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手出しボールで打つ。シナリオで打つ。ゲームで活用する。構造化されたプログラム。
火曜日は「教えること/研究すること」のトピックで書いています。
前回は、テニススクールのコーチについて「習う」ことの意味について書きました。今回はテニスコーチの「構造化された教え方」について書きたいと思います。
テニススクールのレッスン時間はどこでもだいたい同じだと思いますが、90分です。この90分間の間にどんなことをするのかというプログラムを考えるのがコーチの仕事の中心部分です。
典型的なのはこんなプログラムです。
1. ショートラリーによるウォームアップ
2. スマッシュの練習
3. ボレー&ストロークの練習
4. サービスの練習
5. ダブルス形式練習
6. ゲーム
このレッスン全体は構造化されていません。つまり、1から6までのプログラムはただ並べられているだけで、相互の関連性がまったくないか、弱いものです。つまり順番を入れ替えても問題がない。このようなプログラムでやると、構造がない寄せ集めのレッスンになります。運動にはなるでしょうが、何か新しいことを習得するチャンスはあまりない。
一方で、あるコーチのプログラムは特色があります。
1. 思いっきり打たせてウォームアップ
2. その日のテーマの打ち方を手出しボールで練習
3. その日のテーマの打ち方をシナリオで練習
4. その日のテーマの打ち方をゲームで使わせる
一見してわかるのは「その日のテーマ」があることです。そのテーマの打ち方をレッスンの中で一貫して練習する。たとえば、「バックハンドの決めボレー」とか「頭を抜かれたロブを低く返球する」といった打ち方がテーマになります。
決められたテーマの打ち方は、手出しボールでまず練習します。手出しボールで、体の動かし方とラケットの振り方を習得します。
十分動き方を理解したら、次はシナリオで練習します。たとえば、一回スマッシュを打ち、次にロブが上がって頭を抜かれたら、下がって低い返球をする、というような短いシナリオです。これによって手出しではわからなかった実際のボールスピードで練習することができます。
最後はその打ち方をゲームで使うことです。ゲームの前にテーマの打ち方をゲームの中でできるだけ使うように指示されます。ある場合は、それを使ってポイントを決めたら2倍の点数にするというようなボーナスが与えられます。このことによって習得した新しい打ち方を実際のゲームで使おうという動機づけがされます。すべての打ち方がゲームで生かされることが練習の最終ゴールです。
このようなレッスンプログラムを「構造化されている」と呼びます。構造化されたプログラムは何か新しいことを習得するための強力なデザインです。
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