について書かれている本を指していて、桁数が増えるごとに細分化されていく。
3桁~4桁くらいまででいいので覚えておくと、どこの図書館に行ってもその数字の棚には、その分野の本があるのでとっても便利だし、OPACで検索するときも、分野ごと網羅的な検索に役立つ。
結局のところ……
身もふたもないが何か調べ物をしている時は、図書館の職員に相談してみるのが一番手っ取り早い。なんでも答えてくれるし、そのために彼らはそこにいるのだから。
とはいえ自分で調べられた方が何かと都合がいいことは確かだと思う。
終わり
これで前編のOPAC編は終わり。後編はcinii等を使って実際に論文を探していく。