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【質問】ファシリテーションを学びたいのですが

水曜日はいただいた質問を取り上げて回答しています。

2025年1月22日(水)

質問

ファシリテーションを学びたいのですが、オススメの団体などはありますか? 日本ファシリテーション協会というところが研修を主催しているようなのですが

回答

ファシリテーションについては、中野民夫『学び合う場のつくり方』(岩波書店, 2017)をまず読むのがお勧めです。次の記事で紹介しました。

さて、私は日本ファシリテーション協会(FAJ)が開催したファシリテーションフォーラムに参加したことがあります。2010年と随分前のことになります。その頃、ファシリテーションに強い関心があったためです。

その時のことを書いたブログがありますのでちょっと長いのですけれども再録します。これはあくまでも当時の感想ですので、現在のファシリテーションフォーラムはそれから変わっていると思われます。あくまでもご参考ということでお読みください。

ファシリテーションフォーラム2010

ファシリテーションフォーラム2010(ポートメッセなごや)に参加してきました(https://www.faj.or.jp/). ファシリテーションのプロが運営するワークショップを体験するのが目的です. この大会は,NPO日本ファシリテーション協会が主催で,年一回開かれます(来年は北海道) .

29,30日と二日間にわたって開かれましたが,私は,30日だけの参加. 参加費は非会員で,4000円でした.

セッションは並行でいくつか開かれ,朝一で,希望のセッションに自分の名前を書いた付箋を貼るという方式で,振り分け. 私は,南山大の津村さんのセッション(2時間)を選択. テーマは,「プロセスから学ぶファシリテーション」.

話は,レヴィンから始まり,レクチャーが続き, 「ああ,このまま行くのか.なんかワークやってほしい」と思ったら, 「周りの人と話してみましょう」と.しかし,10分足らず.

再びレクチャーが続き,質問時間は最後の5分ほど. これには私のみならず,参加者も不満だったようす.

それでも,ファシリテーションの歴史的な流れは整理できた.

  • レヴィンから始まる,グループのプロセス研究

  • 個人,グループの変化と成長を促進する

  • ロジャースの「受容」

  • Here, Nowでの「体験」

  • Kolbの経験学習

  • Knowlsのアンドラゴジー

こんなところかな.

質問は,中野民夫さんが「ファシリテーターのトレーニングはどうしているか」と.彼の口から「マインドフルネス」というキーワードが出てきたのが新鮮だった.

堀公俊さんのファシリテーショングラフィック

午後のセッションは,堀公俊さんのファシリテーショングラフィック. 『ファシリテーション・グラフィック』は読んでいたけど,ご本人のワークなので,興味津々.

「傾聴と簡単に言うけれども,それを書いてあげること. そうすると議論が盛り上がる. それがファシリテーショングラフィックの意味. だから,一家に一台ホワイトボード!」

自分の家族のことを話題に挙げながら,軽快に進めていく.

ペアワークで「自分のちょっと困ったことを話してみて」. 相手はA3の紙に書いていく. 5分語り,3分振り返り.交代でもう一回. 絵で描くのか,文章で書くのかは,相手を見て決める. スピードが大切.相手を待たせてはいけない.

次のワーク.フレームを決めると話が進みやすい.

  • KPTフレーム(Keep, Problem, Try).

  • 締切から逆算する,タイムマシンフレーム.

  • 解決指向フレーム

    • 「どうありたいか→今何をしているか→さらに何ができるか→明日から何をするか」.

    • 「何があった?(事実)→どう思った?(反応)→大切なことは?(価値)→で,どうする?(行動)」

ただ,「傾聴しよう」というのでなく,描いて,それを共有することで,対話プロセスを進めていくこと.

中野民夫さんの全体ワーク

最後は,岩波新書『ワークショップ』の中野民夫さんの全体ワーク. 300人.この人数をどう回すのかが興味の焦点.

冒頭, 「ワールドカフェをやろうかという話もあったけど, まとめにはふさわしくないと判断した」 と.正解.

私のツイートから進行を追う.

  • 落ち着いた語り口.「瞑想」とは言わないが,その導入.ここまでの興奮を冷ますということに注力している.

  • 意外にも一人の時間を大切にしている.語りと静寂のダイナミズムが素晴らしい.

  • 続いてダイアローグ.素直に語り,素直に聞く.常に開いている.

  • 5人組で15分.席替えをして,「大切な問い」について.大きな問いを出してあえて混乱させる.

  • 最後はハーベスト.全員が輪になる.感想をシェアする.

  • 壁を向いて,帰ったとき,自分の現場で何をするかを内省.こういうちょっとした作業が大切.

  • 最後は,3分間全員が思い思いの声を出す.体を使って終わる.3分間は意外と長い.この長さが,体験の深さを導く.

すばらしいワーク(運営という視点でね). もちろん,参加者の2/3がFAJ会員であることも一因. だって,その大部分がファシリテーターを指向しているのだからね. 逆に,盛り上がらなければおかしい.

参加したゼミ生の間には,

  • あやしげ(セッションの区切りにチベットの鈴?を鳴らしたり)

  • 宗教的(3分だけど瞑想をさせたり,みんなで声を出したり)

  • 自己実現セミナーみたい(最後に感想をシェアするところとか)

という意見があったけど, それは当然.私自身この雰囲気を懐かしんでいたかもしれない.

『ワークショップ』を読めばわかるけど,これはスピリチュアリティ満載. 著者自身,トランスパーソナル心理学の人たちと親交があると書いている.

むしろ納得したのは, このようなファシリテーションやワークショップ,あるいは,広くポジティブサイコロジーや マインドフルネス心理療法.これらのような新しい形で,この思想が生き延びているということだ.


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