【本】C. ファデル、M. ビアリック、B. トリリング『21世紀の学習者と教育の4つの次元』→これから何がどう教えられるべきかのビジョンを与えてくれる
2017年3月30日
木曜日はお勧めの本を紹介しています。
■要約
21世紀の子どもたちが学ぶべきものは次の4つである。
・知識 (knowledge):何を知り、何を理解しているか
・スキル (skills):知識をどのように使うか【創造性、批判的思考、コミュニケーション、協働】
・人間性 (character):どのようにふるまい、世界とどのように関わるか【動機づけ、レジリエンス、社会・情動的知性、シチズンシップ】
・メタ学習 (meta-learning):どのように自分自身を振り返るか、自らの目標に向け学びや成長を続けようとするか【自律性、省察性、学び方を学ぶ】
■ポイント
21世紀の教育は「スキル、人間性、メタ学習」こそが中心に置かれるべきではあるけれども、「教育の惰性」つまり、伝統的な教科・学問分野が自ら維持しようとする力が働くため、「スキル、人間性、メタ学習」のための時間はほとんど残されていない。
そこで各教科領域の中でできることは、教科を横断し、一生使い続けるような大切な概念(メタ概念、ビッグアイデア、エッセンシャルクエスチョン)に重心を置くことである。たとえば数学におけるメタ概念とは「変化率」や「証明」であり、これらの概念は分野を超えて使われる概念となる。
加えて各教科領域には3つの側面の価値がある。
・実用的側面 (practical):教科の内容が日常生活や将来の仕事のために使えること
・認知的側面 (cognitive):教科を学ぶことで批判的思考、創造性、人間性の発達を高められること
・情緒的側面 (emotional):それぞれの教科は固有の美しさを持っていること
人間性特徴(character qualities)は、固定的で不変な特性(trait)ではなく、学習可能、育成可能なものであることを示している。それは、練習することで獲得し、磨くことができる。だから教育目標として位置付けられる。人間性には、態度、ふるまい、マインドセット、パーソナリティ、価値、信念、社会・情動的スキル、非認知的スキルの全てを包含する。またその主な特徴は、マインドフルネス、好奇心、勇気、レジリエンス、倫理、リーダーシップといった枠組みとして表現できる。
■お勧めのポイント
21世紀に生きる人々が何を身につけるべきかということについて、包括的で詳細なビジョンを与えてくれる本です。教育に関心のある人はこの本をまずスタートとして参照するのがいいでしょう。
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