2-教える技術ヘッダ

Nothing Ballを出さない。美しく意味のあるラリーの始まり。

火曜日は「教えること/研究すること」のトピックで書いています。

過去3回はテニスコーチの教え方について取り上げてきました。具体的には以下のようなことを書いてきました。

01 お金を払えば自分の自由にして良いという考え方の人は、コーチや先生につくべきではありません。
02 手出しボールで打つ。シナリオで打つ。ゲームで活用する。構造化されたプログラム。
03 手加減しないことの意味。

楽しくなってきたので、今回もテニスの例をとって話題を広げていきましょう。これはテニスに限らず「あらゆることの教える場面」で活用できるし、インスピレーションを与えてくれると思います。

今回は「Nothing Ballを出さない」ということを書きたいと思います。

Nothing Ballというのは、「なんでもない球、何の気なしの球」というニュアンスになると思います。検索してみると、野球を始めとした球技で使われている用語です。具体的には、「スピードもなく、回転もかかっていない球」のことです。

なんの意図もなく、スピードも回転もない球を相手に与えれば、それは相手にとって攻撃のチャンスボールとなります。ですからそういう球を打ってはいけないということです。それは直接負けにつながります。また、Nothing Ballを打っている限り、ただ返すだけのテニスになってしまい進歩も上達もないでしょう。

スピードの速い球を打てば、相手はひるむでしょう。あるいは球速は遅くても回転がかかった球を打てば、相手は返しにくくなるでしょう。また、ロブを打って、相手の頭上を抜けば、相手の陣形を崩すことができるでしょう。あるいはコースを狙えば、相手の逆をつくことができるでしょう。このようになんらかの意図を込めて球を打つのです。そうするとNothing Ballは無くなります。

もちろんこのように意図を込めて打つことは自分がミスをするというリスクを伴います。ミスのリスクを込みにしてもNothing Ballを打たないようにすることです。毎回のラリーでなんらかの意図を込めて打つことです。そうするとラリーに意味とストーリーが出てくるのです。それがテニスをやっていて一番楽しく美しい瞬間なのです。

これはテニスだけの話ではありません。相手に何かを提示したり、提案したり、提出したりするときは、Nothing Ballを渡してはいけません。スピードを加えるか、回転を加えるか、あるいは他の何かの特徴を加えることです。あなたの意図に気づいた相手は、次の球になんらかの意図を込めてくるでしょう。それが美しく意味のあるラリーの始まりです。

ここから先は

0字

向後千春が毎日読んだり、書いたり、考えたりしていることを共有しています。特に、教える技術、研究するこ…

学生割引プラン

¥150 / 月
初月無料

みんなのプラン

¥300 / 月
初月無料

ゼミプラン

¥600 / 月
初月無料

ご愛読ありがとうございます。もしお気に召しましたらマガジン「ちはるのファーストコンタクト」をご購読ください(月500円)。また、メンバーシップではマガジン購読に加え、掲示板に短い記事を投稿していますのでお得です(月300円)。記事は一週間は全文無料公開しています。