【アドラー心理学の理論】#22 共同体感覚:アドラー心理学は「思想/理論/技法」の3階層からなる。
月曜日はアドラー心理学のトピックで書いています。
4月12日(木)から早稲田大学エクステンションセンター中野校で「アドラー心理学入門」(全8回)が開講しました。この連載では、講座の内容を同時並行でお伝えしていこうと思います。講座に参加できない方にも、その雰囲気が伝わればいいなと思っています。
この連載もいよいよ終わりに近づいてきました。最後は、共同体感覚について取り上げましょう。
アドラー心理学は、「思想/理論/技法」という3階層からなっています。
まず、真ん中の理論の階層は、この連載で取り上げてきた「5つの基本前提」です。それは、目的論/全体論/仮想論/社会統合論/個人の主体性の5つからなっています。この5つの順番は任意です。研究者によって取り上げる順番や重みづけも異なっています。
次に、技法の階層は、ライフスタイル分析や勇気づけの方法、タテの関係・ヨコの関係、課題の分離と共同の課題といったような、具体的で実践的な方法の集合からなっています。これらの技法は、他の流派との折衷であることも可能です。また、アドラー心理学の理論に基づいて独自に開発することもできます。
たとえば、アドラー心理学に基づく子育てプログラムであるSMILEやPassageでは「IメッセージとYouメッセージ」という技法が紹介されています。相手に向かって「あなたは……だ(Youメッセージ)」というと相手が子どもでも大人であっても、決めつけられた感じがして、反発するかあるいは悲しくなるでしょう。それが原因であなたと相手の関係性が悪くなることもあるでしょう。それに対して「私は……だと思う(Iメッセージ)」といえば、それは私の意見や感想ですので、相手に反論の余地を与えますし、そのために相手は自分が尊重された感じを持つでしょう。
しかし、これはアドラーが発案したものでもなく、また、アドラーの弟子たちのアイデアでもありません。私が調べた限りでは「Iメッセージ」の起源は、1960年代Thomas GordonのPET (Parent Effectiveness Training) からです。
ゴードンが発案者だとしても、その技法をアドラー心理学の文脈で使うのであれば、問題はないでしょう。アドラー心理学の文脈とは、親子であっても、先生と生徒の関係であっても人として対等であり、互いに尊敬し合わなければならないということです。「あなたは……だ」と決めつけるのではなく「私は……と思う」と自分の意見を表明することによってお互いが対等であることが明示的になります。そのような文脈で使うのであればOKだということです。
さて、最後に思想の階層があります。アドラー心理学では、ここに「共同体感覚」が入ります。共同体感覚については次回説明することにしましょう。
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