初見の人にもそうじゃない人にも、RTA in Japan 2021 Summerのオススメを10本紹介する
お盆休み。帰省もできず、息苦しい日々に参ってしまい、生産的な趣味や勉強も捗らない日が続く。日々のストレスは溜まっていく一方で、環境を変えようとしてもおいそれと外出はできないし、人と対面で話すのは難しい。堂々巡りだ。
で、今年の8/11~8/15に開催されていたRTA in Japan(以下RiJ)を5日間かじりつきで見たということなんですねえ。
こんなに時間を浪費する暇な社会人が日本にいるのかと若干自分に驚いたが、好きなものは好きなんだ。後悔はしていない。これで僕はもう二度と五輪や甲子園を昼間から見るおじさん達のことを馬鹿にできないぞ。
ちなみに昨年末のおすすめはこちら。RTAやRTA in Japanについての説明もしていますのでご存じない方はどうぞ。
いやしかし今年のRiJも面白かった! 特に今年は単純なRTAだけでなく、スコアアタックなどのスーパープレイや並走イベントが多く、解説も多くの方が入念に準備してくださったおかげでどのタイトルも面白く大満足だった。その甲斐もあってか、瞬間同時接続者数はなんと18万人を突破した。
スポンサー企業も増えたし、ステイホームの時流もあって、RiJは単なる一つのチャリティイベントを超えた、ゲームのお祭りイベントとして夏と冬に欠かせない存在となりつつあると思う。これからイベントの維持のために外向けの活動を考えなければならない時もあるだろう。
けれども僕が何より好きなのは、今まで知らなかった名もなき走者達が思い思いに、自分のスタイルで楽しく、しかし真剣にゲームしている姿を見ることだ。名作だろうとクソゲーだろうと、ガチのタイムアタックだろうと放送事故だろうと、ただ愛のままにゲームをやり込んで欲しい。今回はイベントの規模が大きくなって宣伝も力が入った丁寧な作りになったけれど、ゲーマーの一番尊い姿は損なわれていなかったし、相変わらず「配信者ではなくゲームが主役」の姿勢は一貫していて嬉しかった。
だから僕としても、RiJ2021の面白かったゲームタイトルを力説させていただくしかあるまい。
ということで偏見のもと、本イベントでオススメしたいタイトルを10本に絞りました(流石に不眠不休で76本全てのRTAを鑑賞したわけではありませんが、アーカイブでとりあえず全部目は通しています)。選出基準は私自身のゲーム体験に基づいておりますのであらかじめご了承ください。できることなら全部見て、あなただけのお気に入りのゲームを見つけて欲しい。
①リングフィットアドベンチャー Beat World1 Intensity Level 30, Intended
ぶっちぎりの視聴者数を記録した伝説の17分。
いきなり変わり種と言わざるを得ないが、このRTAなくしてRiJ2021を語ることは出来ない、それくらいの話題を巻き起こしていた。4日前からTwitterのトレンド入りをしていた本RTAは、全世界で1000万本以上売れたフィットネスゲーム、リングフィットアドベンチャーのワールド1を、最大負荷で、ズルなしでクリアするというもの。通常のRTAのようなバグ技もなにもないため、純粋な肉体のみでの勝負となる。タンクトップにショートパンツという出で立ちでカメラに現れ、ゲームスタートとともに躍動する筋骨隆々の走者は見ていて圧巻の一言。「筋トレをしている人間とそうでない人間にはここまでの違いがあるのか」と絶句せざるを得ないほど見事なゲームプレーを拝めます。一朝一夕では決して身につかない努力に、人は感動するのではないでしょうか。
更に実況には元プロのアナウンサーが担当し、解説プレイヤーの筋肉称賛コメントもキレにキレている。17分間、一切目を逸らすことができない感動のタイムアタックです。
ちなみに、肉体強化だけでなく、経験値の調整やBest判定のギリギリを攻めるスキルなど、しっかりゲームとしてもRTA技術を磨いているのが楽しい所。掛け値なしに誰でも楽しめるRTAだと思います。
②SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE Shura Glitchless
シンプルにゲームが上手い。それだけで魅せてくれる。
フロム・ソフトウェアの名作ゲームの一つ、SEKIROに真っ向から挑んだRTA。流麗なプレイングと、未プレイにも分かりやすいように見どころで盛り上げてくれる解説。更にはお決まりのネタで盛り上がる視聴者のチャット欄まで、どこをとっても飽きることのないハイレベルなRTAだ。
この手の人気ゲームは走者が多いため、世界ランカーはこぞって人間をやめている。しかも今回のレギュレーションがGlitchless(バグを利用したショートカット禁止)ということもあり、かつてプレイヤーを苦しめてきたボスキャラ達との戦いは全て低レベル状態でのガチンコ。そして生配信であるため失敗は許されない。緊張感の中で華麗に敵をなぎ倒していくプレイはゲーム好きであれば誰でも凄さが分かるであろう必見のRTAでした。仮に隻狼のスーパープレイや参考動画を既に見たことがあったとしても楽しめるでしょう。
③ギャラクティックストーム NORMAL(基板)-隠しコマンド無しノーコンティニュークリア
うん、だから、何があなたをそこまでさせるの?
最高。本当に最高。個人的な好みで言えば一番好きかも知れない。
ギャラクティックストームは1991年にTAITOから出たアーケードゲーム。このゲームを走るかわいいライオスさんは、知っている人は知っている、昨年のRiJでその強烈な個性を視聴者に印象づけた人です。
昨年、この方は格ゲー歴史上一番強いと囁かれているカイザーナックルのジェネラルを瞬殺しました。そして今回はRTAではなくスーパープレイとして、このシューティングゲームのノーコンティニュークリアを目指します。
そう、ノーコンティニュークリア=スーパープレイ。ギャラクティックストームもまた、異常に難しく、その割に先のSEKIROのような高難易度ゆえの人気などを特に持たないアーケードゲームです(というかこのRTAをしている人が一人しかいない)。そもそも令和の時代にこのゲームが置いてあるゲームセンターがない。本人曰く、筐体の基板は15万円で購入しており、もはや売り手は自分しかいないので現在の価格は時価になるのだとか。
→(追記)Twitterで有識者の方から頂いた情報によると、ギャラクティックストームの純正筐体は大阪のレトロゲーセン、超ザリガニに1台だけ存在するとのことです。
恐ろしいのは、走者はただの話題作りのためにこのようなマニアックなRTAをしているのでは断じて無いこと。この人の投稿している動画を見れば分かるが、カイザーナックルだけで何百、何千の試行回数を重ねてひたすらタイムを縮める努力をしている。こんなに難しく、プレイ人口も壊滅的なのにRTAをやめないのは、全てはゲームへの深い愛ゆえにだろう。だからゲームに関するトークも興味深いし、プレイにも熱が入る。
一体、ギャラクティックストームやカイザーナックルの何がそこまで彼の琴線に触れるのか。それは彼にしか分からない。けれど、彼にしか見えない景色を見ているその姿は美しく、それ故に僕はこのRTAが大好きなのである。
④ときめきメモリアル 藤崎詩織エンディング
リアルタイムアタックの視点がよく分かる抱腹絶倒の恋愛シミュレーション。
RTAされるゲームはアクションゲームやシューティングなどの、超絶技巧を問うゲームだけではありません。恋愛シミュレーションゲームだってちゃんとRTAの対象です。
三年間の高校生活を終えてメインヒロインである藤崎詩織に告白されるエンディングをできるだけ早く見る、というのがこのRTAの目的となるので、逆に言えばエンディングに不要なイベントは時間の無駄として全て回避していくことになる。結果どうなるかというと、主人公は寸暇を惜しんで寝てばかり(ステータスが高くなると他の女友達が増えてタイムロスなので)、一年目は藤崎詩織をわざとキレさせ(早い段階で好意を持たれると誕生日やバレンタインのイベントが発生してしまいタイムロスなので)、デートスポットは全て近所の公園(デートが長引くと以下略)……
まさにクズ男。でも最後には条件を満たして無事告白される。なんでやねん。
ある意味、RTAで最も重要なのは操作技量よりもチャート構築だ。タイム短縮するための行動の順番や、バグ技に関する知識を常に仕入れてアップデートし、この積み重ねでゲームの記録を塗り替えていく。ときメモのRTAは、早くクリアするという目的意識のもとで組まれたチャートが通常プレイの遊び方とは全く違う様相を呈していてめちゃくちゃ面白かった。
「ルールがシンプルな分、その最適な達成方法はゲームの中を探求して見つけなければならない」というのがRTAの特徴であり、そのゲームへの飽くなき探究心が発揮されている点が、僕がRTAを愛している理由でもあるのです。
⑤バイオハザード4 New Game Professional
一秒たりとも目が離せない通しプレイの熾烈な争い。
バイオハザードシリーズの中でも人気の高いバイオハザード4。RTAも盛んで、RiJでは世界ランカー三名が同時にゲームスタートしてタイムを競う並走形式を取っていた。ちなみに解説もランカー。みんな過去の試行回数は万単位だ。
この並走がとにかく熱い! 1時間30分ほどぶっ通しでやるにも関わらず、抜きつ抜かれつで差が全然開かない。全員がこのゲームを突き詰めてきているので差がつくとしたらたまに出てくしまうプレイミスか、乱数の悪戯か、あるいは秒単位の細かな操作精度の積み重ねか。
解説者のトークも巧みで、注目すべきところを逃さず語ってくれるので、本当に長距離走でも見ているかのような静かな白熱があった。ところどころで披露されるシュールなバグ技も魅力です。
⑥ソニックアドベンチャー2 Hero Story-New Game, 片手プレイ
ゲームが芸術であるように、ゲームプレイも芸術だ。
RiJ2021のタイムスケジュールが発表された時、真っ先に目を引かれたのがこれ。片手プレイって何……? 何でそんなことを……? しかもハイスピードなアクションゲームで……?
走者のRTAはRiJ本番前のイベントで見る機会があったのだけれど、幼少期の病気で左手が動かせず、そのため片手プレイでRTAを走ることにしたという。
実際のプレイを見ると、片手とは思えないスムーズな操作で、バグ技や床抜けを駆使した見事なRTAだった。プレイ画面と手元を交互に見るがやっぱり何が起こっているか分からない。
もともとRTA映えするゲームということもあり、上手な解説も相まって見どころが非常に多い。反射神経や手さばきなどを突き詰めた人間のゲームプレイは一種の芸術のように僕は見てしまうが、このプレイもまた芸術的で美しかった。
⑦桃太郎電鉄~昭和 平成 令和も定番!~ Get Momotaro Land
最新ゲームへの愛に、イベントの意識が加わったプレイ&トーク。
2020年秋に発売された桃鉄シリーズの最新作。本作のRTAがスタートしたのは発売日の10分後。それから一年もたたずに、10兆円稼いで桃太郎ランドを購入するRTAは2時間半まで縮められた。そのチャートは土地転がしからうんちカードの無限利用、チートキャラ石田三成のサポートなど見ごたえあるテクニックが目白押し。
知っての通り桃鉄はパーティーゲームであり、ワンサイドになりすぎないようにランダムイベントが多数実装されている。そのようなイベントをチャートで可能な限り抑え込みつつ、アドリブで臨機応変に対応するのがこのRTAの見どころの一つだ。所持金と照らし合わせて行き先と買う物件を決める、CPUが予想外の動きをしないか保険をかける、どうにもならないイベントは起きないように祈る。それら全てを逐一説明してくれるので、聞けば聞くほどこのゲームのRTAが持つ奥深さがわかって面白い。桃鉄ってひょっとして実力を問うゲームなのでは……?
走者の方はプレイに関してだけでなく、桃鉄の歴史やRTAの歴史、スポンサーの紹介にも余念がない。トークが得意なゲームプレイヤーというのを僕はそんなに知らないけれど、この人はかなり洗練されていた。
⑧ビューティフルジョー Any% Kids
知ってても知らなくても分かるプレイの凄さと爽快感。
個人的に思い出深いゲームというのもあって、スケジュールが出た時から期待していたタイトル。このくらいのタイトルになると既に動画でRTAを見ていたりするのだけれど、やはり本番一発勝負には特別な緊張感がある。
VジョーはとにかくRTA配信の見栄えがいいゲームだ。ゲームスピードに緩急がつくスキルを駆使し、超火力技で敵を目にも留まらぬ速さで屠っていく様はゲームをやったことがあってもなくても見ていて爽快。しかしこのゲームかなり難しいはずなんだけどな。
また、走者の方は話が面白く、2019年のモンキーボールRTA以降個人的に推しているプレイヤーでもあります。というかシンプルにゲームがお上手。
⑨ケモノヒーローズ Any% Beat the Game - Hard
ゲーム愛にあふれるからこその世界一位。
先のビューティフルジョーと同じくスピーディなアクションがかっこいいゲーム。こちらのタイトルは完全に初見だったのだけれど、世界一位の記録を持つ走者のプレイングは、このゲームの面白さを端的に伝えてくれた。乱数調整やロードバグ回避などのちょっと突っ込みどころがあるテクニックもアクセントとなっていて面白い。
ある意味模範的なRTAだったと思う。というか、僕にとってRTAイベントで一番楽しいのはこういう知らないゲームの楽しさ、美しさを感じ取れる瞬間かもしれない。うまくなるとこんなにスタイリッシュなプレイができるよ、というメッセージはいつだってまだ見慣れないゲームへのモチベーションを高めてくれる。
⑩デスクリムゾン Any%(サターンパッド使用)
せっかくだから、俺はこの赤の扉を選ぶぜ!
伝説のクソゲーとまで呼ばれているデスクリムゾンのRTA。もうこれだけで面白いだろ。なんでやろうと思った?
しかし走者は正真正銘デスクリムゾンのガチ勢。作り込みが甘すぎて超絶難易度となってしまっているデスクリムゾンに仕掛けられたバグの罠をかいくぐり、至極真っ当に最速のゲームクリアを目指す。
その生い立ちから色々と逸話の多いデスクリムゾンだが、本作に関する数々のエピソードもプレイ中にしっかり解説される。デスクリムゾンに2があるって知ってましたか? ノベライズされているという話は? アレンジサントラが2018年に出たけど知ってる? 一つ一つが腹抱えて笑うようなエピソードで、最初から最後まで理不尽なコメディを見ているような気分だった。
我々はどうしてクソゲーを愛してしまうのだろうね。
以上、10本でした。その他、色んな人にオススメしたいタイトルも羅列しておきます。
・ポケットモンスター ソード&シールド
・ペプシマン
・野生動物運動会
・ASTRO'S PLAYROOM
・DanceDanceRevolution SuperNOVA
・CUPHEAD
・メジャーWii パーフェクトクローザー
・ポケパークWii ~ピカチュウの大冒険~
・新・北海道4000km
・クラッシュバンディクー4 とんでもマルチバース
・星のカービィ スターアライズ
・Golf It!
・デススマイルズ
・東方紅輝心
本当はこれらのタイトルや、面白いけど好みが分かれそうなタイトルにも一つ一つコメントしたいのだけれど、とりあえず今日はここまで。次回も楽しみだー。