アニメ虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会新作OVA『NEXT SKY』視聴後メモ

 アニメ虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会新作OVA『NEXT SKY』を見ました……

 正確には上映開始日の昨日の夜に、舞台挨拶LVとともに見て、夜中までフォロワーとのTwitterスペース談義を三時間くらいやって寝て起きて「あんな劇場版を見たのだから少しは活動的にならないとだよな」と奮起して丁寧なお昼ごはんを作って、今です。スペースで思いの丈を吐き出せはしたものの一応メモしておかないとね。
 お話に付き合ってくださったフォロワー様方の鋭い見解も取り込みつつ、一回目の視聴で思いついたことを自分用にまとめておきます。書いてみたら、各キャラクターの要素の話よりも作品の立ち位置的な話が増えてしまったが、よろしければお付き合いください。

※以下、ネタバレあり。

★シンプル感想編
 めちゃくちゃ良かった……もともとスタッフのことは信頼しているので不安には思っていなかったが、本当にちゃんと30分で離陸も着陸もさせてくれるとは恐れ入る。田中仁、愛してる。脚本教室とかやってたら通いたい。
 そしてこの話が、きっちりコンセプト的にアニガサキ2期から続いている位置づけだったのが本当に良かったですね。演出とかビジュアル面での感動はさすがに予算の多い他作品のアニメーションには及ばないが、「コンテンツの中の一作品として独立させずに、地続きの作品として世界観や物語をひたすら拡張する」という物の作り方を徹底しているのがファンとして嬉しい。あのPVを見てこう来るとは思わないじゃん。普通に留学生とよろしくやる感じかと思うじゃん。無印劇場版を思い出す予告編ミスリードだった。

 しかし、2期で取りこぼした話(主に栞子ちゃんの活躍の場や留学から帰ってからの歩夢の振る舞いなど)やコンテンツとして曖昧にしていた話(お台場の外に存在する彼女たち)をひたすら30分に詰め込んだ話を、わざわざ映画館を借りて提供するというのも大胆な話で、普通だったら色気出して新要素を投入したり起伏の激しいキャラの絡みを挿入するところだと思う。それをやらない脚本の田中仁はもう本当に真面目すぎる。義理堅すぎる。その真面目さが好きなんだけど、それで損していることもあるんじゃない? と心配になります。

 そして劇場版三部作ありがとう。もうほんとありがとう。LVで発表見てたんですが、OVAによってもう本当に取りこぼしらしい取りこぼしがない完成品に限りなく近づいていたので、ここがピリオドかなと覚悟していた矢先の発表。嬉しすぎる。これからの挑戦を楽しみにしています。

★栞子ちゃんとアイラちゃんの解決
 今回のOVAで最も活躍していたキャラクターが三船栞子ちゃんであったことに異論はないでしょう。不器用な堅物らしいところのあった彼女が周囲と打ち解けていき、自分の伝えたいことを伝えるために自分を縛るものから解放されていくまでの物語と言ってもいいほどの活躍でした。
 にじよんアニメーションで彼女は、侑ちゃんと同じく夢を追いかけている人を応援したいという目標の話をしていましたが、尺の都合などもあってアニガサキ2期ではその辺りの描写が控えめでした。本編ではどちらかというと他のメンバーに背中を押されて踏み出す立場のキャラクター。それは当然作り手側も感じていたということで、まさかのOVAで彼女が背中を押す側に回ったエピソードを補完。義理堅すぎるぞ田中仁。しかもライブ会場はあえての原点回帰。
 余談ですがお台場でのライブシーンはせつ菜ちゃんとの対比も面白いですよね。終わった後で「見つかる前に退散しましょう」と優木せつ菜でいるうちはあくまで自由に振る舞う前会長と「みんなで反省文を書きましょう」と規則そのものを否定することはしない新会長、とか。このあたりの解釈は個人でいくらでも楽しめますね。

 さて、そんな訳で栞子ちゃんがアニガサキに特有の魅力はそのままに見事に一皮むけたお話でしたが、彼女の成長のきっかけとなったのがアイラちゃんでした。
 侑ちゃんがもはやスクールアイドルと同じ、「誰かを応援する力を持った個人」に成って久しいですが、その所為で同好会の内部にはもう「夢半ばの人」がいないんですよね(むしろOVAでは侑ちゃんが驚くほど特別扱いされなくてビビった)。
 だから彼女たちのスクールアイドルとしての本領を発揮するためにはそういう人を外部から引っ張ってくる必要がある。そうして巨大なクラッカーによって歓迎されたのがアイラちゃんでした。無事彼女の課題も解決できて良かった。
 それにしても歩夢の留学とその間にできたお友達という、ストーリー的には非常に美味しい要素をばっさりカットしてアイラちゃんを栞子ちゃんに接続する作劇の仕方はつくづくブレないなと思う。普通遊びたくなるところだぜそこは。

★前半パートとエンディングにおける虹ヶ咲の実在性
 今作の前半ではスクールアイドル名所の観光案内という体で同好会メンバーがアイラちゃんとともに秋葉原や原宿を巡り、沼津や金沢の土産を物色するシーンが存在しましたが、ここ正直びっくりしたんですよ。しませんでした?
 基本的に有明〜お台場近辺でほぼ完結していた同好会は、鎌倉とか東京ドームには行っていたものの、他作品との関連については背景などから匂わせる程度で、他のグループのホームグラウンドにまで踏み込むとは思っていなかった。この一連のシーンによってこれまでプロジェクトラブライブにおける外伝的な立ち位置だった虹ヶ咲が、急に本編の世界観の中に取り込まれたと言うか、どの作品も地続きであるということが保証されたのを感じる。昨今はグループごとに棲み分けされていることが多いラブライブシリーズとしては珍しい。
 そして自分にとってこのあたりのシーンはかなり意義があります。なぜなら「一斉を風靡した複数のスクールアイドルグループが、時系列的にはともかく空間的には同一世界に存在している状態」は現実を反映した状態そのものだからです。クロスオーバーはされなくても、ドラマを作り上げたスクールアイドルの手触りをあの世界では感じることができる。それはあるラブライブシリーズのグループを追いかけながら、そこに隣接した他グループの活動のことを知ったり、興味を持って流れていくあの感覚に似ている。
 2.5次元の醍醐味である現実とのリンクを、土地やグッズなどの物理的なものだけではなくて「ファンが日常的に感じうる心理状態」をシンクロさせて繋げたように感じられて、その塩梅が凄い面白いと思ったんですよね。秋葉原散策パートを見て自分でも不思議なくらい驚いた理由はそれではないかと。メイド喫茶あたりのノリを見てシンプルに懐かしい気分になったというのもあるけどな!
 もちろんそういった抽象的な部分だけでなくて、お台場に関しては最初のカットに始まりエンディングの実写パートまで、丁寧に彼女たちの実在性を補強してくれて感謝しかない。林鼓子さんも仰っていましたけどエンディングでせつ菜ちゃんと栞子ちゃんが二人並んで座っている台場公園道中のベンチのカットが尊いのなんの。

★アニガサキは誰の方を向いているのか
 最初の感想で書いた、「コンセプト的にアニガサキ2期から続いている」という部分について少し掘り下げると、OVAもまた『頑張る誰かを応援する話』なんですよね。1期で新しい道を見つけた侑ちゃんに始まって、2期では新たなメンバーを巻き込みながら新しいことに踏み出すあなたを応援する。そしてOVAではアイラちゃんの背中を押すとともに、エンドロールにファンからの頑張ったこと報告まで掲載して、頑張っている人たちに対して「私達は味方だよ」と絶えず訴えかけている。

 2期から明確に「あなたを応援する」というメッセージ性を取り込み始めたアニガサキですが、このメタメッセージは逆に言えば「作品を楽しむだけではなくて君たちは現実に戻らなければいけない」という、ある種の耳痛を伴うお説教であり、取り扱いを誤ると作品を楽しみに来ている人たちからすれば冷めてしまう恐れもある(それで失敗した作品もたくさんある)。にもかかわらず、ここを曖昧にせずに真正面から描いているところがやはり凄いというか、義理堅いというか。
 アニガサキを作っている人たちは、恐らく自分たちの作品を見て「深く感動してほしい」とか「出来栄えで圧倒したい」「自分たちの込めた思いに共感してほしい」とはそこまで考えていなくて、ただ「あなたたちにも同じように頑張って欲しい」という、シンプルだけれど尊い連鎖を望んでいる。大袈裟な言い方をすれば現実への活力を与えることで世の中を少しずつよくしようとしているという熱意を感じるわけです。もちろん、ただそれだけという言い方はできませんが、エンドロールであれだけたくさんの人がアニガサキから力をもらっていることが知れるのはやはり嬉しいし、作品が持つパワーの凄さを実感するわけです。できることならみんな幸せになって欲しいに決まっているじゃない。
 だから、1期の頃はさておいて、アニガサキという作品は現実を頑張れる人、頑張ろうとしている人にこそ刺さるものであると思うし、今後もそれは変わることは無いのではないかなと思います。
 ……いや、どうだろう。もうアニメのやり残しとか全部片付いたから、今後の劇場版では外伝として好き勝手してもらって全然構わないとも思うな。ここまで頑張ってくれたんだから、あとの三作品は全部ボーナスステージとしてワイルドスクリーンバロック調の派手演出アニメでもいいよ。オタク的にはそういうのも是非見たい。ごめんね正直で。
 今後のことはさておき、OVAでも今までのアニガサキを貫き、世の中を良くしようとしてくれている制作スタッフの皆様に、最大限の敬意を。
 しかし敬意を示すためには、僕も少しは何か頑張らないと彼女たちに申し訳が立たないから大変ですね。これは何度か言っているんですが、アニガサキは決して全ての人間を救おうとしているわけではない。救いの手を取る意志のある人だけを救おうとしている、なかなか残酷な側面を持った作品だと思いますよ。

★その他、これだけは言いたいことなど
 眼鏡メイド宮下愛

★終わりに
 読んでいただきありがとうございました。
 ここが可愛かった、などの細かなお楽しみポイントや、自分なりの関係性のアップデートはあくまで自分にとっての楽しみなのでこれからじっくり堪能していくこととします。どの子も可愛くて大変幸せ。まずは劇場で売り切れていたブルーレイをどこかで入手しなければ……
 ということで現実に戻ります。レインボーブリッジの上でまた会いましょう。

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